再会したくない方の再会
基地にある食堂。
その端の席で、コハクは朝食を摂っていた。
基地の食堂で出る食事は、基本どの街も大差はない。
もはや食べ飽きたメニューばかりだが、コハクは特に気にしていなかった。
というよりも、何か食べれれば味はどうでもいいと、コハクは思っている。
そうしてコハクは速やかに食事を済ませ、食堂を後にした。
「あれ? もしかして、コハクじゃない?」
丁度、廊下を出た時である。
コハクは聞いた覚えのある声に呼び止められた。
コハクは脚を止め、小さく舌打ちをする。
あまり思い出したくない声だったからだ。
「やっぱり、コハクだ。久しぶり」
その声の主は、ハルであった。
彼女は、コハクが初めて班を組んで任務に出るきっかけの人物でもあり。
そして、希少種の魔物を追って森の奥深くに入り、メインバイパーに襲われた。その事件のきっかけの人物でもあった。
それ以来コハクは彼女と、会話を交わす事は殆ど無かった。
しかしその時の彼女とに比べると、大分落ち着いた話し方に聞こえる。
「あぁ、ハルか。久しぶりだな」
昔あった事―――
ハルが嘘をついて、コハクに責任を擦り付けようとしてきた事。
忘れかけていたあの時の事を思い出し、同時にコハクはふつふつと怒りが沸いてくるのを感じた。
「僕に、何か用事か?」
だがそれを抑え、コハクもまた落ち着いた声で返事を返す。
「いや別に。任務でしばらくこの基地に世話になるみたいだから、とりあえず挨拶しとうかなと思って」
「あぁ、そういうことか」
ハルの後ろには、恐らく同じ班員なのであろう、数人の男性兵士がいて、話をしている。
彼らの顔立ちを見るに、異界人ではなくヴァーリア人らしい。
「そうだ。見て見て? 今私が着てる服!」
そう言って、ハルは上着をひらひらさせる。
綺麗な白色を基調とした、いかにも高価そうな上着である。
「その服がどしたの?」
「はぁ、見てわかんないの? これ希少種の素材で作られた服なんだけど」
ハルは「昔、誰かさんが倒し損ねたやつな」と、小声でそう付け足した。
どうやら、この自慢と嫌味が彼女なりの挨拶らしい。
この少女は昔と変わらない奴なのだ、そうコハクは察した。
「あぁ、希少種の素材で作られた服か。
いや、全然気付かなかったわ。どこで手に入れたんだ? 盗んだのか? だったらお前らしいな」
コハクは冗談っぽく笑いながら、お返しにとばかりに返事を返す。
「わ た し が、倒したのよ。まぁ、班員みんなのお陰なんだけどね?
やっぱり班を組むなら異界人よりヴァーリア人の方が良いわ」
「なるほど。相変わらず他人を利用するのは得意なんだな」
「あのさ、さっきからなんなの? 嫉妬?」
「そっちこそ。お前はわざわざ嫌味垂れ流しに来たのか?」
数秒程、睨み合う二人。
「下らん嫌味は終わりか? だったら僕はもう行くぞ」
「勝手にして」
そう言い合い、二人は互いに背を向け、その場を後にした。




