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半年後 02


「フローラさんが荷物運びをしてくれてたなんてな。どうもありがとう」


「気にしないでください。

私にとってコハクさんは・・・弟みたいなものなんですから」


「こんなに弟に優しい姉、現実にはいないだろ」


 コハクが冗談っぽく笑う。


「そうですか? 私はそんなことないと思います」

  

 フローラはコハクの隣に来ると、コハクの頭を優しく撫でる。


 コハクは気恥ずかしいく感じて払いのけようとしたが、

なんだか心地が良いので結局そのまま撫でられる事にした。



 フローラと接しているときは、心を覆っている棘が剥がれ落ちた様に安心するのだ。

 

 その一方でコハクは、一度纏った棘が剥がれる事を恐ろしくも感じた。


 

 反乱の時、コハクは、雪妃やカノールが目の前で殺された怒りで、軍の兵士を負傷させた。


 それは、ただ軍の中で仲違いを起こしたのとは訳が違う。


 英雄の力を持つ兵士が反乱者に手を貸した、裏切り行為である。

  

 以前からコハクが雪妃と親交があった事も、軍に全て調べられ、言い逃れは不可能な状況。


 

 当然、ヴァ―リアの国民からのバッシングは相当なものだった。


 その非難の中には、当然ながら、コハクは今すぐに処刑するべきだという声も多くある。


 過激な思想になると、異界人は全て殺すべきだという声すらあるだろう。

   


 

「相変わらず顔色が悪いですね。やっぱり、眠れないのですか?」


「眠れるよ。あまり寝つきは良くないかもしれないけど」

 

「食事はちゃんととれていますか?」


「ちゃんと食べてるよ・・・なんかフローラさん、姉っていうよりお母さんみたいだな」


「そうですか?」


 照れたように笑うフローラ。


「うん。じゃあ・・・夫はセンリさんか?」


「へ? な、な、なんでセンリさんが出てくるんですか!?」

 

 頬を染めてあたふたとするフローラを見て、コハクはくすくすと笑い、はぁ、と小さく息を吐き出す。

 

 フローラは一度、むうと頬を膨らませると、また話を話を始めた。



「そ、そういえば、明日なんですけど。

久しぶりに、センリさんとアルさんがこちらへ来るそうなんです。

それで、皆で班を組んで任務に出れるんですが・・・コハクさんもどうですか?」


 センリとアルスフォードに会える事が楽しみなのだろう、フローラはとても嬉しそうな様子で話す。



 センリとアルスフォードは異界人ではあるが、二人は名誉異界人に任命されている。


 この南の街に縛られる事はなく、他の街に出入りすることが認められており、

普段は軍の本拠地、つまり中央の城下町で生活しているのだ。

 


 中央の城下街から南の街へ行くには、使い魔が引く馬車に乗っても4時間程度は掛かる距離がある。


 何より、ヴァーリアにとって重要な戦力でもあるセンリとアルスフォードの二人には、常に沢山の任務が課せられている。


 その為、フローラやコハクに会いに来る時間などは無かった。


 そして実際、フローラもコハクも南の街に移住してからの間、一度もセンリ達に会えていない。     

 

 

 そんな二人と久しぶりに会えるのだ。


 コハクも、是非会いたいと思っていたが。


「僕は・・・一緒の班は組めないな。

任務に出るときは決まった班を組む事になっている。要するに僕の監視さ。

ついでに、上空からは監視の使い魔がついてくる。

僕はどんだけ警戒されてるんだよってな」


 コハクは、冗談っぽく苦笑いを浮かべた。


 それはフローラの誘いを断ってしまった事への、コハクなりの気遣いでもあったが、

やはりフローラは、申し訳なさそうな表情を浮かべてしまった。   


「・・・そう、でしたか。ごめんなさい」

 

「あぁ、でも任務には一緒に行けないだけだからさ。

 基地の中なら、誰と何しようが自由なんだよ。だから、任務が終わったらみんなで会おう」


「・・・はい。わかりました!」

 

 そしてもう一度笑顔を浮かべて、コハクとフローラは約束を交わし合った。  

  


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