変わった事 変わらない事
基地の玄関ホールの広場。
そこに着いたコハクは、行きかう兵士達の奥にあるベンチに、フローラの姿を見つけた。
「おはよう、フローラさん」
「あっ・・・コハクさんも、おはようございます」
「センリさん達は、何時頃に到着する予定?」
そう尋ねながら、コハクはフローラの隣へ座った。
「もう直ぐ着くと思いますよ。馬車は予定よりも早く進んでいるそうです」
「そうか、それは良い事だな」
反乱が終わった後、コハクとフローラは軍に反抗した裏切り者の容疑で身柄を拘束され、
そしてそのまま、南の街に強制移住となった。
南の街に移住してから、兵士の少年に危害を加えたのは、あくまでもコハクだけだという事で、フローラはすぐに自由の身となったが。
コハクは、任務に出る時以外は外に出る事は許されていない。
フローラとの話で、センリとアルスフォードがコハクの事を心配しているとは聞いていたが、
どんな顔で二人と会えばい良いだろうかと、コハクは少し緊張を感じていた。
「センリさんとアルスフォード、二人とも元気かな」
「はい。きっと元気ですよ。ほら先週、新聞にセンリさんとアルスフォードさんの記事が載ってましたよ」
「あぁ、僕も見た。2人とも、活躍してるみたいだな」
「そうですね。2人とも、すっかりいつもの調子で良かったです」
そうしてしばらく、コハクとフローラの二人が話をしていると。
4足歩行の使い魔に引かれた馬車が、専用の出入り口から基地の中に入ってくる。
やがて馬車の扉が開くと、中からは10人程が降りてきた。
その中に、センリとアルスフォードの姿が見える。
「あっ、見えました!」
コハクとフローラはベンチから立ち上がり、二人へ向かい手を振った。
気のせいか、センリとアルスフォードの二人は、前よりも貫禄がある様に見える。
「・・・よう、久しぶり」
「お久しぶりです。センリさん、アルスフォードさん」
そして4人は、半年振りに挨拶を交し合った。
フローラは、まるで何年間も会えなかった恋人と再会したかの様に、泣きそうな笑顔を浮かべていた。
「全く。なんて顔をしてるんだ、フローラよ」
笑顔で話すアルスフォードだが、その表情は、以前と比べるとかなり大人びて見える。
「ごめんなさい、ずっとデバイスでしか話が出来なかったので、嬉しくてですね・・・」
「あぁ、我も嬉しいぞ」
アルスフォードが、フローラの頭を優しく撫でた。
「アルスフォードは、なんだか大人っぽくなったな」
コハクがそう言うと、アルスフォードは「なぁに、そんな事はないさ」と返す。
その返事を聞いて、やっぱり雰囲気が変わったなと感じるコハクであったが。
彼女のお腹から、ぐう、と音が鳴り、空腹を知らせる。
「ところでだな、我はお腹が空いて死にそうなんだが」
アルスフォードはきりっとした表情でお腹を擦った。
「・・・食堂に、行こうか」
やはり、変わったと感じたのは、気のせいだったかも知れないと思うコハクであった。




