ソーセージマルメターノ
ドイツには、血で出来たソーセージなるものがあるとテレビで見たことがあります。果たして美味しいんでしょうかソレ。
そんなことを考えているダイゴだったが、その思考は次のマリオの言葉により断ち切られた。
「さて、ダイゴちゃん。お喋りも良いけれど、さっきした約束も果たしてくれなきゃ困るわよ?」
「え? 約束? ……あ」
その時、ダイゴは思い出した。獄番内にて行われた、マリオとの約束を。
「衣食住を手にする為には、まず働かなくちゃ! 日本の諺にもあるでしょ? "働かざる者食うべからず"ってね」
そう言いながら、マリオはダイゴにいつの間に取り出したのか、料理の乗った大皿を二枚、手渡してきた。
「おわっとととと!? ……っフー危ねぇ、落っことすとこだったぜぇ……」
ダイゴは急に皿を渡された為、一瞬バランスを崩すも、何とか立て直す。
「えと、仕事って何やるんスかね? これ運ぶだけで良いんスか?」
ダイゴの問いに、マリオが答える。
「それもあるけど、やっぱりお客さんとの会話もして欲しいわねー。ほら、この仕事コミュニケーションしてなんぼのところあるから」
「う、ウス」(お、オネェさんとの会話って何すりゃ良いんだ!?)
ダイゴはそんなことを考えながらも、その二つの皿を少し持ち上げマリオに問う。
「これって何処に運べば良いんスかね?」
「そのお皿は、彼処の栗髪のお兄さんが座っている所に持っていって」
そうマリオが指差す方向を見やれば、そこには6月にも関わらず、暑そうな黒いダウンコートを着た、栗色の髪の青年が座っていた。身長は175センチ程で、髪型は緩やかな天然パーマ、目鼻立ちは結構整っているが、若干にやけ面が目につく。
ダイゴはマリオに言われた通り、その男性の所に皿を運んでいく。
「オス! お待たせしたっス! こちら……えーと、何かソーセージ丸めたやつと、……豚カツ? 的な何かの料理になるっス!」
ダイゴは料理名が分からなかったので、とりあえず見たままのことを言った。
すると、そんな無知なダイゴに対して、男性が口を開いた。
「ナハハハー、そのソーセージ丸めたやつは『ブラートヴルスト・シュネッケン』、豚カツ的な何かは『シュニッツェル』だよー坊主君」
その砕けながらも明るい口調にダイゴは少し安心する。しかし、安心すると共に、あることに気付いた。
(……酒臭っ!? ……良く見りゃこの人顔が赤いな。こりゃあ酔っぱらいですね間違いない)
その男は、頬に朱が差しており、見るからに酔っていたのである。見れば目も酔いによるものなのかトロンとしていた。
ダイゴがそんなことを考えながら直立不動で男を見ていると、男はダイゴに対し、言葉を投げ掛けてきた。
「んー? どうしたの坊主君? 俺の顔に何か付いてるー? ……あ、さては俺に惚れちゃったー?」
「ファッ!? そ、そんな訳無いじゃないっスか!! 第一、俺はホモじゃ無いっス!!」
ダイゴは有らぬ疑いに対し、必死に弁明する。すると、酔っぱらいはこう言ってきた。
「あれそうなの? んじゃー俺と一緒じゃん」
「俺と一緒? ってことはアンタも?」
「そうだよー、俺も所謂ノンケさー」
そう言って笑う男に、ダイゴは怪訝な顔つきで問う。
「な、なら何でゲイバーに居るんスか!?」
「そりゃー、ここは料理も旨いし、店員も面白くて優しくて、良い人達ばっかだからねー」
そう言う酔っぱらいに、丁度近くに居たベンが言った。
「あら、嬉しい事を言ってくれるじゃないのセアラさん。何なら今すぐ私も美味しく頂いちゃっても良いのよ?」
「そ、それは遠慮しとくよベンちゃん! 俺この後仕事あるし!」
その赤い顔を青くしながらそのセアラと呼ばれた酔っぱらいは言う。それを聞いて、ベンは「もう、照れ屋なんだから」と言って他のテーブルに移っていった。
それを確認してほっと一息つくセアラに、ダイゴは問う。
「えーと、セアラさん? ってどんな仕事されてるんスか?」
セアラはその質問に、料理を口にしながら答えた。
「んー? このダウン見て分かんない? ってことは君、まだ死界に来て日が浅いんだねー」
「え? ま、まあそうっスけど……」
そう言いながらダイゴは少しその場から移動し、セアラのダウンを眺めてみる。
するとそこには。
「……カラ、ス?」
白い烏とおぼしきシルエットが描かれていた。セアラは食べながら言う。
「そ、烏。俺の仕事は『烏合』って言うんだー」
「烏合……。何かカッチョいい名前っスね! して、その仕事内容は!?」
ダイゴは興味津々といった様子でセアラに問う。
「死体回収だよー」
セアラは、ソーセージを頬張りながら、当たり前の様にそう言った。
僕はソーセージで言えば魚肉ソーセージが好きです。




