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3話
お盆にコーヒーを乗せて持ってきた颯介が、いつの間にかむつの後ろに立っていた。
「喧嘩、ですか?」
「えぇ。むっちゃんかなり荒れてましたよ。宮前さんの事を不審者だなんて言って」
「喧嘩した覚えはないんですが…」
冬四郎と颯介の視線が、むつに向けられた。むつは、眉間に深いシワを刻んで冬四郎を見ていた。
「あたし、しろーちゃんと他人の区別がつかないくらい目悪くないし…帰ったら部屋に居たし」
「部屋に?俺が?まさか、まさか。一昨日の朝から今朝までは仕事してたぞ。疑うなら…署に電話するか?」
「そこまで、言い切れるなら宮前さんじゃないみたいだけど…部屋に入られたの?」
「うん。帰ったら居た」
「お前…それは通報しないといけないやつなんじゃないのか?」
「…うん。けど、しろーちゃんだったから」
「どういう事なんだろうね」
颯介はテーブルにマグカップを置くと、気をきかせたのかデスクの方に戻っていった。




