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選抜区域  作者: 谷花皐
第四章 チェックメイト

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三十四話 旗手の視界

モニターに表示された文字。

【CHECK】

巨大なチェス盤の空気が一瞬で変わった。


蒼天側、澪が声を上げる。

「ちょっと待っていきなりチェック!?」


真白も不安そうに言う。

「玲央くん……これって。」


凛が盤面を見ながら答える。

「簡単に言えばキングに攻撃が届く状態。」

そして盤面を指す。

「つまりこのまま放置すれば詰みの形に入る。」


九条が中央を見るとそこには久我のルーク。


そしてその周囲に東雲の駒が配置され始めていた。


クイーン。ナイト。ポーン。


凛が言う。

「久我は今、中央で孤立してる。」


澪が焦る。

「孤立って……」


凛が盤面を確認する。

「このままだと三手以内に久我は取られる可能性が高い。」


真白が息を呑む。

「そんな……」


久我は肩を回す。

「三手か。」


「思ったより早かったな。」


澪が言う。

「いや落ち着きすぎでしょ!もしかして今の状況分かってないの?」


久我は澪のセリフにイラつきつつ中央で盤面を見ていた。周囲の敵の駒。動けるマス。


「あいつら完全に囲いに来てるな。」


凛が頷く。

「そう。神崎は中央を支配してから詰ませるつもりよ。」


九条が言う。

「つまり久我を取ることが本当の目的じゃない。」


「ええ。相手の目的は久我を足掛かりにしてキングを追い込むつもりだわ。」


澪が言う。

「それって……」


「完全にあっちのペースね。」


蒼天側の空気が重くなる。


だがその時俺はまだ盤面を見ていた。


中央。久我。そして盤面の外側。


「……違う。まだ完全にあっちのペースっていうには早すぎる。」


凛が振り向く。

「玲央?」


「神崎は中央を取りに来てる。これは確かだ。」

「でも、あっちは今中央だけを見てる。他の選択肢がないかのようにな。」


湊が小さく笑う。

「……やっと気づいたか。」


澪はまだ分かっていない。

「え?」


九条も聞く。

「どういうこと?」


湊が盤面を見る。中央。そして盤面の端。


蒼天のポーン。まだほとんど動いていない駒。


湊が説明する。

「神崎は中央の三手を読んでるんだ。」

「でもこのゲームの盤面は中央だけじゃない。」


その説明を受け凛が盤面を見て理解する。

「……そういうこと。」


澪はまだ理解できない。

「え?どうゆうこと?」


「つまり久我の役割は囮じゃない。」


視線が玲央へ向く。

「玲央が使う“餌”よ。」


久我がツッコむ。

「おい。勝手に餌扱いすんな。」


俺は盤面を見たまま言う。

「久我。」


「なんだ」


「まだ動くな。絶対にチャンスはくる。」


「チャンスか。そん時は俺に任せとけ。」


東雲側、篠崎が言う。

「神崎。蒼天は完全に包囲されてます。」


相馬も笑う。

「あいつはもう逃げられないな。」


だが2人の言葉は届かなかった。なぜなら神崎は盤面をずっと見ていたからだ。


蒼天の配置。中央。そして盤面の端。


神崎が小さく呟く。

「……なるほど。そういう狙いですか。」


「ですが、まだ遅い。」


巨大なチェス盤の中央では久我が完全に包囲され始めていた。


だがその外側ではまだ誰も動いていない駒がある。


次の一手が盤面を変える。


その一手を指すのは蒼天の旗手。

相沢玲央だった。


「ポーン。」


澪が振り向く。

「え?私?」


「二マス前進。」


澪が驚く。

「中央じゃないの!?」


凛も一瞬目を見開くがすぐに理解する。


そして盤面を理解する。

「……そういうこと。」


九条は凛に何が起きたのか聞いている。

「凛?」


「この一手は久我を助けるための一手じゃない。神崎を動かすための一手よ。」


ポーンが前へ進む。一マス、さらにもう一マス。


モニターが光る。

【MOVE】


巨大なチェス盤のその端で一つの駒が動いた。


東雲側では

「……動いたのはただのポーンです。」


相馬も笑う。

「あの動きに意味はあるのか?それとも勝負を諦めたのか?」


神崎は盤面を見る。

「そう来ますか。」


蒼天側では澪が言う。

「玲央!ほんとにそれ意味あるの!?」


久我も中央で叫ぶ。

「おい!一応俺の命もかかってるんだけど!」


俺は盤面を見たまま言う。

「久我。あと一手耐えろ。」


久我はその言葉の意味を理解していなかったが答える。


「わかったよ。」


中央でルークが構える。東雲の包囲。そして盤面の端。


動き出したポーンにより盤面の均衡は確実に崩れ始めていた。

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