衝撃! うちの猫の正体!
その人形に僕は見覚えはなかったけれど、人形というとウィルワードという妙なイコール関係が頭に浮かぶ。
浮かぶけれど、いやいやまさかと僕が思いながら、硝子に気を付けて人形を拾う。
突然空から落ちてきたのを考えると、鳥か何かが人形を掴んでいてたまたま落としたか、可愛い女の子が空を飛んでいる途中で何かを落としたに違いない。
ただの可愛い人形だしと僕が心の中で納得しようとしていると、
「あれ? それは僕の作った人形だね」
ウィルワードが僕を後ろから覗きこみ、その人形についてそう言った。
やっぱり関係があるんだと僕が思っていると、更にウィルワードはその人形をじっと見て、
「この人形は、空に浮かぶあそこのメンテナンスの人形だったはず」
「そうなんですか。でも何でここに?」
「壊れた様子もないから、何かの拍子に間違って落ちてきたのかも。人に当たらないで済んで良かった」
「そうですね。それでこの人形がここにあるとその空飛ぶその何かに問題って発生しませんよね?」
ふと不安にかられた僕がウィルワードに聞くと、笑顔で沈黙した。
何ですぐ答えてくれないんだろうと僕が思っていると、
「大丈夫だよ、多分」
「凄く不安になってきた」
「ははは、クロヴィスみたいな事をいうね」
「いえ、この場合、クロヴィスで無くてもそう言うと思います」
「大丈夫大丈夫。おっと、そろそろお昼だね。これから用があるから」
そう言ってウィルワードは足早にその場を去っていく。
そんなウィルワードを玄関の外で見送るんだとフィオレがついていって部屋の外に行ってしまう。
けれどあとに残された僕は本当に大丈夫なんだろうかという疑惑がむくむく膨れ上がる。
そこでライが呟いた。
「あのウィルワードという魔法使いは、フィオレの役割について知っているみたいだったね」
「あれ、ライ、何か知っていると?」
「……その内分かるよ」
「ライも教えてくれないんだ」
「……僕が知っているそれが真実だとは限らないからね。もっと確証が出来たら、気が向いたら話してあげるよ」
ライがそう、つれない事をいう。
とはいえ、そろそろお昼が近いのでお腹が空いてくる。
なので今日のお昼は何にしようと僕が聞くと、
「お肉!」
とタマが言うので、ローストビーフとパン、サラダに決定したのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
オレンジ色の夕日が綺麗な頃。
僕は一人台所の傍のテーブルに座っていた。
「僕の居場所が強制的に作られている、か」
何となくその言葉が引っ掛かって口から出てしまう。
居心地が良いし、皆いい子だし、クロヴィスは意地悪だけれど優しい。
けれど目覚めさせてしまったウィルワードが、甘い夢から僕の目を覚まさせるように囁く。
多分、悪い人では無いと思う。
何かの目的があるのだ、ちょっと迷惑な人だけれど。
「この世界の崩壊が、それをくい止めるのがゲームの趣旨だった」
その役目を僕にさせ様としているのだろうか。
……。
ふっと意識が遠のいて、ふと随分とぼんやりしていた気がする。
何を考えていたんだっけ、そう思った所で家のドアが開く。
「あ、クロヴィス、お帰り」
「ただいま。折角だから戦闘の依頼を幾つか来ないしてきた。そして陽斗が好きそうな果物があったから持ってきたぞ」
「わー、パイナップルだ」
「“水のパイナップル”。触手の木になる果実だ」
「……」
「どうした、変な顔になっているぞ?」
クロヴィスがやけに楽しそうで、けれど僕としては切実な不安があるわけで、
「……これ、葉っぱを植えたら触手が生えてきたりしないよね?」
「無いだろう、“水のパイナップル”は種で増えるし」
「そ、そうだよね。うん……」
僕は納得して後で食後のデザートのパイナップルケーキにしようと決める。
そこでクロヴィスが動きを止めた。
「何でこんな所にあいつの作った様な形の人形があるんだ? ああ、陽斗が……」
「これ、昼間空から落ちてきたんだ。何でも空飛ぶそれのメンテナンス……」
「早めにそれを元の場所に戻してこよう。折角だから観光も兼ねて」
「……大丈夫だってウィルワードさんいっていたよ?」
「あいつの大丈夫は信用できるか! 面倒な事にならないうちに戻しに行こう。そうだな、明日辺りこの前の山に登って何処にあの空飛ぶあれがあるか確認しよう。戦闘もするから陽斗を連れていくのに丁度いいし」
狼狽するようにクロヴィスがいう。
そういえば人の噂を気にしたりするのが良い兆候だとウィルワードは言っていたけれど、今は急いで元に戻して巻き込まれないようにと言っている。
クロヴィスが、この世界を気にしているという事に他ならず、そしてゲームの最後の方の台詞を思い出した僕は、自然と笑みがこぼれて、
「そうだね、早く返しに行った方が良いかもね」
「……陽斗、嬉しそうだな。よし、戦闘は陽斗に明日はできる限り任せてやる」
「やめてぇえええええ」
クロヴィスが僕を見て意地悪く笑ってそう告げる。
そして次の日の朝早くから、以前登った山に、今度は一緒に行って空飛ぶあれを観測したいというフィオレとライ、タマを連れて頂上まで登る事となったのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
「うう、やっと頂上に着いたよぅ」
「僕ももう、ぼろぼろだよぅ、早くあの泉に入れて~」
戦闘に遭遇するたびにクロヴィスに放り出されて、三角錐型の精霊の魔物などと戦わさせられた。
ライとフィオレはどうしていたかというと、ライはピクニック気分で“森タケノコ”を採ったり、“玉ねぎボンボン”と呼ばれる玉ねぎを手に入れたり、“キャラメルの雫”という滴り落ちるやわらかなキャラメルソースが実の中に詰まった茶色の木の実を集めたりしていた。
そういえばキャラメルソースもこういった出来たものが果実としてとれるのはいいと思う。
ライが見せてきたそれを見て、これをいくつかもって帰りあとでプリンにしようと思いながら僕は次々と敵を倒していく。
他にはチーズケーキを冷蔵で持ってきたので、それにかけて食べよう、夢が広がるなと思っていた。
そしてフィオレも時々手伝ってくれるけれどそれは欲しいアイテムがでそうなときだけだった。
兎とか兎とか兎とか。
途中、発情した兎に襲われかかるという僕と同じ目にあったので手助けしたら、
「や、やはり僕は陽斗の戦闘訓練の邪魔をしてはいけないな!」
「! 手伝ってくれてもいいじゃん!」
と言った会話があった。
ただクロヴィスとは昨日の事もあるフィオレは、クロヴィスにどこかよそよそしく、クロヴィスもフィオレを空気のように扱っている。
なんとか仲直りできないかなと僕が思っている内に新たな魔物が襲ってくる。
そこで僕はタマがどうしているのかを探してみると、宝石のようにキラキラ光る、“宝石蝶”を追いかけているではありませんか!
「タマ、その蝶を捕まえて!」
「にゃーん」
タマは即座に飛び上がりその蝶を口に咥えた。
そしてそのまま僕の方に持ってくるので、“更紗の虫カゴ”を取り出す。
これは“宝石蝶”用のアイテムで、蝶の鱗粉を集めるのに使う。
この“宝石蝶”はこの何も食べずにずっと飛び回り、気づかない内に増える謎の生態をしており、この鱗粉はとある種族の羽が壊死する病に効くとされている。
実際に効くので、事前にそのイベントをこなしてからあそこに向かうことになるのだが。
ただこの鱗粉は他にも使い道があって、普通の石をこれで磨くと夜にランプのように輝く効果が得られる、等様々な使い道があり、本来一般的な使われ方はその灯りやら何やら日用品であることが多い。
とはいえゲームの時にうっかり捕まえ損ねてその鱗粉を高い値段で購入したのはあまり良くない思い出だったなと僕が思っているとそこでフィオレが、
「やはりその猫は招き猫のようだな。あんなに貴重な“宝石蝶”がでてくるなんて」
「にゃーん」
自信満々になく猫のタマをありがとうねと撫ぜてやると嬉しそうにタマは喉を鳴らす。
やはり何処からどう見ても、ただの猫だ。
走行しながら僕はやや疲れ果てながら頂上についたので、湧き出る水にリリスの杖をつける。
リリスが幸せそうな顔になる。
その間に僕たちは周りを見回して……見つけた。
空に浮かぶ謎の種族の移動する島である。
あそこに住んでいるのが誰なのかを僕は知っているし人間とも交流がある謎の種族ということになっているのも知っている。
そして大体の距離から、
「しばらく、アルファレルの山に滞在するみたいだね。確かあの都市って、高い山の近くで二週間程度滞在するんだったっけ」
「よく知っているな、陽斗」
クロヴィスにそう言われて僕は、有名な話ですからと適当に流す。
本当は幾つもの条件をクリアしないと聞けない話なのだけれど、とりあえず僕達のグループでは有名な話、みたいなのでごまかすことにした。
そしてそれ以上クロヴィスも含めて誰も追求してこなかったのは良かったと思う。
と、フィオレはそこにはいっている水を汲み上げて魔法の材料にすると言っており、ライは無言で一杯ほどガラスの小瓶で組み上げて、コルクで瓶詰めにする。
フィオレならともかくライは何に使うんだろうと僕が思って聞いてみると、
「今日の効果は、猫耳が何処からともなく生えてくる効果だから、あのフェンリルに仕込んでやろうかと」
アイツに猫耳が生えたらさぞかし面白いだろうなとライが嗤う。
そしてそれを聞いたフィオレが、
「よし、僕もアンジェロに猫耳をプレゼントしよう、ぐふ」
黒く嗤うフィオレを見ながら水を汲む。
二人共何をやっているんだろうな、上手いことやり返されるんじゃないのかなと僕が思っていると、そこでクロヴィスがその水を手ですくい、僕の頭にかけた。
「な、んゃにするにゃ! にゃにゃ!」
そこで口調がおかしくなると同時に頭に何かがついているのを感じる。
嫌な予感がして水面を覗くと、僕の頭に猫耳が生えている。
「にゃんで!」
「いや、陽斗に猫耳が生えたらもっと可愛い気がしたが、そこの猫がやけにキラキラとした目で見ているので……」
そこでクロヴィスに猫耳が引っ張られて、同時にポンといった音と白い煙が上がり猫耳が解除された。
僕は嬉しかったのだけれど、タマが先ほどと違いしょんぼりしている。
何となくいじけているタマに、干した魚を渡すと機嫌を戻してくれたのはいいとして。
とりあえず山頂で持ってきたサンドイッチとデザートのチーズケーキに採りたてのカラメルソースをかけて頂く。
それから山を降りたのだけれどそこで、ちょっと気になっていずれ行くはずのイベントの場所、滝の裏側にあるその入口を覗きこんだ僕だけれど、
「え?」
石が水に濡れていたらしくツルッと滑った僕は、そのままイベントのある滝の裏側に入り込んでしまったのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
「うぎゃああああ」
僕は悲鳴を上げてそのまま滝の裏側辺に落ちそうになるが、そこで左腕の手首を誰かに掴まれる。
「大丈夫か! 陽斗」
「う、うん、何とか……」
ぷら~んとクロヴィスに腕を掴まれながら宙釣りになる僕だけれどそこで、僕のポケットから、ころんと以前の魔族の遺跡で手に入れた謎のハートが三つついた石板が零れ落ちる。
薄くぼんやりと光り輝いているのが見てとれる。
もしや、自分からイベントを引き起こすためにこんな……。
確かこの遺跡の場合、中には精霊型の魔物が大量にいたはず。
そんな場所に行かさせられたらまた戦闘三昧である。
僕はクロヴィスに引き上げてもらいながら、
「ま、まあ、物を落としてしまうのもよくある事だよね」
僕がそう呟くと、そこでクロヴィスはふっと微笑んだ。
ようやく引き上げられた僕は嫌な予感がした。
そして嫌な予感ほど的中する物で、
「陽斗、あの霧みたいになっている滝の裏側で、何かが光っているな」
「き、気のせいだと思われます」
そう言い返す僕だけれど、クロヴィスは笑っている。
そして助けを求める様にフィオレを見ると、半眼で見られた。
「陽斗、怠ける気か」
「ち、違う、このまま帰ろうよ、たまたまアレを落としただけで……」
「薄っすらと魔力を感じる。あそこに何かあるのは確実だろう」
「で、でも遺跡に入るのは危険だし、もう僕一杯今日は戦ったし」
つい口を滑らせてしまった僕は、そこでライに、
「遺跡があるのか? “古い王国”の? どうして陽斗はしっているのかな?」
「い、う、うぅ……文献で……で、でも言ったらもちろんそこに連れて行くんだよね?」
「「「もちろん(にゃ~ん)」」」
友達どころか飼い猫にすらも裏切られ、僕は涙目になりつつも全力でその場から逃走しようとする。
だが腕をクロヴィスに僕は掴まれていて逃げられない。
しかも猫になったタマが、僕の肩に乗っていて重い。
そう思っている内に、腕を掴まれてクロヴィスが飛び上がる。
必然的に、僕もそちらに飛び出すことになるわけだけれど、
「ぼ、僕は嫌だぁああああ」
これだけ頑張って戦闘の以来をしたのだからまた今度でいいと思うのだ。
けれどそんな僕を応用にフィオレが跳んできて、
「人の手がはいっていない遺跡にはいい物がそのまま残されているんだ。文献に載っているから人が入ったかもしれないけれど、それでもまだそこそこ残っている可能性がある」
「う、うぎゅ。今日はもうお家でゆっくりしようと思っていたのに」
そんな僕の嘆きを無視してフィオレが目の前のそれを見る。
先ほど落としたハートを3つ重ねたようなそれは、何故かそこにある金属製の門に嵌っている。
こんな怪しいアイテム、やっぱり拾わないでおけばよかったと思っていると、そこで目の前の扉がギギギと開く。
同時に僕達の視界を真っ白な光が覆ったのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
目を見開くと、そこにいたのは僕だけだった。
正確には僕にひっついていたタマと二人である。
薄暗いのっぺりとしたコンクリートのむき出しの廊下……そんな印象を受ける場所に僕達はいる。
うっすらと天井が輝いているので完全に暗くはない。
後ろを見ると長い、途中幾つも分岐する横道のある通路が見える。
その何処にもクロヴィス達の姿はない。
「皆違う所に飛ばされちゃったんだ」
「うん、そうだよ。ちょっと陽斗と二人っきりでお話ししたかったから一番最深部に僕達は転送、クロヴィスという、僕達の一番の“敵”とフィオレ、リリスは一番上の階層に転送しておいたよ」
「タマ?」
そこでいつも僕を癒していた茶色の猫のタマは、猫の姿のまま僕の前にやってきて、次に光に包まれたかと思うと人型をとる。
どちらも良く僕が見ているタマの姿だ。
でもどうして今さらと僕が思っているとタマが苦笑する。
「やっぱり陽斗には僕の認識操作が聞いていないみたいだね。ただの猫としか認識できないようにしていたはずなんだけれど」
「え? そ、そうなんだ。そういえば……」
「でもだからと言って、陽斗は僕が獣人の猫族である“深淵の魔族”だとは気付いていないみたいだし……この世界の常識が“欠落”しているように感じたんだよね」
にっこりとほほ笑む目の前のネコミミ少年は、何時も僕が下僕にされていた猫のタマと違って見える。
もしくはこれが本性なのかな、と僕が思いながら、
「タマ、君は一体?」
「僕? 僕はね……“深淵の魔族”ネコミミ族の軍師クラウズ・マレアの息子、タリスマン・マレアです。皆には“タマ”と愛称でよく呼ばれているんですよ?」
そう面白そうに、僕の飼い猫だったタマは僕に告げたのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
その軍師の名前などには聞き覚えがあって、確か凄く渋い男性だった気がする。
でも僕の知っているはずの無い知識だろうと思ってそれ以上僕は黙っていると、タマがにゃーんと鳴いた。
「でね、陽斗を分離したのは、僕が陽斗にお嫁さんになってくれるか、という告白する為なのです、にゃん」
「……ごめん、僕、タマの事、ペットとしてしか見ていない」
実際に僕の家で飼っているしゃべる猫としか思っていなかったのだ。
だからそう答えるとタマは、
「……うん、やっぱりそうだよね。飼う権利も上げたわけだし。なのでまだしばらく飼い猫として陽斗の傍にいるよ」
「いいの?」
「もちろん、本当は最近リリスと話しているのが楽しくなってきちゃってどうしようかと思っていたんだ」
そういえば最近このタマはやけにリリスと仲が良い。
何か心の変化があったのかもと思っているとそこで、
「それで陽斗はこの世界の事を何処まで知っているのかにゃ?」
「そ、それは……えっと……」
「陽斗の魔力は膨大で、僕達“深淵の魔族”には魅力的な気配がするんだ。だからお魚を貰った事もあって陽斗についてきたんだけれど……振られちゃったのはいいとして。僕も陽斗には他にも秘密がありそうなんだよね。父に聞いたのだけれどそのまま陽斗を守れとしか言われていないんだよね」
「守れ?」
「うん、クロヴィスに先手を打たれてしまったから、守れって」
クロヴィスは確かに僕の傍にいて、一番初めに接触して、僕を……。
漠然とした良く分からない不安が僕の中で膨れ上がりそうになり、そこでタマが僕の手を握った。
「なんだか陽斗は僕達“深淵の魔族”にとって大切な人らしい。でもあまり色々知られるのもなというのもあるらしい」
それは僕に何か役割があるからだろうか。
ゲーム内での主人公の役割は知っている。
でも、僕の場合少しでも変な事を聞いたら疑われてしまう。
だって僕はこの世界の人間じゃなくて、でもこの世界の秘密に関する事や禁断の魔法までも知っているのだ。
どうしよう、そんな僕を見上げてタマが耳をピコピコ動かして、
「なので……答えられる範囲で僕が全部答える事にしました」
「……いいの?」
「うん、あのクソ親父は、僕の事を放蕩息子だの、今くらい役に立てだの散々言いやがりましたので、僕が知っている事は全部教えてあげるよ!」
「……ありがとう」
「でも、放蕩息子な僕は、あまり色々知らないんだけれどね」
肩をすくめるタマだけれど、何も隠さず聞ける相手がいるのは僕には嬉しかった。
なのでまずは……、
「タマの事を教えて欲しいな。ここの遺跡の転送システムが使えたみたいだし」
「それはそうにゃ。この前の塔に近い遺跡も含めてここは、僕のご先祖様の“古い王国”に住んでいた場所だから、その血をひく貴族の僕はここを幾らでも好きな様にできるんだ。前の遺跡でも閉じ込められそうになった時フィオレを連れて外に出たし」
「そうなんだ、ありがとうタマ。……でも“古い王国”って、あれ、羽が生えていないよね?」
「……あの人間と仲の良い空飛ぶ種族の事は知っているんだね、陽斗は。まあいいけれど、母方がそちら系統なんだ。身体的特徴は父に似ちゃったけれど。さて、その血でもどうにかなるんだけれど、陽斗の場合、その存在自体が鍵になるらしい。本当はその3つのハートが付いたそれ自体が、色々な“古い王国”のどこでも入れる鍵で、普通の人間はそれを使う約束になっていたんだけれどね」
「そう、なんだ」
「うん、それは人間側の特別な“血”を引く人間が使えるようにって設計されたらしい。ただ、今回陽斗のポケットからあの鍵が落ちたのは、多分、“深淵の魔族”が絡んでいると思うのにゃ」
そう言われて僕は、周りにそんな“深淵の魔族”はいなかった気がした。
だから僕は怪訝な表情でタマを見ていると、
「陽斗、“深淵の魔族”の探査装置は、壊れたものでも視界くらいはつながったりするんだよ?」
「探査装置?」
そんなものはゲーム内で僕は知らない。
そんな僕にタマは、僕に教えるのが嬉しくてたまらないというような笑顔で、
「動物型の魔物は、この世界に元々いる種族。でも精霊型は違うにゃん」
そういえば昔は精霊型はいなかったと聞いた気がする。
誰だっけと思いだそうとした所で、タマが、
「精霊型は昔魔族が作りあげたけれど、壊れてしまった物がほとんどなのにゃ」
そう僕にタマは告げたのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
設定集というか攻略本に書かれていない裏情報に、僕は目を瞬かせて、
「魔族が作った?」
「そうにゃ。この世界はとてもとても広いので、流石に全部を探査サーチするのは出来ないのですにゃ。なので探査用の魔法道具を作ってバラまいて“歪み”を探知していたのです。その探査装置から魔法的な映像が収集されて、魔族の本拠地に映し出されているのです」
「そうだったんだ。でも全部動かすの大変じゃないのかな? それに壊れたのは回収しなくていいの?」
そこでタマが沈黙した。
ちょっとした疑問だったのだけれど、それは口ごもる様なものであったらしい。
聞かれて欲しくない事ならと僕が思っているとタマが、
「実はあの装置、大気中などから魔力を回収して、それをエネルギーに変換し自立して探査を行いますのにゃ。そして探査の関係で壊れて動かなくなった場合は、回収できる場合もあるのですが事情があって放置されるのですにゃ」
「どうして?」
「人員が足りないのですにゃ」
「……」
「そ、それでその行動を制御する魔法回路が誤作動してしまった場合、人間に襲いかかったりする場合があるのです」
「それが、街道を歩いていて現れる精霊型の魔物?」
「そうです、一応探査なので人間を自分から襲う事は無いはずなのですが、目撃者を倒せば“ステルス”だよねという間違った誤作動が時々起るようで……」
「……」
「で、でも魔力を周囲から集めて固形化しているので倒すと魔力の結晶が手に入るでしょう? 魔法使いには必要だと思うんだにゃん♪」
にゃんと付けて最後は可愛く最後に啼いてみたタマだが、ある意味で酷い設定に僕は何も言えなくなってしまう。
ただいまの話を考えると、
「魔法使い達も含めてとりあえず、こまめにその精霊型の魔物を倒しているんだよね? 減っていってもう全部壊れたのを倒していてもおかしくないのかな」
「自己増殖型機能があります。ただそんなにぽこぽこ増えるものではないので……」
「欠陥部分は修正されたものがコピーして作られるの?」
「……にゃ~ん」
タマが再び可愛く啼いた。
これはあれですか、おかしくなった物はそのままコピーされて増えていくという?
だから道を歩いていると突然、精霊型の魔物がそこそこ出てくるのだろうか。そもそも、
「メンテナンスは?」
「自己修正機能もついてありますのにゃ。そして時々、魔族が管理するために捕縛して様子を見たり修繕しておりますのにゃただ……」
「ただ?」
「父曰く、魔族がイケイケ? だった時代なので、今は修繕管理が出来る人が驚くほど少なくて」
つまりそれは壊れかけたそういった魔族の探査装置がそこら中に……と僕が青くなっているとそこで、
「でも歪みを確認はできるので一部は放置している部分もありますし、優先的に見る場所は修繕も優先していますにゃ。とはいえ、最近では“歪み”があまりにも大きくなったりしてまず事にはなっていたりするので、そちらにも人員が割かれるのでそちらの方はちょっとおろそかかもしれないですにゃ」
「それも含めて、故障するその精霊型の魔物と呼ばれる探査装置があるから、最近は“深淵の魔族”の動きが活発とか言われてないよね?」
「にゃ~ん」
「タマ、にゃ~んで誤魔化しちゃだめだよ? はあ、猫は気楽でいいな」
「猫には猫なりの厳しさがあるのですにゃ~」
「はいはい」
「でも陽斗はこちら側の“切り札”だって父から聞いたにゃ」
それは聞き捨てならず、僕が聞き返すとタマは、
「それしか聞いてないのにゃ」
「……」
「だって僕はそれほど事情を知っているわけでもないし。それにあのタヌキ親父が全てを話してくれると思わないし。でも陽斗が知りたいなら一応は聞いてみるよ?」
「じゃあお願します」
「分かったにゃ」
軽く請け負ってくれるタマにそこはかとない不安を覚えつつ、けれどあまりにも衝撃的だったのでその話以外に疑問が浮かばない。
なのでまた後で聞いてもいいかとタマに聞くと、何時でもいいにゃんと答えられる。
やっぱりうちの飼い猫は優秀だだと、猫バカに僕がなりかけた所で……思い出した。
「クロヴィス達はどうしているかな?」
「じゃあ今すぐ調べてみるにゃ」
タマがそう言ってとてとてと壁に近づき、そこ壁に埋め込まれた透明な球に触れる。
「にゃ~ん」
タマが壁に手を当ててそう呟くと、その場所から光が走る。
けれどすぐにタマは壁から手を放して、
「もうすぐ皆が来そうなので、隣の宝物庫を見に行こうにゃ」
「でも、ここから転送してあいに行った方が良いんじゃ……」
「すぐに来るから入れ違いになるよ? それに……陽斗の意思は少しだけ“希薄”だから僕の意思が優先されちゃうからそちらに転送は無理だと思う」
「タマは行かせたくないの?」
「うん、フィオレとクロヴィスが今仲直りしているみたいだから」
そう言われてしまえば邪魔するのも悪い気がする。
なので頷くも、案内された宝物庫には金貨やら宝石やら魔道具やらが大量にあり……。
「……いいの?」
「ばれなきゃ問題ないですにゃ、というのは嘘で……少しぐらいは路銀の足しにしていいって聞いたから大丈夫! 早く回収しよう!」
そう言ってタマは僕の手を引いたのだった。




