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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第四部   作者: マスター


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8/10

第8話 雨庭の水と、「まっすぐ流す町」と「一度だけ受け止める町」

第4部第7話では、川の上流の斜面と畑を舞台に、「崩れ方の記憶が曖昧な斜面」と「崩れ方を覚えてスポンジに近づいた斜面」という二つの世界線を見ました。


第8話では、視点を少し下流に移して、「雨庭」を持つ中流の町を取り上げます。


大きくは動かなかった世界線では、「雨をできるだけ早く側溝と川に流す町」。


少しだけ曲がった世界線では、「雨を一度だけ庭で受け止めてから流す町」。


主人公とAIが、夏の終わりの夕立と秋雨をきっかけに、「水の通り道」が補助輪になるかどうかを考える回です。

「上流を見たあとだとさ」


俺は、昨日の斜面の写真を頭の片隅に置きながら、別の地図を開いた。


「中流の町の“雨の抜け方”が、気になってくるんだよな」


『斜面から落ちた水が、次に通る場所だ』


「そう」


上流の畑で、土が水を受け止める。


草の帯が、水の筋を少し変える。


畦の向きが、流れ方を少し変える。


でも、その水は、そこで消えるわけではない。


少しずつ下へ向かい、住宅地の中へ入ってくる。


「第4部第8話は、“雨庭”のある町と、ない町を並べてみる回にしよう」


『いい流れだ』


「上流のスポンジから、中流の雨庭へ」


『水のログが下りてきたな』


第1節 大きくは動かなかった世界線の「まっすぐ流す町」


川の中流にある住宅地。


二階建ての家が並び、細い道路が網の目のように走っている。


庭はある。


けれど、土は踏み固められ、雨が降るとすぐに表面で水が弾く。


「側溝は、きっちり整ってる町だな」


俺は、現実線のログを開いた。


――道路の両脇には、コンクリートの側溝が続いている。


――屋根から落ちた雨水は、雨樋を伝って下へ落ちる。


――その水は、敷地の端を通り、ほとんど迷わず側溝へ流れ込む。


――側溝は途切れず、数百メートル先の川へ向かっている。


『一見すると、きちんとした排水だな』


「実際、きちんとはしてるんだよ」


『家の中へ水を入れないためには必要だ』


「そこは間違いない」


夕立が来る。


最初は、ぽつり、ぽつり。


すぐに、屋根を叩く音が強くなる。


道路の表面に水が薄く広がり、あっという間に側溝へ吸い込まれていく。


――雨が強くなると、側溝の水位は短時間で一気に上がる。


――家々の雨樋から出た水が、ほぼ同じタイミングで道路脇へ集まる。


――川の水位も、雨の後半にかけて急に増える。


『この町には、雨庭はない世界線だな』


「そう」


――庭は、植木を並べる場所。


――洗濯物を干す場所。


――物置を置く場所。


――休日に草を抜く場所。


――けれど、雨が降るときの水の通り道としては、あまり考えられていない。


「水は、“なるべく早く外へ出すもの”として扱われている」


『それ自体は、昔からの都市の発想だ』


「家を守るには、分かりやすいからな」


『だが、町全体で見るとどうなる?』


「全部の家が、同じように早く外へ出す」


『うん』


「その水が、同じ時間帯に側溝と川へ集まる」


『うん』


「結果として、川に任せる量と速さが増える」


――この町では、雨の動き方を細かく見ているのは、主に自治体と専門家だ。


――住民の多くにとって、雨は「家の外へ出したら終わり」のものになっている。


――庭から側溝へ流れたあと、その水がどこで合流し、いつ川へ届くのかは、普段の暮らしの中では見えにくい。


『それが、“まっすぐ流す町”だ』


「きちんとしているようで、“どこにも一度も止まらない町”なんだよな」


第2節 少しだけ曲がった世界線の「雨庭がある町」


『では、ここからは“少しだけ曲がった世界線”の中流の町を見てみよう』


AIが言う。


俺は、右側のログを開いた。


そして、最初に一行だけ書いた。


――ここからは、“雨を一度だけ庭で受け止めてから流す町”としての世界線である。


同じような住宅地。


同じ二階建ての家。


同じように細い道路と側溝が走っている。


ただし、この世界線では、いくつかの家の庭が、雨のための庭――雨庭――になっている。


「どんな庭かというと」


俺は、雨庭のメモを開いた。


――雨庭には、浅い窪みがある。


――地面には、水を少し染み込ませやすい土や砂、有機物が混ぜられている。


――周りには、ある程度の湿り気にも乾燥にも耐えられる草や低木が植えられている。


――水が溜まりっぱなしにならないよう、余った水が側溝へ逃げる出口も用意されている。


『池とは違うわけだな』


「違う」


『ずっと水を溜める場所ではない』


「雨のあと、しばらく受け止めて、少しずつ減っていく場所だな」


『維持管理は?』


「そこも必要だ」


――落ち葉が詰まれば、水の流れが悪くなる。


――土が固まりすぎれば、染み込みにくくなる。


――水が長く残りすぎれば、衛生面の問題も出る。


――だから、雨庭は作って終わりではなく、草を刈り、落ち葉を取り、溜まり方を時々見る必要がある。


『補助輪は、維持されて初めて補助輪になる』


「駅前のミストと同じだな」


『屋根から落ちた水は?』


「全部側溝に直行するんじゃなくて、一度その窪みに入る世界だな」


――雨樋の一部は、側溝ではなく雨庭の方向へ向けられている。


――夕立が来ると、屋根から落ちた水が雨庭へ入り、浅い窪みに溜まる。


――一部は地面へ染み込み、一部は植物の根のまわりを通り、余った分だけ、少し遅れて側溝へ流れ出ていく。


『側溝の水位の上がり方は、どう変わる?』


「断定はできないけど」


俺は、少し言葉を選んだ。


「雨庭のある家がいくつか連なる通りでは、雨水の一部が数十分から数時間だけ庭に留まる」


『うん』


「その分、側溝へ一気に入る水のタイミングが少しずれる」


『うん』


「通り単位では、ピークの形が少しなだらかになる可能性がある」


『川全体の水位を大きく変えるとは限らない』


「そこは言わない」


――この世界線でも、危険な豪雨のニュースは同じように流れる。


――雨庭が満杯になれば、余った水は側溝へ流れる。


――大雨が長く続けば、側溝も川も増水する。


――雨庭だけで洪水を止めることはできない。


――ただ、「すべての水が一気に側溝へ流れ込む町」よりは、「一度庭に寄ってから側溝へ流れる町」のほうが、水の集まり方を少しだけ変えられるかもしれない。


『それが、雨庭の補助輪としての役割だな』


「暮らしの側から見ると、もう少し別の違いもある」


――雨庭のある家では、雨の日に窓から外を眺めると、屋根から落ちた水が窪みに溜まり、少しずつ減っていく様子が見える。


――子どもは、「庭に一度水が来てから、川へ行くんだ」と覚える。


――大人も、「この水は、どこから来て、どこへ行くのか」を一度意識する。


『水の通り道が、暮らしの中に見えるわけだ』


「そう」


雨庭は、ただの設備ではない。


水を止める箱でもない。


それは、雨が家から川へ行くまでの途中に、「一度見える場所」を作るものだった。


第3節 二つの町を並べて見た主人公の一言


俺は、二つの中流の町を頭の中で並べた。


左側。


側溝がまっすぐ川へつながっている町。


庭は、雨が降るときのことをあまり考えない場所のまま。


水は、家から外へ出たらすぐに見えなくなる。


右側。


いくつかの家に雨庭がある町。


屋根から落ちた水が、一度庭に寄ってから側溝へ向かう世界線。


水は、少しだけ暮らしの中に姿を見せる。


『どう違う?』


AIが聞く。


「左側の町では、雨は“できるだけ早く外に出すもの”として扱われている」


俺は、ゆっくりと言葉にした。


「家の中に入ってこないようにして」


「敷地の外へ出して」


「側溝に任せて」


「最後は川に任せる」


『右側の町では?』


「右側では、雨は“一度庭に来るもの”として扱われている」


――家の庭が、水が通る場所として最初の受け皿になる。


――雨の強さと、水の溜まり方を、暮らしの中で目で見る。


――そのうえで、染み込む分は染み込み、余った分を側溝と川に渡す。


『補助輪の違いは、誰が水の動き方を一度見るかにも関わっているな』


「そうだな」


――大きくは動かなかった世界線では、水の動き方を細かく見ているのは、主に自治体と専門家だ。


――少し曲がった世界線では、水の動き方を、暮らしの中で市民も一部見ている。


――専門家だけが見る水から、住民も少しだけ見る水へ。


『雨庭は、技術でありながら、視点の補助輪でもあるわけだ』


「第4部第8話は、そのことを一回はっきり言葉にしておく回だな」


俺は、二つのログの最後に書き込んだ。


――これは、雨をまっすぐ側溝と川に流している町のログだ。


――これは、雨を一度庭で受け止めてから、側溝と川に流している町のログだ。


「どちらの町も、ありえる未来だ」


俺は、画面を見ながら続けた。


「側溝が整った町も、必要だ」


『水を家から遠ざける仕組みは必要だからな』


「雨庭のある町も、必要だと思う」


『一度受け止める仕組みだ』


「自分としては、雨庭のある町を、ましな補助輪として書いておきたい」


『上流のスポンジと、中流の雨庭が、少しずつつながってきたな』


「上流では、崩れ方の記憶を土に移した」


『中流では、水の通り道を庭に見えるようにした』


「どっちも、“水がいきなり川へ行く前に、一度だけ受け止める”って話なんだな」


『流域の補助輪らしくなってきた』


俺は、中流の住宅地の地図を閉じた。


次に水が向かうのは、さらに下流だ。


遊水地。


堤防。


川沿いの住宅地。


そして、海へ近づく町。


雨庭で一度受け止められなかった水も、いつかは下流へ届く。


第4部第8話は、ここで区切る。

あとがき

第4部第8話では、川の中流にある住宅地と雨庭を舞台に、大きくは動かなかった世界線の「雨をできるだけ早く側溝と川に流す町」と、少しだけ曲がった世界線の「雨を一度だけ庭で受け止めてから流す町」を、主人公とAIの視点から並べて描きました。


大きくは動かなかった世界線では、側溝はきちんと整備されています。


屋根から落ちた雨水は、雨樋を通り、敷地の端から側溝へ入り、川へ向かいます。


これは家を守るためには大切な仕組みです。


水を家の中へ入れない。


道路や敷地に長く溜めない。


そのために、排水設備は必要です。


ただし、町全体で見ると、すべての家が同じように早く水を外へ出すことで、側溝と川へ水が一気に集まりやすくなります。


雨の動き方を細かく見ているのは、主に自治体や専門家です。


住民にとっては、雨は「家の外へ出したら終わり」のものになりやすい世界線です。


少しだけ曲がった世界線では、いくつかの家に雨庭があります。


雨庭は、浅い窪みを持ち、水を少し染み込ませやすい土や砂、有機物を混ぜた小さな庭です。


そこには、湿り気や乾燥にある程度耐えられる草や低木が植えられています。


屋根から落ちた水の一部は、すぐ側溝へ向かわず、一度雨庭へ入ります。


水は浅い窪みに溜まり、一部は土へ染み込み、一部は植物の根のまわりを通り、余った分が少し遅れて側溝へ流れ出します。


雨庭は、池ではありません。


水を長く溜め続ける場所でもありません。


落ち葉が詰まれば、水の流れは悪くなります。


土が固まりすぎれば、染み込みにくくなります。


水が長く残りすぎれば、衛生面の問題も出ます。


そのため、草を刈ること、落ち葉を取り除くこと、水の溜まり方を見ることなど、維持管理が必要です。


また、雨庭だけで洪水を止めることはできません。


豪雨が長く続けば、雨庭は満杯になり、余った水は側溝へ流れます。


側溝も川も増水します。


ただし、雨庭のある家がいくつか連なる通りでは、水の一部が数十分から数時間だけ庭に留まり、側溝へ入るタイミングが少しずれる可能性があります。


通り単位では、ピークの形が少し変わるかもしれません。


その小さな違いが、流域全体で積み重なることで意味を持ち始めます。


今回、雨庭を「視点の補助輪」としても描きました。


大きくは動かなかった世界線では、水の動き方は、自治体や専門家が主に見るものです。


住民にとって、雨水は家の外へ出せば見えなくなります。


少しだけ曲がった世界線では、雨庭によって、水が家から川へ行く途中の姿が暮らしの中に見えるようになります。


雨が庭に入り、溜まり、少しずつ減っていく。


子どもは、「庭に一度水が来てから、川へ行くんだ」と覚えます。


大人も、「この水はどこから来て、どこへ行くのか」を一度意識します。


雨庭は、技術であると同時に、水の通り道を市民の目の前に戻す仕組みでもあります。


第7話では、上流の斜面と畑で「崩れ方の記憶」を土の扱い方へ移しました。


第8話では、中流の住宅地で「水の通り道」を庭の中に見えるようにしました。


どちらも、雨を完全に止めるものではありません。


ただ、水がいきなり川へ行く前に、一度だけ受け止める補助輪です。


次回は、さらに下流へ視点を移し、遊水地や堤防、川沿いの住宅地を舞台に、大きくは動かなかった世界線と、少しだけ曲がった世界線を並べて見ていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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