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選抜区域  作者: 谷花皐
第四章 チェックメイト

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40/40

第40話 責任

俺は一瞬、呼吸を止め、思考が散る。

明らかに情報が少なすぎる。


だが今の言葉の言い回し、考えられる情報は内容だけじゃない。間、癖。そこにも情報はある。


そして俺が違和感を持った一番の理由は――湊の名前を出したこと。


あれはただの言葉じゃない。その言葉には“実体験”の重さがあった。


その時頭の中で、一人の名前が浮かぶ。


……いや、本人という確証はない。だが時間もない。


外せば、周りにこの隠し事が公開されてしまう。

なら――ここで当てるしかない。


「……お前は――」


一瞬だけ、迷いがよぎるが、それを切り捨てる。


「立花だ」


次の瞬間――【CORRECT】


無機質な音声が響いたと同時に、周囲の空気がわずかに緩む。


澪が息を吐く音が聞こえた。


「……当たったの?」


誰かの小さな呟き。胸の奥に溜まっていた何かが、少しだけ抜ける。


「……ああ、そういうことか」


小さく、納得したような声が聞こえる。


その声は立花だった。

「……やっぱ、お前すげぇな。見抜かれてたってわけだ。」


立花の声は、どこか後悔しているような、許しを乞うているようなそんな声だった。


次のセットがもうすぐ始まりそうだ。今回はたまたま当たっただけだと自分に言い聞かせる――まだ安心はできない。


たった一つ目なのだから。


『ポイントを加算します』


機械音が続く。


『現在スコア 1』


レイが俺の耳元で呟く。


「へぇ、ちゃんと見てるんだね。」


俺はゾッとした。いつのまにこんな近くにいたのか、彼女のその言葉の意味は自分を褒めているのか、それとも試しているのかどっちなんだ?


その言葉が妙に引っかかり、少し考える。

そして気づく、彼女の言葉の意味はどちらの意味でもあってどちらでもない言葉なのだと。


「Impressive… but」

レイがわざとらしく、間を空けると

「でもさーそれ、次もできるかなー?」


その言葉が、自身の心に妙に重くのしかかる。


俺が当てたのは偶然じゃないか。果たして、本当に見抜けているのか。そう疑念を植え付けるように。


『次のラウンドに移行します』


御影の声が響く。


足音がまた動き出し、配置が変わる。もう一度くる囲まれる感覚。さっきよりも、みんなとの距離近い気がする。


――かごめかごめ


歌が再び流れる。


さっきと同じはずなのに、何かが違う。


明らかに“距離”が近い。


全員の息遣いが、分かる。心臓の音が、邪魔をする。


――よあけのばんに


そして少しして音楽が止む。

『後ろの正面だあれ』


変換された声が耳に響く。


「……私は――誰かを利用したことがある。」


空気が変わる。一人称が私ってことは、俺が知っている中では女子しかいないはずだ。これで候補は絞れた。


「その人が壊れるかもしれないって、分かってた。」


「でも、必要だったの。私の目的を果たすために。でも目的を達成したら、その人は必要なくなった。だから切り捨てた。その時の彼女の顔を私は今でも忘れることはできずにいる。」


彼女の言葉が落ちる。さっきの後悔とは明確になにか違う気がする。立花の秘密は見て見ぬふり。そして今回の秘密は、徹底的な合理性のもとに判断したような。そんな感じがする。


「ねぇねぇ」

俺のすぐ後ろに気配がする。


「あなたはどっちが好き?後悔する人間と〜割り切る人間。私はどっちも好き。どちらにも違う魅力があるけど、この二つには共通しているところが一つだけあるんだよねー、でもねそれはねー秘密。だって教えたらつまんないもんね。」


レイであろうその声の中身は毒だ。


思考が揺れる。さっき当てた成功が、逆に邪魔になり次も当てなきゃいけないというプレッシャーへと変貌する。


視界は真っ暗、気配は確実に感じる。


みんなが息を止め、俺の答えを待っている。


だんだんと時間が削られていく。


これを外せば、次はこの秘密が公開される。


その事実に俺はゆっくりと息を吐く。


感じるんじゃない。考えろ。


さっきと同じだ。見るのは言葉じゃない。

その奥にある真実を見抜くんだ。


「……お前は――」

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