俺、ちょっと泣く
たった二人の討伐隊。
ちょっと見は極めてショボいが、実のところ、こいつらが本気で俺を討つ気であれば、対・俺仕様としてに限っての話、最強である。
何しろ、俺の唯一親しい友人と、ちょっと気になる女の子(……子、ではないな……)の二人組なのだ。
ここに総菜屋のおばちゃんが加われば、もう完璧。
こいつらに苔脅しは通用しないし、そもそも俺には、多分、こいつらにかすり傷ひとつ負わせることはできまい。
討伐かあ……。
逃げちゃうのがベストかな。
今の俺なら、どこかの街に流れ着き、目立たず、普通に、働きながら暮らして行く事も容易いだろう。
結局、俺のコミュ障なんて、守ってくれる環境が有る事に甘えた末の、単なる、 場数不足に過ぎなかった訳だ。
でも、俺はここに居たい。
ここで野菜を作り、街をぶらぶらして、ジローマルの家に遊びに行って、普通に暮らし続けたい。
魔王だっていうだけで、そんな当たり前の暮らしさえ許されないなんて、そりゃ魔王だってグレるに決まってる。
しかも俺、魔王ですらないんだよ?
これは、イジメだ。
反撃されたイジメっ子らが逆切れし、お母さん(領主)に言い付けて俺が悪者にされ、校長(聖女様)と担任(勇者)が家庭訪問にやって来る図だ。
これで我が家に毒親が居れば最悪の結果と相成る訳だが、うちには俺しか居ないので、そう考えればマシかもしれない。
そういえば、転校生連中って、たいしたスキルもないくせに妙に飄々として、しかも周囲に巻かれない強さがあった。
あいつらって、今で言う、旅の冒険者みたいなモンだったんだなあ。
そもそも俺だって、もっと早く自覚して街に下りていれば、今頃は、魔王自身ではなく、ジローマル達の討伐隊に魔法使いとして加わって、冒険の旅が出来たのかもしれない。
時、すでに遅し。
お惣菜に、俺が作った唐辛子がよく効いている事に気付いて、ちょっとだけ泣いた。
辛すぎた訳じゃない。
おばちゃんが、快く俺の野菜を試し、美味しい総菜を貰って帰るこの素朴な楽しみも、俺の正体が知れてしまえばおしまいだ。
俺は、魔王なんかじゃないのに。
だが、魔王と呼ばれる存在となってしまった原因は俺に有る。
逃げたくなければ、立ち向かうしかない。
幸い、二人のうち一人は親友で、もう一人は顔見知りだ。
だからこそ、彼らのメンツを潰す訳にはいかないのだが、話し合う余地は残されていた。




