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19.

本編19話です。前回の続きです。

このまま考えても意味なんかない!実力行使で黙らせた方がきっと早い。


全力で踏み込んで高く跳ぶ。上まで隙間なく吹雪いていた礫が、彼女を守るように一斉に切先が向く。よく見ると礫は水晶のように透き通っていて、朝日を反射してギラギラと光っていた。その鋭利な切先の輝きが心臓に悪い。でも、さっきの戦いを見てわかった。速さ事態は問題じゃない。問題は数。複数個が一斉に向かってくるが、方向は大体一緒。流れを上手く見切って走るだけ。大丈夫。私は速いんだから!


前言撤回!数が多すぎる!

回避すると他の礫が補助に入って、どうしても近づけない。

数を減らすにしても、蹴る姿勢に入る間に距離を詰められて詰む。葵さんはまだ!?


「葵さん!!」

「っあ、ご、ごめん。すぐ行くよ!」


降りかかる礫が、人一人掴めるほど大きくなったグローブの壁に遮られる。

彼女の弾幕は隙間がなく、私のスピードでは越えられない。その点、隙間を強引に作ってしまえばいい。現に、葵さんは礫を砕いた。無理にでも道を作ることができるはずだ。


「せえい!」


葵さんの拳は礫を確かに破壊したが、破壊で広がった空間はすぐに塞がってしまった。彼女もそれに気づいているので拳を振るスピードを徐々に上げてはいるが、追いつきそうにない。この一瞬の隙間に潜り込む必要がある。

助走をつけて飛ぼうとしてみるも、他の礫に妨害されて上手くいかない。もう少し速度が上がるのを待った方がいいのかもしれない。


取り乱していた様子の葵さんも次第に落ち着いてきたようだ。必死に声を上げているが、ツバキには聞こえていない様子。私も、と声を上げてみる。


「ツバキちゃん!」

「ツバキ!」

「葵さん、心当たりとかないんですか!?」

「全然ないけど!?あのくらいの軽口、日常茶飯事だったと思うけどなあ!?」

「女の子には優しくしないと、いけないんですよ!」

「私も女の子なんだけど!?」


状況の変わらない苛立ちをそのまま葵さんにぶつけてしまう。止まらない吹雪、話の通じない推定先輩魔法少女、実質徹夜明けの頭。この調子だと、学校にはとても間に合わないだろう。こんなときでも学校のことを考えてしまう私はもはやおかしいのかもしれない。


「…だって」


騒音の中から、か細い声が聞こえた気がした。葵さんも聞こえたのか、拳はおろか体ごとぴたりと止まっている。

嵐はいつの間にか止み、中心にいたツバキは幽霊のような生気の薄い顔でそこに立っていた。泣き腫らした頬、虚ろな瞳。


「ぼくだって、」


そう言って、彼女はふらりと揺れた。葵さんが咄嗟に駆けだして、彼女の体が地面に激突する前に受け止めた。私も駆け寄って安否を確かめたいが、張りつめていた精神がゆるんだとたん、足に力が入らなくなってしまった。朝日を背景に抱き合う二人をぼうっと見つめる。そういえば今日祝日だったなとか、講習があるんだったとか、余計なことを考えていくうち、昨晩の衝撃が遅れてやってきて、そのまま気絶してしまった。






おねえちゃん!

まって、おねえちゃん!


いつかの夢のように、走って、走って、走る。

違うのは、姉の後姿が見えること。ゆっくり歩く姉に追いつこうと、子供の姿の私は必死に走って追いつこうとする。


不意に、姉が止まった。私は嬉しくて姉を呼ぶ。

振り返った姉はいつの間にか魔法少女の姿をしていて、箒の先をこちらに向けて微笑んでいた。

5月になりましたね。


次回は6月の投稿となります。それではさようなら。

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