Trigger No.010 最終話
我は傍観者、シャルルである。昨夜の暴風雨が嘘のように静かだ。
外は吸い込まれそうなほどの青空が広がっている。
部屋の明りはリセットされ、主人の板も光って、何事もなかったように起動していた。
起床し、すぐにスマホを手にする、いつものように首を曲げ「下」を向く生活の始まりだ。
ネットのうみに飛び込み見知らぬ誰かの言葉に一喜一憂する。忙しい日常が戻ってきた。
やっぱり人間は変わんないね。我はいつものように本棚の頂上(特等席)から様子を眺めている。
そして、主人はふと手を止めスマホを机の上に置いた。
ゆっくり顔を上げ、本棚の上の我をじーっと見つめた。
「おはよーっ、シャルル昨日はありがとうな」
その目は、いつもの板の奴隷ではなく、目の前にいる本物の生命をみている。
これだ、人間は時々俯いて、道を見失うが、こうして「上」を向くことを忘れなければ、いつでも自分を取り戻せるそれを気づいてもらうために、我はこの部屋の特別席に君臨している。
我は、猫であり、名前はシャルル。
この主人の「傍観者」でいられるのなら、退屈なアパート暮らしも、悪くはないねぇ~。
我は立ち上がり、大きく背伸びして本棚から、主人の目の前へと優雅に飛び降りた。
「さて、この感動の朝礼はこの辺で、お主が上を向いた記念にシャルルから特上のご飯の請求に今すぐ応えてほしいのぉ~グルグル」
主人は苦笑しながら、我を愛するカリカリ袋を手に取り、窓から差し込む朝の光の中で皿が満たされる音が小さく響いた。
傍観者の主張記念はこれからもこの部屋でにぎやかに、続くであろう・・・。
最後まで拝読まことにありがとうございます。保護猫として主人に引き取られた猫が主人の姿をぼやく、物語にしました。スマホの管理で、我のことをみてほしいなんていう、猫の気持ちも描いてみました。
日々の生活に少し疲れて下を向いてしまった時は、ぜひ、シャルルを思い出し、ふっと「上」を向いてください。
♧♧♧♧♧♧ じゅラン椿 ♧♧♧♧♧♧




