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置き土産


 南の街の外れにある、古いレンガ造りの建物。


 その地下には、とある反乱者の利用していた基地がある。


 元魔術師、軍の裏切り者であるカミノが所有していた、隠れ基地の一つだ。


 

 カミノ亡き今、その基地は誰も使用して居ないらしい。


 その内部を、とある兵士の一班が任務として探索していた。



「はぁ、暗くて気色悪い。幽霊出そう」


 少年の兵士が、気怠そうにそう言う。

 

「幽霊とは"魔物の一種"だと証明されている。恐れる必要はない」


「反乱者共は魔物も飼ってたんでしょ? じゃあもしかしたら、魔物はいるかもしれないじゃん?」


「だから俺たちが、危険がないかどうかを調べているんだろう」



 基地の内部は、反乱者達が地下を掘って作ったとは思えない程、複雑に広がっていた。


 班長の男性が先導してドアを開き、その後に3名の兵士が続く。


 ドアの先にある部屋には、様々な物が散乱しており、

魔術の参考書や、壊れた魔術器の部品が積んである木箱等が置いてある。


 生活感は全く無く、少し埃が被っている。 



「あの扉は?」

 

 そしてその部屋の奥には、いかにも強固そうな金属製の扉がある。


 今までの部屋のドアとは違い、なにか特別な造りに見えるだろう。

 


 兵士達は一度目を合わせると、警戒しながら扉に近付いた。


「中に何か反応はあるか?」


「生体や魔力の反応は感じません」


 魔術師の青年が、班長の問に答える。


「では中に入るぞ」


 そして、班長が扉を開ける。

 どうやら、鍵は掛かっていないらしい。


 部屋の中は、本棚に机、魔術研究の書物など、先ほどと変わらない物が並んでいるが、

しかし部屋の奥に、ひときわ目を引くものがある。


「あれは、あの壁は何だ?」


 部屋の奥の壁に、人が3人程は入れそうな、大きな穴が開いているのだ。


 深さはそれ程深くない。



「ちょっと待ってください。僅かですが、魔力の痕跡を感じます」


「何処からだ?」 


 魔術師の青年に、班長が尋ねる。


「あの壁の穴からです」


「・・・よし、俺とお前であの壁を調べるぞ。皆は、部屋の中にある物を調べろ」


 班員に命令を告げるると、班長と青年はゆっくりと壁の穴へ近付いた。


 壁には、空いた穴を囲む様にオレンジ色の文字が浮かんでいる。



「この部屋・・・」


 壁に空いた穴を見た魔術師の青年が、ぽつりと呟く。


「この部屋、他の部屋と比べてかなり厚い壁で作られています。

扉を閉めてしまえば、中から魔力は完全に遮断されてしまうでしょう」


 先程、青年が部屋からは何も感じ取らなかったのは、この厚い壁のせいだろう。

 

「奴ら、なんの為にこんな部屋を造ったんだ? 魔法の実験でもする部屋なんだろうか?」 


「そうでしょうね。しかしこの穴、魔法の試し撃ちか何かで空いた穴かとも思いましたが、

それにしては綺麗過ぎる」



「やはりここは怪しいな。一度、軍にデバイスで連絡を取ってみる」


 班長はマジックデバイスを広げ、国軍の基地と連絡を試みる。

 しかし、連絡は繋がらない。


「クソ。通信が届かないな。地下だからか?」 


「この部屋は魔力を遮断しますから、デバイスは繋がらないのかもしれません」


「しょうがない。部屋の外で試してみる」

 

 班長はデバイスを手に部屋の外へ向かっていく。


 

 魔術師の青年は、そのまま穴の周囲を調べ始めた。


「この壁・・・。まさかこの部屋自体が、魔術器なのか・・・?」


 うっすらと壁に書かれた文字を見ながら、青年が呟く。



「なになに、この壁の穴。何かあるの?」


 興味を持ったのか、少年の兵士は壁の穴にすっぽりと入り込んだ。


「気を付けてください。その穴が何なのか、まだ何も判ってないのですから」


「大丈夫だって。何も変なことは―――」


 そこで少年の声は途切れた。  

 


「ちょっと、どうかしまし・・・た?」


 妙な雰囲気を感じた青年が、穴の方を見ると。


 穴からは、沸かしたお湯の様に白い霧が沸き出していた。


 そして、そこに少年の姿は無い。



「こ、これは一体・・・!? は、班長! ちょっとこっちに来て下さッ・・・!?」


 流石にマズい状況だと感じた青年が、班長を呼ぼうとしたが。


 しかし、その声もまた、少年と同じ様に途中で途切れてしまった。



 壁に空いた穴から、黒くて巨大な"腕"が飛び出し、青年を引きずりこんだからだ。



「・・・おい、どうした?」


 異変に気がついた他の班員が、青年の方を、壁の穴の方へと振り向くが。



 そこに青年の姿は無い。


 変わりに壁の穴からは霧が漏れ出しており、その内側の空間はぐにゃりと歪み、震えている。 


    

「な、なんなんだ・・・!?」


 その歪んだ空間から何かが飛び出し、床に落ちる。


 それは、今さっき姿を消した、魔術士の青年の腕であった。



「ッ・・・!? 隊長ッ!!! 緊急事態です!!!」


 班員が叫ぶと同時に。


 歪み震えている空間が広がり、壁に空いた穴を広げる。


 そして、そこから黒く大きな影が飛び出す。


「ま、魔もッ!?」


 班員の兵士が、剣の柄を握るが。


 その瞬間には、魔物の伸ばす腕の爪が、兵士を引き裂いた。



「おい、何が起・・・ッ!?」


 班長が戻った時には、既にそこに他の班員の姿は無い。



「馬鹿な、魔物・・・ッ!?」


 そこには変わりに、壁に空いた空間から這い出してくる魔物の姿があった。


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