20.
本編20話です。前回の続きです。
「災難だったね。しばらく休むといいさ」
湯気の上がる丼をお盆から下ろし、葵さんはドアを閉めて言った。
なんで私の家にいるの!?
「大事な後輩が倒れたんだ。一人にしておくわけには行かないだろう?」
「いや、ヒトの家!!母さんは!?」
「優しいお母さんだよね。娘をよろしくって、さっき出かけて行ったよ」
勘違いされてそう…。
私は彼女の装いを見ながら遠い目になるしかなかった。彼女は今(いったいどこから入手したのか?)うちの高校の男性用の制服を着ている。落ち着いているし、優しい男の先輩にでも見えたのだろう。毎回思うけど、あの大きなスイカがどうやったらぺったんこになるんだろうか。さらしで潰しているにしては平たすぎやしないか。
あ、うどん美味しい。
「高熱が出たって聞いたよ。しっかり休んでね」
「母さんといつの間に仲良くなったんですか?」
「私も新人の頃はよく熱を出してたっけ。懐かしいなあ」
「スルーしないでください」
暴走したツバキとの戦闘の後、つい力が抜けて気絶した私は、葵さんに自宅まで運ばれた。
ぐったりしている私をどう説明したのかはわからないが、目が覚めるころには、葵さんはすっかり両親と打ち解けており、お母さんなんて、彼女をアオちゃんと呼んで可愛がっている。人たらしなところがあるので別に不思議ではないが、その流れで私もそう呼ぶ羽目になったのは納得がいかない。
熱を出した私は、それはもう重傷だった。
熱は最高40度まで上がり、歩くどころか起き上がることもできず。あんなに長時間変身していることもなければ、死にそうになることもなかったんだ。熱が出るくらいあるだろうと予想していたが、まさかここまでとは。
「あ、そうだ。熱が下がるまで、魔法少女活動は禁止!」
「流石に行きませんよ・・・」
「本当かな?まりちゃん無茶しがちだからなあ」
「しませんって」
「と、いうわけで、助っ人を呼ぶことにしたよ!さあ、入りたまえ」
部屋のドアを控えめに叩く音が三回。いつの間に家に上げたんだ。人の家だぞ。
ベレー帽をかぶった小柄な男の子が、控えめに空いた扉から顔をのぞかせた。なんだか見覚えのある顔だ。
「紹介しよう。この子は幸田春樹。私はハルと呼んでいる」
「…どうも」
「あ、こちらこそ」
ベレー帽をとり、部屋の隅に座った少年。小さなポシェットには、赤く輝くシルバーリングが括りつけられている。
…ん?
「お、思っていたより早く気付いたね」
「改めまして。僕は幸田春樹。またの名を、赤き魔法少女ツバキという」
この後、私は驚愕のあまり大声で絶叫し、三日ほど喉が枯れる羽目になったのであった。
更新が3日も遅れてしまいました。
言い訳をすると、直前まで展開を迷って、結局期限を過ぎてしまいました。今後このようなことがないよう精進してまいります。
さて、次回の更新は7月です。1か月後またお会いしましょう。




