黙って尋ねる事にしたんだ
「う、うう、ようやく家に辿り着いたよ……」
フラフラになりながら僕はようやく家に辿り着いた僕達。
色々あって、温泉に入ったので癒された気がしたけれど、その後のウィルワードのアレがきつかった。
「温泉街の三階建ての建物よりも大きな温泉の化け物が……うう、服がびしょびしょになるし酷い目にあったよ、うう……」
フィオレもライも含めてクロヴィス以外全員がボロボロな感じだった。
ただあの巨大生物と戦った後、フィオレとアンジェロは少しだけ仲直りしたように見えた。
何だかんだ言ってアンジェロもフィオレが大切で仕方がないのが、戦闘時にフィオレにも伝わった様なのだ。
けれどそれでもフィオレの中ではまだ心の整理がつかないらしくて、もう少し僕達の家にいたいらしい。
ただ、その時アンジェロは気になる事を言っていた。
「……やはり、この私が簡単に説得さえてしまうのが問題かもしれませんね。惚れた弱みというものでしょうか。そうですね……私らしくありませんね」
と、フィオレも真っ蒼になる様な顔で暗く笑っていたのが気になる。
何をする気なんだと、フィオレはアンジェロに詰め寄っていたが、アンジェロは嘘っぽく笑うだけで答えなかった。
そういった意味で心労がたまっているフィオレは、帰ってきてすぐにベッドにもぐりこんだ。
リリスとタマも、眠るのにちょうどいい場所を見つけたとかで二人揃ってこの家の何処かで眠っているらしい。
またライといえばふらふらになっている所でフェンリルに何かをささやかれて、敵意むき出しで睨みつけてそのまま用があるからと途中で別れた。
後で僕の家に戻ってくるらしい。
機嫌が悪くなって帰ってくるのかなと僕は思ったけれど、帰ってくるまで僕は起きていられないかもと思う。
そう僕も眠りたくて堪らなかった。けれど、
「とりあえずこの花、“よつばの花”の種を植えて生長促進剤をかけておこう。生長促進剤“すくすくにゅるにゅる君・バ-ジョン1.5”。上手くいくと良いな」
空いている小さな植木鉢に、種を二つ放り込んでその生長促進剤“すくすくにゅるにゅる君・バ-ジョン1.5”を振りかける。
枯れませんようにと思っていると向くりと即座に芽を出す。
どうやら上手くいったようだ、と思うと疲れが出てきてふらりと倒れ込みそうになると、後ろで誰かに支えられた。
いたのはクロヴィスだ。
流石はラスボス、あの戦いでも服すら濡れていない。
少しだけは精神的な疲れが見える気がするが。と、
「そんなにふらふらで、もう眠れ」
「うん、そうするよ、ふえっ」
そこで僕は浮遊感を感じる。
気付けばクロヴィスに抱きあげられていたが、そこまでしか僕は考えきれず、むしろクロヴィスの体温が服越しに感じられて気持ちいいな、すや~、という状態だった。
そしてそんな僕を見てクロヴィスが、
「だからどうしてそんなに無防備なんだか……。このまま俺のベッドに引きずり込んでやるよ」
笑うようにそう告げたのは僕は気づかず、誰かに抱きしめられているのに気づいて僕が悲鳴を上げて目を覚ますのは、次の日の朝の事だった。
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ライが連れ込まれたのは、とある宿屋だった。
それも高級なもので居心地の悪さを感じる。と、
「それで君が目的としているのは、陽斗という不思議な子だね。まあ、魔族が異世界から何かを呼び寄せたのはこちらも掴んでいたけれど」
「その様子を探る為に僕がここにいると話してもいいのかな? と囁いて僕を呼び寄せる貴方の性格の悪さには辟易しています」
「……もう少し僕に媚びて情報を引き出そうという気はないのかな?」
「貴方に媚びるなんてお断りです。そしてそれは僕の役目じゃない」
「そうかな? 君に誘惑されたなら、僕は何でも話してしまいそうだけれどね」
笑うフェンリルのその余裕が気に入らずに、ライは更に不愉快になりながら、
「それで、僕に何か用ですか?」
「君たちの目的を少し聞きたいと思ってね」
「お断りです」
「でも、こちらの動向、そう、“クロヴィス”にたする対応について、君は知りたくないのかい?」
「……」
「今日はこれから美味しい物を僕と一緒に食べて、少し情報交換をするだけにしようと思うのだけれど、どうかな?」
フェンリルがライにそう告げた。
そしてライはそのフェンリルの笑みを見て、自分の先ほどまでの不安と決心は一体……という気持ちになりつつ、
「どうしてそういった嫌がらせをするのですか?」
「ん? 好きな子を落とすにはあまり怖がらせないようにしようと、そう判断しただけだよ」
「……まるで僕のことを本当に好きみたいじゃないですか」
「本気だからね」
にこりと微笑みながら優しげな眼差しでフェンリルはライを見ている。
この男は苦手だ、そう思いながらライは、いくつかの話を情報交換したのだった。
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どことなく全体的に明るい気がする。
どうやら朝になったようだと僕は思って、眠い目をゆっくりと目を開くと目の前にクロヴィスがいた。
「うぎゃああああああ」
突然、僕の顔面に広がったクロヴィスの寝顔に大きな悲鳴を上げたわけですが、その声にクロヴィスが薄っすらとまぶたを開ける。
吸い込まれそうな青い瞳。
眠そうなその瞳には僕の驚いた顔が映っているが、そこでクロヴィスが一言、
「うるさい」
「ふぎゅ、うぎゅっきゅ……」
そこで僕はクロヴィスに抱きしめられた。
しかもそのまま顔を胸元に擦り付けられるようにして強く頭を引き寄せられ、声が出せない。
けれど僕としてはこんなふうに抱きしめられる状況から逃げ出したいというか、恥ずかしいというか、意識してしまうというか……そんな理由から、ジタバタジタバタしてしまう。
だがそんな暴れている僕の手をクロヴィスに掴まれて、そこで、
「……そういえば、陽斗をベッドに引きずり込んだのか」
「そ、そうだよ! 僕はどうしてこんな所に……」
最後の記憶は、確かクロヴィスに抱き上げられた所で終わっている。
その後は、疲れていたせいもあって覚えていない。
そんな僕の不安を見ぬいたかのように僕を見ながらクロヴィスがとてもいい笑顔で、
「昨日、陽斗がこの部屋に来た後、何があったか知りたいか?」
「う、うん」
「あれだけ可愛く啼いていたのに全く覚えていないのか」
僕はそれを聞いた瞬間、脳が理解するのを放棄した。
いやいやいや、まさかまさかまさか。
でも、僕はクロヴィスに……抱かれた? 記憶が無い内に?
「う、嘘だよね。うん、だってほら、服を着ているし」
「着せてあげたからな。風邪を引いたら困るし。……背中を流させてくれなかったからな」
「そ、そんな……」
ただそれだけの理由で僕はクロヴィスに眠っているうちにされてしまったらしい。
なんて事だと僕が思いつつそこまで嫌じゃないような気がしなくもなかったりと混乱していると、
「嘘だよ。抱き上げたらやけに幸せそうだったから、一緒に寝た、それだけだ」
「そ、そうだったんだ。良かった……幸せそう?」
「ああ、抱き上げたら安心したかのように眠っていたからそのまま連れてきてだき枕にした。俺も気持ちよく眠れた気がする」
「そ、そうなんだ、良かった」
「そうだな、背が小さいから子供みたいに体温が高いのか?」
「……」
僕は沈黙した。
それは、僕がここに来る前からずっとずっとずっと気にしていたことで、
「こ、こんな風に小さくなりたくてなったんじゃない!」
「そうかそうか。それで、そろそろ起きたほうがいいんじゃないのか?」
「あ、フィオレ達も起きているかも。ちょっと様子を見てくる」
クロヴィスにそう答えて僕はベッドから起き上がり、僕の部屋に向かう。
そんな僕が、 あの花の影響で喘いでいるライとフィオレの惨状に気づくのは、そのすぐ後の事だった。
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“マルイポテト”という、じゃがいものようなものを使った、グラタンもどきの朝食と紅茶。
昨日の今日で、疲労のためかフィオレとライは食欲があまり無いようだった。
もっとも喘いでいたのもあって夢見が悪いのも多分にあると思う。
そこには特に突っ込まず、タマにはグラタンを、リリスには粉砂糖で作った砂糖のお花をあげる。
二人共嬉しそうに食べているのをほのぼのとしながら見ていると、玄関のベルが鳴らされる。
こんな朝早くから誰だろう、そう思って僕は玄関に向かい、開くと、
「やあ、折角だから遊びに来たよ」
そう言って、ウィルワードが現れたのだった。
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現れたウィルワードの姿を見てだろう、背後でカシャンと金属製の何かが落ちた様な甲高い音がした。
なので僕が振りかえると、蒼い顔をしたクロヴィスがグラタン皿の上にフォークを落とした所だった。
そしてそんなクロヴィスにウィルワードが手を上げて、
「やあ。元気そうだね。何故か事前に会う約束をするとクロヴィスはその場からいなくなるから、黙って尋ねる事にしたんだ。今、朝食みたいだね」
クロヴィスは相変わらず固まっている。
朝から存在するはずの無い苦手な人物に遭遇してしまったかのような、悲壮感が漂っているのはいいとして。
僕もいいたい事があった。
「ウィルワードさん、昨日の件は僕も絶対に許せません」
「いや、ごめんごめん、また新製品の失敗をしてしまってね。やっぱり人形以外の、特に新しい薬品関係は僕にはあっていないのかな……」
「あの巨大生物を倒すの、凄く大変だったんです」
「うん、悪いと思っているよ。だからそのお詫びも兼ねて、朝から行列ができるマリン堂特製の“シュー・ア・ラ・クレーム”を十個ほど買ってきたのだけれど」
「……お茶をお出ししますので、あちらの椅子に座っていて下さい」
僕はあっさりウィルワードを許した。
何故かって、それはマリン堂特製の“シュー・ア・ラ・クレーム”を持ってきたからである。
ゲーム内で幾度となく美味しい美味しいと表現されてきた名店の味!
ぜひ口にしてみたいと思っていたのだ。
なのでうきうきとしながら紅茶を淹れるためにお湯を沸かす。
丁度朝食を食べ終わった頃で良かったと僕は思いながらもそこでクロヴィスが珍しくウィルワードに自分から話しかけていた。
「それでそんな風に顔をさらして歩いていいのか? ウィルワード」
「ああ、昔は顔に包帯ぐるぐる巻きでいたからね」
「後は大きな帽子と仮面もかぶっていて、歩いているだけで警備の人間に連れて行かれそうな姿だった。実際に荷物検査も何回かされていたし」
「そういえばそうだったね。あの頃は謎の魔法使いごっこが趣味だったからね」
随分昔の事のように感じるな~、と気楽そうにウィルワードは呟きながら付けているモノクルの位置を動かす。
どうやら僕が見たウィルワードの姿は、昔の物のようだったと今更気付く。
やはりゲームとは違うみたいだ、そう僕が思っているとそんなクロヴィスにウィルワードが、
「でも相変わらずクロヴィスは凄いよね、魔法剣士といっても杖を持つ僕達と同じくらいの魔法が使えて剣の技が使える、規格外の能力者ですから」
「何故今更そこを強調するんだ」
「いや、そこのフィオレという少年も魔法剣士なのですが魔法の方に特化しているようですから。陽斗もそう思うでしょう?」
そう笑うウィルワードだけれど、そんな風にクロヴィスが規格外なのはラスボスでありその存在が……なのだけれど、そこを突っ込むと危険な仲間……は今の状況でいるけれど、準備の整っていないラスボス戦に突入する可能性がある。
何で突然そんな事を聞いちゃっているんですか、そして僕に話を振るんですかウィルワードさんと恨めしく思いながらも僕は何か他の話は無いかと僕は悩む。
そこで目についたのはフィオレの剣だ。
「そ、そういえばフィオレが剣を使っている所はほとんど見ない様な……」
「当り前だ、僕は魔法使いだからな。ただ僕は貴族でもあるから人間にも身代金目的の誘拐もあったりするから、魔法で攻撃するには威力があったり即座に反応できなかったりする部分もあるから剣を持っているだけだ。攻撃目的で使いこなすというほんとうの意味での魔法剣士はクロヴィスみたいな者の事をいうのだろう」
「なるほど」
頷く僕を見ながら、次にチラリとフィオレは何かを思い出したかのようにクロヴィスを見る。
そして迷ったように口を閉ざしてから、次に、
「この前の温泉で僕は思ったのだけれど、クロヴィスは……もしかして僕と同じ力を持っていたりするのでは?」
何処かワクワクしたようにクロヴィスにフィオレが聞く。
けれど僕はゲームで理由を知っている。
それはフィオレが古い、クロヴィスを崇める司祭の血を引いているからで……あまりクロヴィスには効かないほうがいいと思う話なのだ。
知らないから仕方がないとはいえ、どこか期待するようなフィオレとは対照的にクロヴィスは冷たい目でフィオレを見て、
「答えるつもりはない」
そう、一言告げた。
それにフィオレは大きく目を見開いて俯く。
理由があるにしろ、もう少しい方があったのではと僕が思っているとそこで、
「そういえばフィオレといったね。君は僕の、ふぁん? らしいけれど僕に何か聞きたいことがないのかな?」
「! ぜひ、ウィルワード様の、“人形魔法”を間近でみせて欲しいです!」
「そうなのかい? じゃあ折角だから作り方も教えてあげようか?」
「本当ですか! ぜひ、ぜひお願いします」
目を輝かせるフィオレ。
先ほどまでの悲しい雰囲気は微塵もない。
その一方でクロヴィスは、そこはかとなく機嫌が悪い。
僕はどうしようかと思っているとそこでウィルワードが、
「この人形の魔法を教えるのは、ディアナ魔法学園のミレニアムちゃん以来だね。あの子には特別な才能があったな……多分、“血”によるもんだろうけれどね」
「……そこ、陽斗の出身の魔法学園ですよ?」
フィオレに言われて、本来のゲームの主人公のミレニアムちゃんを思い出す。
でも設定が少し違うようなと僕が思っているとそこでウィルワードが、
「あそこに入ったことがありますよ。高い点を貫くような塔が5つほどあるのでしたっけ」
「た、確かそうだったかと」
僕は相槌を打つようにウィルワードに頷くと、ウィルワードは意味深に笑う。
な、なんですかと僕が不安になっているとそこでウィルワードが、
「そうそうクロヴィス、そんな不機嫌そうな顔をしていると幸運も逃げていきますよ」
「……ああそうだな、陽斗、お湯が湧いているぞ」
そこでクロヴィスは深々と嘆息して、お湯が湧いていると僕に指摘したのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
とりあえず紅茶を入れて、持ってきてもらった“シュー・ア・ラ・クレーム”の箱を開く。
白い紙箱には、端の方にマリン堂という文字が赤くスタンプで押されている。
その辺はいいとして、開くと同時に、真っ白な純白の生クリームと柔らかい黄色のカスタードクリームに香り高いバニラビーンズ……のようなものが入ったクリームがぎっしりつめられた“シュー・ア・ラ・クレーム”がぎっしり並んでいる。
しかも表面には薄く粉砂糖がまぶされていていて見た目も可愛らしい。
それを見ながら僕は一つづつ、お皿の上に載せていく。
そして皆でその“シュー・ア・ラ・クレーム”を食べたわけだけれど、
「美味しい!」
「本当だね!」
「いい味だ」
「うまうまにゃ~」
「美味し~」
クロヴィス以外の全員がそう言って、持ってきてよかったよとウィルワードが告げる。
何故かクロヴィスは沈黙したまま“シュー・ア・ラ・クレーム”をたべており、一つまるまる食べ終わると席を立ち上がり、
「出かけてくる」
そう言って席を立ち上がり歩き出す。
どことなく機嫌が悪そうだし、僕を戦闘に連れて行かない辺りでよほど機嫌が悪いのか、落ち込んでいるのだろうかと不安に駆られた僕は、すぐにクロヴィスを追いかける。
家を出た直ぐ側で僕はクロヴィスに追いついたので、クロヴィスの手を握ると、
「どうした?」
「え、えっと、何だか機嫌が悪そうだから……その、あまり気にしないほうがいいと思う。フィオレに悪気があったわけでもないと思うし」
クロヴィスの正体を知っているけれどそれを隠すようにして慰める。
それにクロヴィスはほんの少し驚いたような顔をしてから微笑んで、
「……分かっている。陽斗にも心配かけた。でも、少し気が滅入ったからストレスを発散させてくる。夜には帰る。ウィルワードがいなくなった頃に」
「うん……行ってらっしゃい」
そうやって僕は手を降って送り出し、家に戻っると丁度、様子を見に行こうと皆がドアの前に集まっている所だった。
なので、クロヴィスは夜まで帰ってこないと告げるとフィオレがどことなくしょんぼりしたように、
「やっぱり僕の質問は無神経だったのだろうか」
「これから気をつければいいよ。クロヴィスもあの力に思うところがあるみたいだし」
「そう、だね。気をつけよう」
そう答えるフィオレ。
と、ウィルワードがそんなフィオレに、
「クロヴィスと同じ力って何の話かな?」
「! あ、いえ……その、あの……」
「……そういえば君の顔、どこかで見たことがある気がするね。メルクリル家と関係がないよね?」
「僕の家ですが、ごぞんじですか?」
少し警戒したようにフィオレがウィルワードを見ているけれど、ウィルワードは楽しそうに笑いながら、
「君の秘密の力も全部知っているよ。諸々の理由で“関係者”だからね」
フィオレが沈黙すると同時に、ウィルワードはちらりと僕を見てから、次にライやタマ達を見て、
「まあこの辺でやめておきましょうか。それでそろそろ人形の作り方でもお教えしましょうか?」
ウィルワードは大量の地雷をまきつつ話を終わらせたのだった。
。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"
はた迷惑な人だというのをしみじみと感じていた僕は、更に地雷だと感じていた。
それは人形作りの最中。
作った犬の人形を見て、フィオレが、
「これ、以前、陽斗が使っていた人形に似ているかも」
「そうなのかい? 一応僕がこういった人形は作って売りはしていたのだけれど、特定の人にしか打っていなかったし、これは売っていなかったはずなんだけれどな」
僕は人形を作る手を止めて凍りついていた。
だって本来のゲームならば、このウィルワード本人にそれを聞いているはずだったから。
つじつまの合わないその話に僕はどう言い訳しようか迷っていると、そこでウィルワードが、
「ああ、そういえば一人だけ作り方を教えた事があったかな、確か、ミレニアムちゃんだったかな。その小関係で話が伝わったのかもね。なにせ、三年ほど恋人にふられて引きこもっていたから」
フィオレがショックを受けたようにウィルワードを見た。
僕が言っても全然嘘だろうみたいに流しやがったくせに、酷いと僕は思う。
そんなフィオレはしばらく固まってから、
「ど、どんな恋人だったんですか?」
「“深淵の魔族”、黒髪に赤い瞳の綺麗な人だよ。心が強いところがあったから、僕は心が弱かったから振られてしまった。もちろん諦めてはいないんだけれどね」
「……“深淵の魔族”は“敵”です」
「“敵”とは言うものの感情も知能もある“深淵の魔族”だからね。好きになることだってあるよ。それに……君は少し頭がかたすぎる。だから何も聞いていないのかな?」
「……何がでしょうか」
「うーん、もう少ししてからの方がいいかもね。時期もあるし。それに陽斗にも関係があるからね」
「え?」
そこで疑問符を上げたのは僕だった。
フィオレの秘密を語っていたはずなのに、何故か僕まで巻き込まれそうになってくる。
そんな僕にウィルワードが、
「陽斗がいなければ僕の教え子のミレニアムちゃんもその計画に組み込まれる予定だったんだけれどね。いわば身代わりのようなもの。さて……知っている情報によって得られる知識と質は異なるけれど、陽斗、君は今の話で何を感じたかな?」
ウィルワードが僕にそう問いかけてくる。
それは僕がどこまで知っているのかという問も含まれている気がする。
ゲームの主人公がこの後どうしたのか、どういった結末を迎えたのかは僕は知っているけれど、
「よく、わかりません。ただ、石版は集めています」
「それが重要なものという認識はあるんだね。白い歯車と黒い歯車の意味、君は理解しているのかな?」
「……神話という程度です。でもウィルワードさん、遠回しに僕達に聞こうとするのはやめてくれませんか? 何だか気分が悪い」
「はは、ごめんごめん。なんだか最近クロヴィスも人の噂になるのを気にしたりといい兆候が見え始めたから、嬉しくなってつい」
「クロヴィスは、元々感情表現が豊かで意地悪だと思います」
それこそゲームの時よりもそんななのだ。
確かに他のものにはあまり興味はないようだけれど、僕に対してはアレである。
けれどそんな答えにウィルワードは更に目を輝かせて、
「素晴らしい。さすがはクロヴィスが選んだだけのことはある」
その言葉に同調するようにフィオレが頷き、
「……確かに、陽斗の前ではクロヴィスはちょっと違うな。やはり見た目か、それとも禁呪一歩手前の魔法が使えるその才能を見ぬいたのか、やはり陽斗は只者ではないな」
「禁呪一歩手前の力が使えるのか。なるほど、愛されているね~」
楽しそうなウィルワードだが愛されているね、とはどういう意味なのか。
というか禁呪のたぐいも本当は大量に使えたりするので、その辺りの魔法は気をつけて使おうと僕は決意する。
ただ、ウィルワードの話を聞いていると、僕がい世界から来たことなども含めて全部バレているような気もしたけれど。
そこで更にウィルワードは僕達と、そしてライとタマに問いかける。
「そういえば君達、陽斗とどうやって出会ったんだい?」
「僕の場合はそこの駄目猫に僕のソーセージが食われたのが原因でした」
「駄目猫は酷いにゃ~、僕はお魚をくれたので買う権利を与えることにしたにゃ~、陽斗も好みにゃったし」
「僕は偶然遭遇したのが縁かな」
フィオレ、タマ、ライの順で答える。
ライの場合は、魔物としての遭遇が先だったんだよなと僕は思い出していると、
「なるほど、ほぼ偶然か。偶然なのに面白い集まり方をしている……そしてクロヴィスも陽斗のそばにいると」
「そういえばそうだ。僕も陽斗のそばにいるし。……クロヴィスなんて昔僕がパーティに誘ったら無視された挙句僕のことなんて覚えていなかったからな」
「クロヴィスらしいね。僕も始めそうだったからね。ただ、色々巻き込んでしまってそういった意味で腐れ縁かな」
いろいろの部分がすごく僕は気になったが、それ以上は聞くのを止める。
何となく、クロヴィスがかわいそうなことになっていそうだからだ。と、そこでウィルワードが、
「何となく陽斗の居場所が強引に作られているんじゃないかと思ったけれど、上手く馴染んでいるようだね」
「……ウィルワードさん、意味深なことをいうのは止めてください」
バレたら僕、本当に困るんですと思ってそう告げるとウィルワードはごめんごめんと答えながら、
「箱入りらしいからね。潤沢な魔道具等が見渡すとあるようだから言ってみただけだよ。対人能力も問題ないようだね。この世界が、陽斗はすきかな?」
「クロヴィスと同じことを聞くんですね。僕はクロヴィスやフィオレやライ、タマ、リリス達皆がいるこの世界は気に入っています」
それは僕が今現在思っている本心だった。
そしてそれをわざわざ口に出させられるのも少し恥ずかしい気がした。
だからそういったもので僕はちょっとだけ不機嫌になったのだけれどそこで、
バリバリバリガッシャーン
大きな音を立てて僕の家の屋根に風穴を開けて、何かが降ってくる。
ガラス製の道具の上に落ちたので、いくつかの道具が割れたような音を聞きながら僕が青くなって様子を見に行くとそこにあったのは、
「人形?」
ひげのついた青い帽子をかぶった男性の人形が僕の砕けたガラス道具の上に鎮座していたのだった。




