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アートバンビーノ  作者: 凩夏明野
第三章-疑心-
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火火電電

……。

御剣が消えた、と思う。

さっきまで隣にいたが、いなくなってしまった。

という事は消えたんだと思う。


[カピターノ、御剣が消えた。……カピターノ?]


耳に付けている通信機に手を当ててみる。

……充電式の通信機から、電気が通っている様子が感じられない。

壊れたと考えるべき……だと思う。

つまり、俺は今カピターノと連絡が取れない。


「……カピターノの下に向かわなければ。」


「かっかっかー。残念ながら、いや喜ばしながらお前は愛しいカピ……カピターノ?の所にゃ行けねえよ。」


コンコンと、開いたままだったドアをノックした誰かが声を発した。


「……。」


「情報通り無口な野郎みてえだな。ま、何でもいいさ。俺は言われた通り俺の力でてめえを殺してやるだけだからよ。つーわけでよ、いきなりだが『火砲(かほう)』。」


「……。」


これは不味い。

名無しがこちらに向け突き出した右手。

掌に大量のエネルギーが凝集している……多分。


「確か相手のアートは発動してようがしてなかろうがどうでも良かったな。じゃあそういう訳でさようなら。」


「さようなら、という訳には―――」


耳を劈く爆発音。

一瞬で壁に半径3m程の穴を空け、尚且つ炎を以てして焼き払う。

……成る程、やはりかなり危険なアートの様だ。


「かっかっか。一瞬で焼き払い完了っと。最後に何か言おうとしてたけど残念―――」


「さようならという訳にはいかない。俺はカピターノの下に行く。」


「おおっと。避けられてたか。流石第一小隊隊長の右腕だ。どうやって俺の視界の外まで行ったんだ?」


「……。」


『閃光神電』はそう何度も使えない。

なら防御に回るより……。


「まーただんまりかよ。全くよ、そういうのはダメだと思うぜ俺。そりゃ手の内晒したくねえってのは分かる。」


「……『閃光神電』。」


「分かるけどって消えた!」


先ず名無しの背後に『閃光神電』を使って回り込む。

後は簡単だが、やはりあまりやりたくない。


「『雷撃(らいげき)掌破(しょうは)』。」


「ぐお!?いたたたたたた!痛い!痛い痛い痛い!?」


掌に電気を集中させ、それを相手に掌底を介して叩き込む。

それが『電撃掌破』。

あまり使いたくはない。

何故なら、手が痛いからだ。

自分を苦しめるしか脳がない力、アートか。


「痛えって言ってんだろうが!」


「!」


「だああああ!またワープしやがった!」


「……ワープ何て出来る訳がない。」


熱を纏った張り手か。

危ない所……だったと思う。

張り手の軌跡には未だに熱が残り陽炎が見える。

つまりそれだけ高濃度の熱を帯びていた、んだと思う。


「く……まだ体が痺れやがる……。流石はバンビーノ切っての攻撃力だ。」


「……。」


あまり効いた様には見えない。


「やっぱ、火加減してどうにかなる相手じゃねえな。」


ゆらりと、さっき見た陽炎が名無しの周りに蠢き始めた。


「俺達のアートは似てるよなサエッタ・ディチェンブレ。使えば使う程てめえを傷付ける。どう思うよ、この力。」


「……身を呈して、犠牲にして、それでも守りたいものがある。ならば、俺はそれを否定しない。」


「は、良い答えじゃねえか。嫌いじゃないぜ。」


陽炎を纏っていた名無しが、それの代わりに炎を纏い始めた。

目に見える程の火を全身に纏う。

それは自らの力であっても体を焼くには十分過ぎる。


「正に決死という訳か。嫌いではない……と思う。」


「どうも。最後になるかもしれねえし教えといてやる。俺の名前は火砲(かほう)煉悟(れんご)だ。『火火(かか)煉獄』。」


「っ!」


何が起きたのかはよく分からない。

熱波、熱風、火、炎、とにかく人間がそれに当たって生き延びられない程の力が放たれたことだけは分かった。

……右腕をかすっただけでこれなのだからな。


「ぐ……。避けられるとは思わなかった……。」


「……。」


右腕は、少なくとも今は動かせない。

かなり重度の火傷の様だ。

……なら良いか。


「これ使うと、手が数日使いもんにならなくなっちまうんだが……それでも仕留められないか。」


「……その程度か。それが限界だと言うなら、良いだろう。本当の決死を教えてやる。『閃光神電』。」


「ぐ、また!」


見切れる訳がない。

電気を肉眼で捉える事は出来ないから。


「決死は、文字通り死を覚悟する事だ。『電雷華(でんらいか)』。」


「ああああああああああああ!!!!!!!」


右腕を犠牲に、最大出力の電気を放つ。

『電雷華』はそういう技だ。

今使い物にならないなら、こういう使い方もあり。


「そして、勝負あり……だ……。」


泡を噴き、白目を剥き、生焼けの臭いを放ちながら死んでいる火砲の横に倒れる。

……足、腕、のみならず全身。

痺れて動かない。

『閃光神電』4回、『雷撃掌破』1回、『電雷華』1回。

大技5回は使いすぎた。


「……カピターノの下に行かねば。」


頭では分かっていても、体はそれについてこない。

仕方ない……少し、休む。

……ジェニトーレにも、妙な考え方の奴は……いる、んだな……。

最後にそんな事が頭に浮かび、俺の意識は―――

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