Ⅲ 七峰らいがと語られざる物語
「傾注! バーチャル美少女革命軍パイロット、英雄tuberの夕霧オウカです。今日もソレイユ隊のみんなと仲良くなるために生配信していくわよっ」
画面の向こうで手を振って挨拶をする蒼い髪の少女におれは無言で「こん」と送信。
「あっ、らいが隊員~。こんにちは。えーと、Retron隊員、はい。聞こえてま~す。うふふ。M.O.隊員……」
そのまま、参加者の名前を読み上げるオウカを見て小男がほくそ笑む。
「やはり最高だな、うちのオウカは」
「いや俺のだから」
そう反射的に主張するが本心では認めるしかない、とおれは思う。
小男の名前はM.O.隊員ことマサキ・オカムラ。ほぼ独力でバーチャル英雄tuber夕霧オウカの3DモデルとAIを完成させた天才的頭脳の持ち主だ。
「だが名乗りを上げたのはわたしの方が早かったな」
「オマエのその手は反則だ。コイツは短い単語で強引に捻じ込んだが」おれを指しながらオカムラが毒づく。「相変わらず卑怯な男だ」
「いや、オカムラさん。あんたには負けるよ?」
「ふふ」
Retron隊員ことレトロン宇宙人は笑ったのか、その発光器官を小刻みにチカチカと点滅させた。二つの筒をそれぞれ縦に引き裂いたような触腕は休まずスマホを叩きつづけている。
「だいたい読み上げたかな? よし!」オウカは少しばかり間を置いて周りの様子をうかがうと、画面の向こうからこちらを指さして命令するように言った。「ソレイユ隊、全機出撃!」
「了解」と送る。無言で。
天才科学者、宇宙人、そして魔法少女。
この三人で卓を囲んでやることはVtuberの生配信のウォッチング。
……シュールだ。




