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18.

本編18話です。前回の続きです。

あの後。

気を失った彼女を引きずるようにして運びながら、ただひたすらあの公園から離れることだけを考えて必死に足を動かした。息が切れて心臓が痛いくらい脈打っていても、喉が張り付いたように乾いて呼吸がしずらくなっても。動揺が暴れ出しそうで、とにかく「何か」していないと頭がおかしくなりそうだった。


肩に回った腕がぴくりと動いて、はっとして動きを止めた。そうだ、彼女は怪我をしている。長い間気を失うような怪我なら、知らずのうちに大事になっている可能性もある。一度病院で見てもらった方がいいだろう。運よく今日は平日で、時間は早いけど空いているところがあるかもしれない。


病院についた時の言い訳もそうだけど、ふと、変身中の怪我は変身後も残るのか気になった。物語の中ではどんなに攻撃を受けても次の日にはピンピンしているけれど、現実にそんなことありえるのだろうか?

この間の切り傷はすぐに治った。瞬きの間に血が止まり、薄い跡だけが残った。赤い魔法少女の彼女も、擦り傷の見る影もない。

変身したときは体が強くなるんだと葵さんは言っていたけど、それにしたって異常だ。お姉ちゃんが攻撃してきた理由は分からないけれど、敵だろうが味方だろうがこんな得体のしれない組織から一刻も早く縁を切ってほしいと思う。

とにかく、まずはツバキちゃんをどうにかしないとね。


そこまで考えて、彼女の顔を覗こうとしたとき。

腕を強く引っ張られた。突然のことで踏ん張れず、膝から崩れ落ちるようにして倒れた。あの子の方には倒れなかったから、巻き込んではいないと思う。でもさっきまで気を失っていたのに。

倒れてはいない、立っているようだった。足はしっかりと地面を踏みしめて、特にふらついている様子はない。項垂れているせいか、長い髪が顔を隠していて表情はうかがえない。


「ツバキちゃん?」

「いやだ、」


彼女の杖に飾られた宝石が、キラリと光った。

私の体はあっという間に宙に飛ばされていて、視界の端にコンクリートの壁が見えた。咄嗟に体をひねって着地できていなければ、今頃壁と激突して気を失っていただろう。冷や汗をかきながら文句を言ってやろうと顔を上げて、彼女の様子がおかしいことに気づいた。


「来るな!!」


彼女は髪を振り乱して、私の手を拒絶した。そしてあろうことか、杖をこちらに向けて振り回し始めたのだ。まるで全てを拒絶するかのような、激しい礫の嵐。吹雪のような防ぎようのない密度の攻撃に、成すすべなく地面に拘束されてしまう。


「ちが、違う、こんなことがしたいわけじゃ、」

「まりちゃん!!」


地面に大きな衝撃が走る。地震を疑うような縦の振動が、地面に固定している礫を粉々に砕いた。


「あおいさん?」

「嫌な予感がして来てみれば。なんだい、喧嘩かな?」


連絡がこなくて心配したんだよと、呑気に笑っている葵さん。正直助かったと言えば助かったけど、対照的にツバキの表情が険しくなっているのを見て嫌な予感がしてきた。ツバキの地雷がわからない以上、あまり刺激しない方が…。

危惧していることは、大体起こってしまうもので。


「ツバキ、後輩いびりはほどほどにしないと~」


茶化すように言ったそれがちょうど彼女の逆鱗に触れるものだったようで、収まりかけていた吹雪が悪化し、今にも爆発しそうだった彼女の情緒も決壊したように見えた。葵さんからすれば地獄のような雰囲気を和らげるジョークだったのだろうが、その一言も許容できないくらい、彼女には余裕がないようだった。

そんなつもりのなかった葵さんは、驚いて固まっているけど。


「危ないですって!」

「え、え?ま、まて、ツバキちゃん?ごめん、なんかやっちゃっ」

「あなたは!あなただけは、ちがうと思っていたのに!」


激しい吹雪の中、甲高い声はかろうじて聞こえない。ただ、ツバキが嘆いていることだけは分かった。四方八方から吹き荒れる礫からなんとか頭を庇いながら、彼女を落ち着かせる方法をひねり出そうとする。でも、なにが彼女をそうさせているのか、そもそもの拒絶の理由は何なのかも分からないのに。

葵さんも動揺しているようだ。二人は親しい間柄のようだし、こうなるとは夢にも思わなかったのだろう。


「ツバキちゃん!ちょっと、聞いてんの!?」

「ちょ、まりちゃん」

「葵さんは黙ってて!さっき怪我したんだから大人しくしなよ!いきなり暴れ出してさあ!意味わかんないんだけどなに!?」

「…」

「っそのまま黙ってるつもりなら、こっちだって考えがあるんだから!」

4月になりましたね。なんか最近戦いすぎでは?


次回は5月の投稿となります。それではさようなら。

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