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能力/解説/錯誤

「ところで、そんな世界を滅ぼしかねない危険な相手みたいですけれど、どういう原理で世界を滅ぼそうとしているんですかね?」

 そうそう、これを聞くのを忘れていた。

「あいつの能力が他のものとは別格にヤバイってのが関係してるんだけどね。

 因果変換式 ラプラス。

 これは、過去の現在、そして、未来の因果律を好き勝手弄るとんでもない能力なんだけど使()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 と手をぱぁん、と叩き、

()()()()()()()()()()()()()()()

 と厳かに宣言する華恋さん。

 ふうん、なんだかピンとこないけれどその能力自体がとんでもないことは理解できた。

「華恋さんも香月さんも超能力みたいなのを持ってるみたいですけど、やっぱりそれで対抗するんですか」

 うん、基本そうだね、と香月さん。

「わたし達はこの能力のことをスペルって呼んでる。なんでかって言うとね――


『思い出せ、掘り起こせ、すべてを明かしここに示せ。

                   ――記憶開示式 ムネーモーシュネー』


 ――こうして、自分がしたいことを――もちろん、その能力の指向性の範囲でだけど――具体的に言語化しないといけないから」

 再び、あたしの周囲にあたし自身の体験した記憶がスクリーンに表示されていく。

「ちなみにわたしの能力は人の記憶の開示に関する能力で――」

「私は他人の能力(スペル)を打ち消す能力。


『私はその()()を許さない、私はその()()を認めない、歪みを正せ。

                                    ――対因果変換式 ノルン』


 まあ、ざっとこんな感じ」

 あたしの周りのスクリーンが一瞬にして掻き消えた。

「この能力(スペル)のおかげで私は敵の能力(スペル)の影響を受けない」

 へえ、だけどさっきは香月さんの能力は――、あ、そっか、()の能力行使は跳ね除けてくれるのか。

 なんて、ご都合主義的能力。

 確かに、敵の能力が効かないっていうのは、すごいアドバンテージのように思えるけれど、逆に言えばそれは超能力が効かないって体質以外は普通の女の子でしかない訳だけれど、ぶっちゃけ――

「あの、怖くはないんですか?」

 あたしは自然とそう訊いてしまった。

 うん、怖いよ、と声を揃えて答える華恋さんと香月さん。

 じゃあ、どうして――、と問うあたしを遮り、

「だけどね、私の大切な人のせいで世界が消えてしまうって考えたら許せないんだ。そっちの方がよっぽど怖い。

 だから、戦うの、抗うの。そんなことはさせたくないって」

 華恋さんはあたしをまっすぐ見つめて答えた。

 大切な人? それは、あの彼の事?

 多分、これは藪蛇だから措いておく。

 うん、この人はすごい人だと思う。本当、尊敬だってする。けれど――


 致命的に間違っているとも思った。


 たぶん、この人は大地震が起こって大勢の人の命が失われたどうしようもない状況に陥ってしまったとしても自分のせいだと思ってしまう人だ。

 他人とは違う異能を得てしまった弊害なのだろうか?

 他人には持ちえない特殊能力を得てしまった人間はそれを大勢のために使うべきだと錯覚しているこの世で最も哀れな類の人種だ。

 別にあたしだって普段はそんなめんどくさい人種と関わり合いたくはないのだけれど、残念ながらあたしは受けた恩を仇で返すことができるような人間ではなかったらしい。

 何とかして、この不要な使命感を削ぎ落して普通の女の子として暮らしてほしい。

 なんでもない幸せな日常を享受して欲しい。

 それが、明日にも滅びる世界だとしても――いや、だからこそ、少数が割を食うのは馬鹿げてる。

 心の底からそう思った。

 だけど、この人の質の悪さは昨日、嫌というほど思い知ったばかりだ。

 真正面から説得を試みたところで反発されて終わりだろう。

 だから、付け入る隙があるとすれば……。

 微妙な表情を浮かべている香月さんをあたしは視線で捉えた。

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