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強くて、“New”げーむ!(なろう用)  作者: ラズベリーパイ@天安門事件


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21/29

ちょっとした意趣返しですよ

「異世界からこちらの世界に来ると、そんな力が?」


 確かにゲーム内のミレニアムには少しだけれどその力があった。

 その力と石板の両方を使って、という話だったのだ。

 けれどゲームとは違い、今、ルーザリオンは僕を見て笑い、


「初めの時もそうですが“魔王”と呼ばれてもそれほど驚かないのですね」

「……大体の事は知っていますから。でも対抗なのですか?」

「ええ、そうです。そこは違うようですね。……異世界に存在しているからこそ、この世界に存在出来るのは“時間・空間”を操ることが出来る力あることに他ならない。そして適性があればあるほど力は強くなる。その力を使えばクロヴィスに対抗出来るのではないか、殺すことは出来ずとも封じることは出来るのではと我々は考えたのです」

「殺したり封じるために僕を呼んだの?」

「そう、本当は呼んでからすぐに力の使い方を教え、クロヴィスとの戦闘に入る手はずでした」


 僕はそれを聞いて“おかしい”と思った。


「なら何で石板を集めさせたの?」

「石板のもう一つの使用法をご存知でしたか。確かに貴方様を呼ばず、ミレニアムにその役目を与えるならばそうなったでしょう。けれど貴方様を見つけた時我々は喚起しました。塔句から観測するだけでも大きな力が見てとれたからです」

「僕にそんな力が?」

「ええそうです。貴方様の力は彼女をはるかに凌駕している。だからいざという時はその石板のもう一つの力を使おうと考えていたのです。但し、貴方様がクロヴィスに関して失敗したなら、いえ、その前にいくつか手を打とうとは思っておりますが」

「それは、フィオレを巻き込む話だよね?」


 ルーザリオンが沈黙した。

 確かゲーム内では、この時に古の司祭の“血”と“力”を最も受け継ぐフィオレの力を使い、大昔に行ったようにクロヴィスの力を幾らか封じるのだといった話が出ていた。

 その力によりクロヴィスを追い払ったのが昔の出来事。


 その後はずっとクロヴィスはいじけていたらしいとゲーム内にはあったなと僕は思いだす。

 ゲーム内でそんな話をクロヴィスが愚痴っていたから僕も良く覚えていた。

 但し、その古の司祭達の力を使うその方法を使ったなら、フィオレは廃人になるか、最悪死ぬ。


 大昔のその術者達がそうだったとゲーム内で語られていたから、多分、そう。

 と、それを告げるとルーザリオンはどこか面倒そうな表情になり、


「それは、この前私達の周りを飛んでいた“羽虫”に聞いたのですか?」

「“羽虫”? いえ、僕が既に知っている知識です」

「ですがその知識は間違っているのでしょう?」

「クロヴィスの正体など重要な所はほとんど間違っていません。そして……フィオレは僕の友達です。だからそのお手伝いはさせられません」

「ふむ。なるほど……友達思いでこの世界に愛着があるのは良い事です」

「では」


 フィオレにその役目を押しつけたりしないでくれますかと僕は言おうとしたが、ルーザリオンは一瞬酷薄な表情になってから、


「だが、まだ貴方様の力がどの程度なのかわからない。その友達の力がなければ勝てないほど貴方の力が弱かったのなら仕方がないでしょう?」

「でも僕は……」

「だから、こちらにいいるウィーゼ、彼に勝ったなら考えてもいいでしょう。このウィーゼの力もクロヴィスを殺す、もしくは封じるために必要な戦うため代償を払って力を得ています。それに勝てるだけの力があるのなら、考えるのもやぶさかではありません。ですが、貴方様がもし期待はずれの力しか持っていなかったなら……どうなるか分かっていますね」


 笑うルーザリオンの横にいたウィーゼが僕に向かって走ってくる。

 僕の少し隣辺りにいたライがこんな話は聞いていませんと叫んでいるのが聞こえる。

 僕はといえば、ウィーゼがこちらに走ってくるのをまっすぐ見ていた。


 彼に勝たないと、フィオレが悲しい事になってしまう。

 この時僕は、初めて戦闘に“肯定的”だった。

 力がもしあるのならそれを使わなければ、大切な人達を“守る”事もできないから。


 そしてこの人達に良いように操られてしまう。

 だからその“力”があるならそれを使いたい、そう僕は切に願う。

 ぼんやりと、何かが“視える”気がした。


 けれどそれはすぐにブレて、確かな像を結ばない。

 直感でこれではダメだと気づく。

 もっと、もっと確かな僕の……クロヴィスのくれた物では無い力で、勝たないといけない。


 焦る気持ちが膨れ上がって、けれどウィーゼという魔族、よくないものを纏う彼は僕の眼の前に迫っていて……。

 そこでウィーゼの動きが止まる。

 よく見ると足が凍りついている。


 その魔法を使ってくれたのは、ライらしい。

 ありがとうと僕は心の中で思いながら、まっすぐにウィーゼを見て……周りがしんと静まり返り、目的の物を見つけた。

 空間が奇妙にねじ曲がるのが見えて、それはきっと世界の歪みを彼自身が溜め込んだもので、それを彼の中に固定しているのは……右腕の部分に四角錐の形をした何かが見える。


 理解したのでは無く感じたそれ。

 無意識に突き動かされるように僕は、それに狙いを定めて手を伸ばした。


バチンッ


 軽く触れた指先から何かが僕の中から流れ込み、見えて触れたそれは粉々に砕けてしまう。

 ただそれだけのことなのに呻き声も上げずに、まるで糸が切れた人形のようにウィーゼが僕の方へと倒れこむ。

 慌てて抱きとめるが彼のほうが背が高いのでややバランスを崩しかけるとライが支えるのを手伝ってくれた。


 僕の顔のすぐ横にウィーゼの顔があり、息をしているのは確認できた。

 多分気絶をしているだけだ。

 無我夢中でしてしまったけれど、きっと今のが僕の“力”なのだろう。

 と、そこでルーザリオンが笑った。


「素晴らしい、素晴らしい力だ。まさかウィーゼのそれを一瞬で……この力があれば勝てる。だが、ライ、お前はどうして私に逆らった?」


 と、ルーザリオンがライに視線を投げかけた。

 ライが顔を蒼白にしてびくっと震える。

 今ライは、僕を手助けた裏切り者という事になるだろうからか。


 僕はライを庇おうと思って、とりあえずはウィーゼをライに預けてこのルーザリオンと話をしようと決める。

 そこである人影が現れたのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 黒い人影が現れ、スパーンと小気味のいい音が響く。

 現れたのは一人の男性で、猫耳が生えており、片手には書類の束が大量に握られている。と、


「ルーザリオン、よくもこの私に大量の面倒くさい仕事を押し付けたな!」

「お前が関わると甘くなりがちだからな」

「お前はやり過ぎなんだ!」


 怒ったように何かをいっている猫耳の彼を見ながら僕は、その姿に、


「ネコミミ族の軍師クラウズ・マレア、タマのお父さんですよね?」


 と問いかけた。

 タマに似て猫耳が可愛い中年の美形である。

 そんな彼は僕に気付いたらしく微笑み、


「ああ、君か。愚息のタマから話は聞いている。タマが振られたと昨日連絡があった」

「……新しい恋人の話は?」

「聞いたが、それよりもルーザリオンに仕事を押し付けられて大変なことになっていてな。どう考えてもルーザリオンの仕事としか思えないものが混ざっていて、おかしいと思っていたところだ。それで先ほどようやく気づいて慌ててこちらにきたが……ウィーゼに勝ったなら、と言って何かをけしかけたところだろう。だが、倒せる、しかもウィゼのためていたあの力を消し去るだけの力が君にはあるという事か」


 これは期待大だなと笑うクラウズだが、そんな彼に僕は切実な思いを抱えながら、


「僕の友達のフィオレを巻き込まないでください」


 そう僕は彼に告げると、彼はそれに一旦口を閉じて真剣な表情になり、


「……それは約束出来ない」

「どうしてですか?」

「最悪の事態を我々は想定しているからだ」

「けれどまだ全部が確定して決まっているわけじゃない。それを、初めから最悪事態を想定して全て行動しようとしている。それも、僕が最も悲しむ、手伝いたくないと思うような方法で」


 そうなのだ。

 僕の力を貸して欲しいと言うくせに、僕が一番望まない方法を取らせようとする。

 しかも彼が一番望んでいるのは、クロヴィスを殺すことだ。

 そんな睨みつけるような僕の様子を見て、タマの父クラウズが嘆息してからルーザリオンを見た。


「何を焦っている、お前らしくない。異世界から呼んでお願いする立場なのに、そんな事を言って……我々に不信感を抱かせては元も子もないだろう」

「……この陽斗がクロヴィス側についてしまうのではと、私は危惧しているだけだ。そしてより確実な方法を取ろうとしている、それだけだ。我々には失敗したなら後がない」

「だが陽斗の力を借りれなければ、我々はクロヴィスに勝てる要素はほぼなくなってしまう。以前のように司祭の力を持つものはほとんどいなくなってしまっている。それに別の計画プランでは、陽斗をクロヴィスが気に入って思い直せばそれでいい、目的は達成できるといった話になったじゃないか」

「不確定な要素は除きたい」

「確実に倒せる保証もないし、殺せたとしてその後この世界がどうなるのかもわからない。一番いい方法は封印だという話だろう」

「封印したならいずれ目覚める」

「それまでに反省するかもしれない」

「あれがするわけ無いだろう」

「どうあっても最終的にクロヴィスが思い直すか敵に回るかの二択しかないのだ。現状で上手くいっているのなら、色々と事情を話して、いざというときに力を貸してもらおうという話だっただろう。それが最悪事態になった場合、司祭の末裔である陽斗の友人、そのフィオレの力も使わざる負えない……そういった話だ」

「……」

「なのに脅すように、しかもうちの可愛いライまで。この子は珍しいローレライなのに、こうやって、知っているからといってわざわざ陽斗の様子を見てくれていたのに、いじめやがって」

「そのローレライのライが相変わらずお気に入りだな」

「2番目の息子のようなものだからな」


 そこでライがちょっと悲しそうな顔をしたけれど、それはすぐに消えてしまう。

 そういえば以前、子持ちの人を好きになったと言っていたが……と思っているとそこでクラウズが僕の方を見て、


「すまない。我々“深淵の魔族”や魔物は君のような異世界の存在には好意を抱くらしいのだが、なぜこのルーザリオンは、こうも意地悪く言うのか……」

「好意をもつ?」


 何となく気になって僕は聞き返してしまう。

 それにクラウズが頷いて、


「ああ、触手やスライムといったように魔物に襲われやすくなるんだ。魔族側の“神”に近い能力の気配がするから惹かれてしまうらしい。いい匂いと感じる場合もあるそうだ。陽斗の前に、ささやかな動物を召喚して調べた結果、そう言った効果が認められたらしい」

「……」


 ここで僕は知りたくもない事実を追加されてしまった。

 今までスライムやら触手やらに襲われやすかったのはまさか……。

 僕が凍りついているとそこでタマの父、クラウズがルーザリオンに向き直り、


「それで結局この陽斗は、この世界の今後をも知っていたのか? ルーザリオン」

「完全ではないがおおまかには」

「そうかそうか。それで私も陽斗に聞きたいが、石切り場で見た石板のある場所、あと一つは何処だ?」


 僕の言っている事が本当か試しているのだろう。

 嘘を言っても良かったけれど、でもきっと、今は僕の知っている事は本当だと信じてもらっておいた方が良いと思い正直に答える。


「空飛ぶ不思議な国……人間と交流している魔族の国にあります」

「なるほど。そちらに設置する予定だったが、この世界の事を殆ど知らないのにすぐに答えられる辺りで信用していいだろう」

「あの、今、設置と聞こえたのですが」

「そうだ、陽斗が集めていきやすように設置したからな全部。土産物屋まで我々の支配下だ」


 そう告げられて僕は、全てが彼らの思うように動かされていたと知る。

 けれどそれをどうしてクロヴィスは放置していたのだろう?

 クロヴィスがそれに気づかないはずはなくて、けれど僕に石板を集めさせたのは、どんな目的があったのだろう?


 クロヴィスなりに何か思う所があったのだろうか。

 僕は今までの話で、クロヴィスが僕を連れてきたけれど守る為に色々していたのを知った。

 でもクロヴィスに守られていたので戦闘もどうにか僕は戦えていた。


 色々な場面でどの道具を使うのかイメージで来た。

 材料もふんだんに持っていたり。

 戦闘をさせられる不安はあったけれど、それでも僕はまだ恋愛感情かはわからないけれど、クロヴィスに好意を持っている。


 そしてこのルーザリオンは性格が悪いので言うことを聞きたくないが、ライやフィオレといった友達も僕にとっては大切だ。

 なら、僕がすべき事は、


「クロヴィスがこの世界を“滅ぼす”選択をなくしてみせます。それが貴方方が僕を呼んだ一番の目的でしょう?」


 そう僕は彼らに問いかけたのだった。







。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"







 沈黙した彼らが一斉に僕を見た。

 その瞳を僕は真っ直ぐに見返し、


「僕が知っている“ゲームの世界”にもちらりとそういった話が出ています。でも、クロヴィスはそれを選択しなかった」

「それは、貴方が知っている物語がそうだっただけだ。すでに違っている部分があるでしょう?」


 ルーザリオンがそう言ってくるだろう事も僕は分かっているので、


「でもクロヴィスは僕の知っている物語よりもずっと優しくて感情的だと思う。だから……」

「優しくて感情的? それは貴方が彼に愛されているからでしょう」

「……その前にもう必要ないと裏切ったのは、貴方方“深淵の魔族”とこの世界の人間達でしょう?」

「……何の話か」

「隠しても無駄です。言ったでしょう、大筋は変わっていないって。それに、以前“古い王国”の遺跡で僕は壁画を見ました。クロヴィスと、裏切った貴方方の物語を」

「本当に面倒な異世界人を呼んでしまった」


 ルーザリオンが嘆息して、次にタマの父、クラウズが、


「ルーザリオンの場合は、一番クロヴィスとの接触が多かったからこそ君の言うクロヴィスがそれを諦める選択肢があるのを信じられないのだろう」


 それを聞きながら僕から顔をそむけるルーザリオンを見つめて、


「……クロヴィス、一体何をやっていたんですか?」


 けれどルーザリオンは答えず、というよりは思い出したくもないといった渋面を作る。

 そんな彼の代わりにクラウズが、


「言いたくないとの事で、ルーザリオンも、それに幾度かついていったウィーゼも我々に教えてはくれず、結局は、すぐさまクロヴィスを殺した方が良いといった話に持って行ってしまった」

「……確かに、初めて出会った時そのウィーゼはやけに憎々しげにクロヴィスを見ていましたが、そう言った理由があったのですか。でもクロヴィスは僕を愛しているから優しいだけじゃなくて、僕達と関わり合いたいと思ってくれています」

「ほう、何時も一人だったクロヴィスが君以外に誰と?」


 目を瞬かせるタマの父クラウズに、僕は、


「ウィルワードさんです」

「「いや、それは違う」」


 ルーザリオンとタマの父、クラウズが声を揃えてそう答えた。

 即座の全否定。

 何でだろうと僕が思っていると、ルーザリオンは珍しく顔色を変えて、


「……あれは恐ろしい人間だ。クロヴィスのみならず我々“深淵の魔族”すらも巻き込んで……いや、よそう。名前を出すと何処からともなく出てくるらしいから」

「……あの人何をやっていたんですか」

「……クロヴィスとは違う意味で厄介な人物だ。彼はサンプルにならない。他には?」


 そう言われてしまうと、他に何かあるだろうかと僕は思う。

 僕は答えに詰まるが、そこで気付いた。


「僕は、貴方方の知っているような“残酷な”クロヴィスを知りません。でも僕の知っている感情豊かなクロヴィスを、貴方方は知らないでしょう?」

「何が言いたい」


 ルーザリオンが小さく苛立ったように僕に告げる。

 けれどここで引いたらきっと、クロヴィスもフィオレも、僕がこの世界で好きになった人達が悲しい結末を迎えてしまうから、だからルーザリオンに、


「貴方方は、“残酷な”クロヴィスと対話をしたから失敗した。でも、僕の知っている感情豊かなクロヴィスなら、対話にも応じてもらえると思いませんか?」

「……どちらも同じ人物だ」

「同じ人物でも見せる物が違うには、理由があります。そして僕は異世界の人間、そう、僕はまだ一度もクロヴィスを裏切っていません」


 過去の出来事があってああいった態度をとっているなら、そのしがらみがない僕ならできるのではないか。

 そして、ヒントは先ほどのルーザリオンとタマの父クラウズの会話からだ。

 クロヴィスをどうにかした場合でも、本当に滅びを止められるのかすら不確実なのだ。


 なのに彼らはそれを選択している。

 クロヴィスが頑なな態度をとっているのは、彼らの以前の行いがあってクロヴィスが信じていないからだ。

 でもそれなら、彼らが言うようにクロヴィスが僕に好意を持っているのなら、そして異世界から来た僕ならそういったマイナスの感情が無い。

 更に付け加えるなら、このルーザリオン達にもメリットがある。


「クロヴィスの力は強くて、“戦闘”をするのは得策ではないのでしょう? ならばこの方法を試してみる価値があるのでは?」

「どうやって説得する? “神”である事をクロヴィスは君に知られたくないようなのだろう? 彼が滅ぼすのを諦めるよう説得するのは、必然的に彼の正体に近づく事だ」

「……これから考えます」

「話しにならない」


 嘆息したようにルーザリオンは告げるけれど、僕は、


「僕の協力が無いと困るのでしょう?」

「……」

「状況によっては手を貸しますよ。この世界が滅びないようにする、それが一番の目的でしょう? だったら、滅ぼそうとする力を僕が消し去る、殺さずともそれではいけませんか?」

「時間稼ぎにしかならないのでは?」

「それでも、そういった手段も考えられます。それに僕の先ほどの力を見たでしょう? 少なくともウィーゼを一瞬にして無力化できる」


 素晴らしい力だと笑ったのは、このルーザリオンなのだ。

 もう一度すぐに使えるかは分からないし、先ほどの一回が偶然上手くいっただけかもしれない。

 でも僕に“力”があるのは見せつけた。

 だからこの力を使えばどうにかなると僕はそう告げて、さらにルーザリオンに、


「それに今すぐにクロヴィスはこの世界を滅ぼそうとはしていません。時間はまだあります。そしてこれから……僕はもっとクロヴィスを知ろうと思います」

「どういう意味だ?」

「クロヴィスが一体何を悲しんで、どんな気持ちで、何を求めているのかを聞きだします。そこからそれを叶えれば良い。そうすれば、この世界が長期的に確実に存続していく事になります」


 ようは今の状況よりも歪みが少ない状況で、この世界が維持できればいいのだ。

 そしてそれはクロヴィスの“感情”のさじ加減で決まる。

 でも僕は思うのだ。


 短い間だけれど一緒にいたクロヴィスは、俺様で意地悪な所もあるけれど“信頼できる”“優しいところもある”人物だと。

 そこまで聞いたルーザリオンは、渋々といったように、


「分かった。確かに我々の目的は叶うだろう。君の力がなければどうにもならない。だがそれほど長い時間は与えられない」

「それでもいいです。その範囲で僕は……僕が気付いていないと悟られずに、クロヴィスの“気持ち”をひきだします」

「一ヶ月、それ期限だ。そしてこまめに聞きだしたそれをそこのライに連絡してもらう。何か分かったらそちらに伝えてくれ」


 そう言って、ルーザリオンがライを指さす。

 僕は分かりましたと頷き、ようやく幾らか話が終わったので、倒れ込んでいるウィーゼをルーザリオンに渡し、彼はそんなウィーゼをクラウズに渡して、クラウズはウィーゼに回復の魔法をかけ始める。

 そういえばウィーゼの周りにあった何かはウィーゼにに代償を支払わせているらしい。


 相当に体に負担がかかっていたのだろうと僕が思っているとそこでライが僕に近づいてきて、


「……こんな事になってしまったけれど、これからもよろしくね」

「うん、ライと一緒に居られて嬉しいよ」


 僕がそう答えるとライは目を瞬かせて苦笑して頷く。

 そして小さく、こんな風にまた陽斗と話せると思わなかったと呟く。

 やはりもう二度とあんな風な生活には戻れないと思っていたのだろう。


 でも状況は先ほどと違う、そう、僕は色々と頑張らないといけない。

 なので“戦闘”の依頼にかまけているばかりではないのだと僕は思った。

 思って周りを見回したけれどクロヴィスが出てくる気配がないのを感じ取って安堵しているとそこで、


「しかし異世界人だから操りやすいかと思ったが、そんな事はないようだな。まあ、そんな展開にもならず良かったと思うよ」


 ルーザリオンがここで少しだけ優しげに笑うように僕に告げる。

 その表情はそんな事にならずによかったと思っているようだ。

 あまり感じられなかったが、彼なりに僕の事を考えていてくれるのかもしれない。

 ふと僕は思った。


「でもミレニアムちゃんもいう事聞かなかったはずです」

「それはどうかな? 一人身の時はいざ知らず、今は子供もいるからな」


 妙に生々しい現実を突き付けられたような気がして僕は微妙な気持ちになっていると、ルーザリオンが何処かで見た事のある表情で嗤った。


「そのミレニアムちゃんは貴方のお気に入りかな?」

「……そうですが、何か?」

「今の彼女の状況を知りたくありませんか? まあ、嫌だと言っても話しますがね」


 そこで僕は気づいた。

 このルーザリオンの笑みは、僕がクロヴィスに戦闘に連れて行かれる時のクロヴィスの笑みに似ている。

 僕が嫌がる事をいう時の笑みだ。と、タマの父であるクラウズが、


「おい、ルーザリオン」

「ちょっとした意趣返しですよ。どうも私は好ましい相手の怯えたりする表情が好きらしい」

「……いつもの病気だと思うが、これを止めさせるとあとあと私が大変だから、まあ、我慢してもらおうか」


 タマの父クラウズはあっさり僕を見捨てて……そして僕はルーザリオンに一応、異世界人だからかは分からないけれど好意は向けられているし、それだから時間がもらえたみたいだと分かったのだけれど、知りたくない現実に涙目になったのだった。






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