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マストカ・タルクス⑪『サリバン族』と『神聖試合』の話

 エリアステールってどんな国かというと、『テール人』の国だ。

『テール人』ってどんな民族かって? 『テール語』を話し、『テール神話』の神々を信じている……そのまんまだし別に説明しなくてもいいだろ?



 木の板で作られた壁に、大きな葉っぱで覆われた屋根。

 鬼族の家は全てそんな感じだ。滅茶苦茶燃えそうだけど、鬼自身が炎に耐性があるので問題ないらしい。

 サリバンの国王(族長)の家も他の家と変わらないけど、大きさが倍近くあるのと、壁や屋根に金や銀の飾りが山ほどついているという違いがあった。

「相変わらず鬼族の趣味は理解出来ませんわ」

 シュナがぼやいた。正直俺も同じ意見だ。

「入れ」

 鬼の貴族が顎で合図したので、父上を先頭に俺達が中に入った。

 入り口には扉がなく、代わりにカーテンみたいな布が掛かっていた。めくって中に入ると、異様に明るい空間に俺は口があんぐり開いた。

 中は壁も天井も床も、それどころか置かれてある家具も全て純金製なのである。

 その部屋の一番奥、黄金の椅子に座っている唯一黄金でない物体、サリバン族の族長が言った。

「GURRR↑OOU↓UA」

 横に立っていた貴族風の鬼が言った。

「国王陛下は『よくぞ来た人間。歓迎するぞ』と申されている」

 どうやら王様はアラトア語が喋れないらしい。横の貴族は通訳か。

「歓迎して頂けて嬉しいです。では単刀直入に行きましょう……」

 父上がスラリと剣を抜いた。通訳も反応して斧を構える。

「……私の息子と奴隷の少女を引き渡せという要求を撤回して頂きたい」

 横を見るとアルヘイムも抜刀していた。国王は余裕の笑みで顎を撫でながら何か言った。

「国王陛下は『ならば死んだ我々の仲間はどうなるのだ? 我々の怒りはどこへ向ければいいのだ?』と申されている」

「アラトアでは貴族は皇帝、貴族、神官以外は斬っても罪に問われません」

 父上が胸を張って言った。改めて聞くと滅茶苦茶だけど、マジで事実だからしょうがない。

 国王がゲラゲラ笑ったあと、ものすごい怖い顔で立ち上がった。

「国王陛下は『ならば教えてやろう、この村でも人間を殺そうが食おうが罪には問われない』と申されている」

 国王が手を挙げた。すると黄金の壁にさざ波のようなものが走り、いきなり数十匹の弓矢を構えた鬼達が出現した。

「『透明化の呪文』ですわ。ずっと隠れて狙ってたようですね」とシュナ。

「ふん、図体がデカいわりに小心者だな……魔女よ、行けるか?」と父上。

「ふふ、鬼相手は久々ですわ……」

「GU↓OO↓OORURR↑UAA!」

 国王が上げていた手を降ろした。

「『風よ逆巻け! 巣へと帰れ!』」

 シュナの『矢返しの呪文』が完成し、全方位から来た矢が跳ね返って鬼の弓使い達の頭に刺さった。

 一瞬で絶命する弓兵鬼達。

「GURRRRRUUOOOO!」

 通訳鬼が斧を構えてシュナに飛び掛かる。俺が素早く身体を割り込ませて鬼の指を狙った。

 だが鬼は丸太のような蹴りを放ってきた。

「グッ!?」

 寸前の所で身体を捻って避けたが、かすった脇腹に激痛が走った。

 かすっただけで痛ぇ! しかも奴隷市場にいた鬼とは比べ物にならないくらい強い!

 それでも俺が体勢を崩さず『星空の剣』を向けると、通訳鬼は距離をとって言った。

「……国王陛下は『神聖試合』での決着を望んでおられる。構わんか?」

 神聖試合? なんぞ?

 父上が剣を納め、俺達にも鞘にしまうように合図して言った。

「承知いたした。お受けいたしましょう」


 鬼族には変わった風習があるらしい。それが『神聖試合』だ。

 シュナが説明してくれた。

「古来から鬼の部族同士が戦争を避けるために行っていたものだそうです。各部族の中で最強の『戦士』と『魔法使い』を1人ずつ選び、2対2で戦わせて全滅した方が負けという、まあゲームですね」

「結局戦うんじゃないか……」と俺。

「死体は2匹分で済むので戦争するよりずっと平和ですわ」

 どうなってんだ鬼族って……引くわ~。


 早速鬼達が村の中心部にある広場(ていうか空き地?)の土に木の棒で円を描いた。

 その円に沿うように木の棒を立てて、縄を張って急ごしらえのリングが作られた。

 子供がつくった相撲の土俵みたいだ……。鬼の国王がリングの中央に水を撒いてなんか叫んでいる。たぶん儀式なのだろう。


「若殿、試合を始める前に、言っておきたいことがあります」

 シュナが俺と向かい合って告げる。今まで見たことないほど彼女の顔は真剣だった。

 いつも何があってもニコニコしてるのに……俺はなんだか緊張してきた。

「『神聖試合』で戦うのは私と若殿ですわ」

「え、お、俺なの? アルヘイムとかじゃ……」

「今回の件は若殿が起こしたのですから、鬼達は若殿が出場しなければ納得しませんわ。ですがフェリは魔法を使えませんし、そもそも魔術師は私だけなので私が相棒を務めます」

「そ、そっか……」

「いいですか? これは初めての『魔術戦』ですわ」

『魔術戦』、それは魔術師同士の戦いのことだ。戦士同士のバトルと魔術師同士のそれは全然違う。

 シュナは今日まで毎日俺に『魔術戦』の話をしてくれていた。『魔術戦』は魔術師のみの時と、戦士がいる場合とでまた戦術が変わるらしいのだ。

「戦士がいる場合の『魔術戦』で最も重要な事はなんだと思います?」

 シュナの質問に俺は考える。

 分からん。

「分からないから教え……」

 教えてもらおうと思ったが、やっぱりやめて再度考える。

「……2人の連携チームプレイが重要的な?」

「その通りですわ♪ 私が若殿の行動を予測して動き、若殿も私の行動を予測するのです。勿論敵の行動も予測しなければなりません。まるで『イックス』のように……」

『イックス』とはアラトア人が大好きな、チェスみたいなボードゲームだ。クノム人がアラトアに持ち込んだ物らしい。

「……敵の動きを予測し、追い込み、最後にその首をとるのですわ。では作戦を立てましょう、私が『結界の呪文』で動く壁になりますので若殿がその後ろから……」

 俺は前に出ようとするシュナの肩に手を置いて、俺の背中に押しやった。

「俺が先陣を切って突っ込む、シュナは後ろから援護を。魔法を使うためには呪文が必要なんだろ? 俺がその隙を作るよ」

「わ、若殿? 私には使い魔も居ます。それに相手は鬼族の戦士ですわ、奴隷市場で倒した鬼と今から戦うのは全然違うんで……」

 俺がウィンクして見せた。

「今日は晴れ舞台なんだ。俺にちょっとはカッコイイことさせてくれよ」


 ……やべぇ、恥ずかしい。

 俺はみるみる顔が熱くなるのを意識してシュナから顔を背けて、

「お、おかしいなら好きなだけ笑えばいいさ……」

 予想外だった。シュナが肩に置いていた俺の手に頬をくっつけて言った。

「……いいえ、笑いませんわ。それじゃあ若殿に頼らせてもらいますね?」

「お、おう……任された」

 そこで試合の前準備が終わったらしい。

 かくして神聖試合が始まった。


服装のイメージは、一枚布を体に巻き付ける古代ギリシャローマ人的な奴です。靴も古代ローマっぽい奴。山の中はかなり歩きにくいと思いますw 魔術師は身体をすっぽり黒いフードで覆っていてる感じで、杖は持ってないです。靴は同じ感じ。髪型は割と個性があって固定的ではないです。鬼族の服装もかなり人間に近いイメージで(丈は全然違いますが)、半裸ではないです(服重ね着しているほど身分が高いという文化)。

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