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おまけ小説  『追試前日の……救世主?』その3

「何の辞書?あたしが持ってるので良ければ、貸そうか?」

「古代オズ語だけど。持ってる?」

「……いや持ってない。っていうか、普通の学生は使わないでしょそんなの」


 気持ち悪そうに言うティファには構わず、セイアは「じゃあちょっと、取りに行ってくる」

と片手を挙げて立ち上がった。そして、テーブルから少し離れてスペースを作ると、あっという間に青い光とともにふわりと姿を消した。


(セイア、ほんとにワープに迷いがなくなったなぁ……)


 ぼんやりとセイアが消えた辺りの空間を見つめていると、ふいに横から「あーっ、いいなぁー‼」と叫ぶようなティファの大声が飛んできて、慌ててそちらを向いた。


「え、いいなって、何が?」

「セイアに決まってんじゃん!顔が良くて頭も良くておまけに性格もいいとか、アリアが羨ましすぎる。なんであたしはああいう男に当たらないのー」


 ぼやくようにつらつらと並べるティファに対し、レイアは苦笑いを浮かべている。


「でも、ティファはそもそも、セイアみたいな優等生はタイプじゃないでしょ」

「……まぁ、確かにあたしはちょっと悪そうなのが好きだけどさ。でもそれじゃいつまでたっても幸せは遠いんじゃないかなって、最近思うのよねー」


 セイアの置いていった数学の問題そっちのけで、恋バナに花を咲かせる女子たち。


「でもさーティファ。あたしが言うことじゃないけど、ゼビアはやめた方がいいと思うよ。あれは男としてとかいうより、人としてどうかと思う」

「うん、俺もそう思う。ティファはブスじゃないしさ、あんなこと言うヤツをいつまでも引きずってるのはもったいないって。もっといいヤツがいるから」


 レイアの言葉にアリアが強く頷くと、ティファはいたずらっぽい微笑を浮かべてアリアの方を見た。


「そうね。じゃあアリア、あたしに譲ってくれる?もっといいヤツ」

「え……」


 その言葉に、アリアは思わずごくりと息を呑んだ。

 ティファはかわいい。今日の彼女は化粧も薄くて、何ならちょっと清純派にすら見える。そばかすもチャーミングだ。思ったより性格も悪くないし、意外とセイアとは波長が合うかもしれない。だけど。


「……誰が譲るかよ。俺の、大事な彼氏だぞ」


 軽くティファを睨みながら、はっきりと言い切った。数日前の熱がぶり返したように、頬が熱い。でも、口に出すことで、少しだけ自信を持つことができた。


 かわいくなくたっていい。隣りにいることをセイアが望んで、アリアも望んだのだから。


 ティファとレイアは、「あら」と言うように丸く目を見開いてアリアを見つめた。かと思うと、急に何やら意味ありげなニヤニヤ笑いを始めた。


「え、なになに?ちょっと、聞こえなかったなぁ」

「うんうん、最近なんか、耳が遠いのよねー。もう一回言ってみて?」


 わざとらしく年寄りじみたことを言う。こうやって見ると、この二人は妙に似ている。そして、二人ともアリアの背後の方に視線がいっているように見えるのは、なぜなのだろう。


 不審に思って振り向くと、そこには分厚い辞書を抱えて、困ったような顔をしたセイアが立っていた。


「えっ、いつ戻ったんだよ⁉」

「いや、たった今だよ。ちょっと驚かそうと思ってさ、階段下辺りにワープして、こっそり背後から近付いてみたんだけど」

「妙ないたずら心を起こすな!ワープはそんなことのために使うもんじゃない!」


 焦って文句を言いつつも、アリアはまともにセイアの顔が見られなかった。どう考えても、さっきの発言は聞かれてしまっているだろう。


 どきどきする心臓を押さえて固まっているアリアには頓着せず、セイアは当たり前のように彼女の隣に座った。そして先ほど自分が残していった問題用紙を覗き込み、声を上げた。


「こら、全然解いてないじゃん、二人とも。やる気ある?また追試になるよ?」

「あ、あるってば!今やろうとしてたところよ!」


 ティファとレイアは慌てて問題に取り掛かった。変わり身が早い。そして、彼女らが数学に集中するのを見計らって、セイアはアリアにだけ聞こえるような小さな声で耳打ちをしてきた。


「さっきの、あとでもう一回聞かせて」


 思わず横顔を見ると、セイアはこちらには顔を向けないまま、言葉を続けた。


「その……俺もよく、聞こえなかったからさ」

 耳が赤い。自分も同じような顔をしているのだろうか。


「いいよ。あとでね」

 小さな声でそう答える自分は、もしかしたらほんの少しだけ、かわいいかもしれない。アリアは胸の内でこっそりと、そんなことを思った。


     * * *


 その二日後。

 追試を受けた二人組は「結果発表」と称して、意気揚々と『アルテミス』を訪れた。二人とも、数学の先生のカツラが吹っ飛ぶほどの高得点をたたき出したらしい(ティファ談)。


 よかったね!


                  end



第3話、これにて終わりです!

長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。

次のお話、いよいよ物語の舞台は中央国へと移ります。お楽しみに!

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