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勇者の手紙  作者: NoKKcca
第六章
65/71

63.凱旋

 ――――アルミス帝国、帝都、帝城大会議室。


 ここには今回の世界の危機に集まった各国の首脳陣が集まっていた。

 今回の大侵攻は同時多発的に各地で起きており、どこかが抜かれれば人類の支配地域は蹂躙(じゅうりん)されてしまう。そのため、効率的な兵力の融通や兵站の分配などをするため、世界最大の国家である帝国に各国の首脳陣が集まったのである。


 そこにバタバタと大きな足音が聞こえてきたと思ったところ。


 バン――――


 一人の兵士が慌てた様子を隠さず飛び込んできた。そして息を整える時間も惜しいのかそのまま叫ぶように言った。


「お伝えします! 勇者一行は魔王城に突入! 魔王を討ち取りました!」

「「「おおぉー!」」」


 会議室から地響きのような歓声が上がった。

 そこから各国首脳陣は一斉に慌ただしく動き始めた。母国に伝令を送ると共に情報収集に努める。魔王の脅威がなくなった今、残る脅威は各地に押し寄せている大軍である。もしこれらが撤退したのならば、この度の危機は完全に去ったと言える。

 会議室に集まっていたフェルティラ王国の女王エレオノーラも、一度王国の関係者と話し合うという素振りで、会議室を後にし各国に割り当てられた控え室に下がって行った。

 控え室の扉を開け、中に誰もいないことを確認すると、エレオノーラはそのまま扉に背を預けそのまましゃがみ込んだ。目からは止めどなく涙が流れている。


「ルカさん……皆さん……本当に良かった」


 エレオノーラとしては、今回の魔王討伐についてはいきなり上がってきた案で拙速なため反対の立場であった。表面上はこのタイミングで勇者まで失ってしまうのは致命的だと。しかし、各地で大侵攻が発生している中、根源である魔王を倒さなければという各国の声が強く押し切られてしまった。

 数百年に及び君臨する魔王。過去何度も勇者を退けている。そんな魔王に挑ませることに対し、彼女はとても心苦しく思っていたのであった。

「ぐすっ……泣いてばかりはいられません。ルカさんのご家族に無事を知らせなければ」


 ハンカチで目元を拭うとエレオノーラは立ち上がった。そこには女王として内面を見せない強い彼女が戻っていた。


    ●○●○●


 全国各地の情報を統合したところ、各地を襲っていた魔物と魔獣の軍勢は、突如統率を失いバラバラになり、順次連合軍によって駆逐されていったとのことであった。

 これにより今回の大侵攻は人類側の勝利が宣言され、併せて勇者が魔王を討伐することに成功した報も各地に伝えられた。特に帝国国内は長きに渡り魔族の脅威に晒されていたため、全国各地で祝賀ムード一色だ。

 勇者パーティーと軍が帝都へと凱旋する途中の街では、街総出で出迎えられた。

 しかし、ルカの表情は熱烈な歓迎に喜びを見せているものの、少し浮かなかった。


「ルカ、あなたもっと喜びなさいよ」


 横からアイシャが肩をポンと叩く。


「魔王が王じゃなかったって知るとね……まだ魔人はいるし……終わったって喜んで良いものか……」


 ルカが再び難しい顔になる。


「今は喜んどきなさい! 魔王を倒して魔物の脅威はぐっと減ったんだから」

「そーですよ。これだけ大歓迎されてるんですからー」

「そうそう! 襲ってきたら倒しちまえばいいんだから!」


 レミッサとバルドは誰かから差し入れされたのか、ワインの入ったコップを持ち既に良い気分になっているようだ。


「そうだね。今は勝利を喜ぼう!」


 ルカはバルドに渡されたコップをぶつけ合い笑った。


    ●○●○●


 ――――魔王討伐から三週間後。


 ようやく一団は帝都まで戻ってきた。

 帝都の門を潜ると――――


「「「わぁー!」」」

「勇者様、ばんざーい!」


 通りには人、人、人で埋め尽くされ、建物の二階にも人がびっちりで花吹雪を撒いている人もいる。

 そんな大歓声と花吹雪のなか、勇者一行は進む。


「本当に勇者になったみたいだ……」


 考え深そうにルカが周りを見渡しながらつぶやく。

 ルカが砦村を荷馬車に揺られ旅立ってから四年の月日が流れてた。

 始めは騎士でも軍人でもない田舎人であったルカに対し、期待している人はほとんどいなかっただろう。

 レミッサ、アイシャ、バルドと旅をするようになっても、しばしば体格の良いバルドが勇者に間違われることもあった。

 だが今は違う、誰もがルカたちを称え、来るべき平和な世の中を祝い皆笑顔だ。


    ●○●○●


 一団は帝都の中心にある帝城の広場にやってきた。

 広場には皇帝グラヴィスを始め女王エレオノーラ、教皇ホリスなど世界の首脳陣が集まって一団を迎えた。

 勇者一行は前に進み出ると、代表してルカが前に出て告げた。


「勇者として魔王討伐に成功致しました」


 代表してグラヴィスが応える。


「大義であった。ここにいる各国首脳を代表してお礼を申し上げる。ありがとう! ここにこの度の大侵攻、我々人類の勝利であることを宣言する!」

「「「わぁー」」」


 集まった観衆から割れんばかりの歓声が上がった。

 そんな中ルカは、一人浮かない顔をしているエレオノーラを見て何か胸騒ぎを覚えるのであった。

次回更新は7/9予定です。

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