※この手しか知りません
結構散らかってきたんで、明日あたり部屋を片付けます。
「・・・んあ?」
どこか滑稽な声を漏らした後、ダイゴは周囲を見回す。アッシュの言っていた通り、ダイゴはあの文字を押した瞬間、移動していた。
「何か、さっき居たとこと似てんな」
そんな感想を溢すダイゴ。そこにはさっきまで自分が居た場所と同じように、いくつもの移動機が置かれていた。しかし、さっきの場所とは違い、随分広く、自分の居るところから少し離れたところに、コンビニらしきところ施設や、"土産屋"という意味の文字を掲げている店が存在していた。
「・・・何か、駅みたいなとこだな」
それらの施設を見て、ダイゴはポツリと呟いた。
そんなダイゴの背後にアッシュが移動機を利用して現れたのは、それから3分くらい経った後のことである。
駅のような場所から出た後、ダイゴとアッシュは目的地を目指して、町の中を歩いていた。
その町は、獄番が存在する町と比べると、いささか閑散としていた。町を歩く人は少なく、それとは対称的に、廃ビルと思わしき人気の無い建造物は多い。
「・・・隠れるにはうってつけだな」
アッシュが、独り言の様にポツリと呟いた。
町の道は舗装されておらず、代わりに幾つもの足跡が付いた土が敷かれていた。所々に雑草が生えており、その緑に露が光っている。濡れた土特有の臭いが、ダイゴに生前の故郷を想起させた。
そのように勝手に一人で郷愁に浸っていたせいか、ダイゴの注意は幾らか散漫になっていた。故に、ダイゴは雨でぬかるんだ泥に足を取られ、すってんころりと転んでしまった。
「のすたるじっ!?」
そしてお約束とばかりに後頭部を地面にぶつけるダイゴ。幸いぶつけたところもぬかるんだ泥だった為に、ダメージは少ない。
そのように後頭部を僅かに地面にめり込ませているダイゴを振り返り、呆れた目で見下ろしてアッシュは言った。
「・・・テメェは普通に歩くことすらままならねぇのか」
「・・・いや、ちょっと懐かしさに足を取られちまって」
意味不明な事を供述するダイゴに対し、アッシュは本日何度目になるか分からない溜め息を吐いて、言った。
「・・・テメェがアホな事している間に、着いたぞ」
「へ?何処に?」
「・・・」
無言で倒れ伏すダイゴの腹に踵落としを決めるアッシュ。
「おぶぇっ!!」
たまらず沸き上がる胃液を何とか押し止めた後、ダイゴは腹筋から発生する痛みを堪えながら、フラフラと立ち上がる。
そんなダイゴを睨みながら、アッシュは後ろを親指で指して言った。
「あれが屑二人が住み着いている廃ビルだ」
見れば、そこにはカビやら草やらが繁茂して青くなっている巨大な物体があった。植物の隙間に見える古ぼけたコンクリートの地肌が、辛うじてそれが元来人が造った建造物であることを示している。
「・・・あそこに、ラムドレーやリムードが居るんスね」
即座に緊張した顔つきになるダイゴ。その心臓は早鐘と化していた。
そんなダイゴの表情を見てから、アッシュは言う。
「・・・まず入り口を探すぞ。見る限りだと、本来あっただろう出入口は草に覆われて、影も形も無ぇからよ」
「ウス」
そう返事をしてから、ダイゴは建物へと近付いていく。
そんなダイゴを余所に、アッシュはその廃ビルと、隣にあるもう1つの廃ビルの間、つまり路地に近付いていった。
そんなアッシュに気付き、ダイゴが足を止めて問う。
「あれアッシュさん?何処に行かれるんスか?」
「決まってんだろ、裏口を探すんだよ。こういう場合、本来あった入り口は機能を失っていて、代わりに人目につかないような裏口が出入口になってるって事も有るんだ」
「え、じゃあ俺も裏口を探した方が良いっスかね?」
アッシュの弁を聞き、ダイゴがそう問い掛ければ、こんな返答が帰ってきた。
「いや、テメェは本来あった入り口を探せ。そこが普通に出入口になってる事もある」
アッシュはそう言って、路地に姿を消した。
「分かったっス」
ダイゴは頷くと、再び廃ビルに近付いていき、そして草に覆われているだろう出入口を探し始めた。
草を掻き分けたりむしったりしながら扉を探すこと二分、
「あれ、・・・こいつは」
ダイゴは、古ぼけたコンクリートの壁の中に、古ぼけた透明な板を見つけた。
その後すぐにその板の周りを探ると、その全容が見えた。
「・・・自動ドアか」
それは、本来の入り口だったと思われる、透明な二枚の板から成る自動ドアであった。既に電気は通って無いらしく、ダイゴが近くに居ても開く事は無い。また、ドアの付け根や周りに草が絡まったりこんがらがったりしているのが原因で、その透明な板はその場に固定されてしまっていた。
そんな、透明な壁と化している自動ドアを前に、ダイゴは少し考えた後、
「・・・あ、妙案思い付いた」
と手をポンと叩いて言った。
ガシャアアアン!!
数秒後、ビルの中には、心象によって脚力を強化した上でガラスの壁をヤクザキックで蹴破り侵入した、ダイゴの姿があった。
「この手に限る」
これでもかと敵に侵入を知らせる愚案で押し入ったダイゴの表情は、何故か清々しかった。
あ、言い忘れてました。実はこの小説がこの二か月の間比較的頻繁に更新出来ていたのは、過去に書き溜めていた奴を投稿していたからです。しかし、その書き溜めもそろそろ尽きそうです。ですので、これからは一週間に一度、あるいは二週間に一度のペースで更新することになると思われます。今まで見ていただいた慈悲深い皆様に対し、そのことについて深く謝罪申し上げます。なんかスンマセン。




