地獄にて
個人的に死後の世界はあまり信じていません。だから一層死ぬのは怖いです。
黒人の青年は、背丈が186センチ程で、筋肉質な体をしていた。髪形は黒い坊主に近い短さの縮れ毛、服装は黒い半袖のシャツに栗色の長ズボンである。
対して、腕を組んで笑う青年は、背丈が185センチ程度で、髪は黒く、全体的に逆立った短髪をしている。服装は、上が袖の捲られた緑色のジャージと、下は黒いライダースパンツと言ったものだ。そして、その捲られたジャージからは、鍛えられた上腕二頭筋が少し見えていた。
「・・・てか、お前誰だ?見たことねえ顔だけどよ」
鎖が完全に掌の中に消えた後、黒人の青年が怪訝そうな顔をしながらダイゴに問う。どうやら、獄犬隊員にはダイゴが研修生として仮入隊していることは知らされていないようだ。昨日の今日の事であるから、仕方がないと言えば仕方がないが。
「俺はダイゴって言うっス!昨日から獄犬で研修生として働かせて貰ってるっス!これから一週間お世話になるんで、どうか宜しくお願いするっス!」
そんな青年に、ダイゴが俗っぽい挨拶と共にお辞儀をする。
黒人の青年はダイゴが研修生だと分かると、直ぐに怪訝そうな顔を止めて言った。
「・・・マイティだ」
「え?」
「俺の名前だよ。所属は第八部隊。宜しくな」
「オス!宜しくお願いするっス!マイティさん!」
ダイゴが勢い良く答える。
その一連のやり取りを見た後、ジャージの青年も口を開いた。
「では俺も自己紹介をさせて貰おう!俺の名はショウタロウだ!第五部隊に所属している!ところでダイゴ!お前日本人か!?」
「え?・・・そうっスけど、それが何か?」
ダイゴの返答に、ショウタロウが目を輝かせる。
「そうかそうか!ならばダイゴ!お前、好きな仮面ライダーは何だ!?」
「ウェイ!?か、かなり唐突な質問っスね・・・。・・・そうっスね、俺は仮面ライダー剣が好きっス」
ダイゴは、少年時代を思い出しながら答えた。
その答えに、ショウタロウの目の輝きが更に増す。
「剣か!あれは良いものだ!ダディの覚醒にムッキーの成長、そして始さんのしようとした選択に対するケンジャキのした選択!どれをとっても素晴らしい仮面ライダーだった!と言っても、昭和平成全てのライダーは皆それぞれ至高の存在だがな!」
どうやら、ショウタロウは仮面ライダーに対してかなりの愛を持っているようだ。にしては剣の登場人物のことをオンドゥル語で言っているが、まあそれもまた愛情表現の一つなのだろう。
そんなショウタロウを放っておき、マイティが言う。
「ところで、ダイゴとニゾウさんは『地獄』に何しに来たんだ?」
「え?いんふぇるの?なんスか、それ」
急に出てきた謎の単語にダイゴの思考がブリザードヴェノムする。そんなダイゴにニゾウが言った。
「『地獄』っていうのはね〜、今儂等が居るこの場所の事だよ〜。ま〜詰まるところ、件の訓練施設の名称さ〜」
ニゾウの言葉にマイティは頷くと、続く形で述べる。
「此処では獄犬隊員達が日々組み手等をして自分を高めているんだ。んで、その組み手の際に心象を使っても良いってのが、この地獄の一番のメリットなんだよ」
「へ、へえ。そそ、そうなんスか・・・」(ってことは此処以外で心象を使った組み手はしちゃ駄目ってことか!?そんなこと知らなかったから、アッシュさんとの組み手の時にモロ心象使っちまってたよ!!やべぇよ・・・やべぇよ・・・)
ダイゴが動揺で目を白黒させていると、マイティが改めて言った。
「それで、此処には何しに来たんだ?見学とかか?」
「その通りだよ〜。流石マイ坊、冴えてるね〜」
そう言ってニゾウが笑う。そんなニゾウにマイティが言った。
「そう言う事でしたら、今から見せましょうか?俺達の組み手」
ニゾウが頷く。
「良いのか〜い?じゃ〜、頼むよ〜マイ坊〜」
その言葉に、今度はマイティが頷いた。
「分かりました。じゃあそう言う事だからショウタロウ、戦闘準備は出来たか?」
「ああ!バッチリだ!」
マイティの問いに対し、ショウタロウがサムズアップで答える。それを見てから、マイティは
「そうか。じゃあダイゴは、ニゾウさんと一緒に、遠くの壁に逃げてくれ」
と、凡そ50m程離れていると思われる壁を親指で指して言った。
そのボディランゲージを受け、ダイゴは「分かったっス!」と言った後、ニゾウの方を向く。
「んじゃあ壁まで行きましょうニゾウさん!」
「了解だよ〜」
ニゾウと共に壁まで行ってから、ダイゴはその黒い部屋の中を改めて見渡した。
(見た感じ、縦横の長さどちらも50mくらいで、天井までの高さは10mくらいか。・・・二人で組み手する分には、ちょいと広過ぎる気もすんな)
そんなことをダイゴが思っていると、マイティが30m程先から声を投げ掛けてきた。
「おーい。もう始めても良いかー?」
その言葉に対し、ダイゴは「良いっスよー!」と返す。
ダイゴの返答が耳に届いた後、マイティはショウタロウに言った。
「・・・じゃあ始めるか。組み手をよ」
「ああ!言っておくが、組み手とは言え手加減はせんぞ!」
ショウタロウが笑いながら言う。
「・・・そう来なくっちゃな。じゃあ、いつも通り」
殺す気で行くぜ
その言葉が発せられてから、一漠と経たぬ内であった。
ショウタロウの右前蹴りと、マイティの左ストレートのぶつかる音が、だだっ広い室内に響き渡ったのは。
夢は長生きのギネスを更新することです。




