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読んでいただきありがとうございます

 「何処にいても狙われる時は狙われますわ。それにしても王宮の文官の方だったのですね、しかも外交部とは驚きでした」


「お父上が睨んでおられますがよろしいのでしょうか」


「ハロルド様は此方に来てからの初めての知り合いですの。文句は後にしてもらいますわ」


「勇ましいですね。子供の頃ですがサウス国のヘインズ領にいたという女の子と遊んだことがあります。商人の娘で色々なことを知っていました。ミルフィーヌ様はヘインズ領に行かれたことはありますか?」


「行ったことはありませんわ」


元婚約者の顔が浮かび何とも言えない気持ちになった。未練があるわけではないが何故か分からないがもやもやした。

これ以上ヘインズ領の話はしたくなかったのでお父様が戻ってこられてほっとした。


「待たせたねミルフィーヌ帰ろうか」


「はいお父様」


「顔色が悪いな、何か言われたか?」


「昔ヘインズ領にいたという商人の女の子と遊んだことがあると言われたので、思い出してしまって」


「彼とはもう会うこともないだろう、忘れてしまいなさい」


「そうですわね、そうします」



伯爵はもう一度ハロルド・ミラーについて調べることにした。



四度の偶然、そんなことがあるものだろうか。トレイルの指示ではないのか。

今のところこれといって揉めていることがあるわけではない。繋がりの為の接触か、唯の偶然か。




一週間後ハロルドの調査が上がってきた。侯爵家の三男で嫡男が家を継ぎ次男が騎士団に三男の彼が文官という世間一般の貴族家庭の構成として怪しむところはなかった。大学の成績は優秀で語学が専門だった。


高等学院の時に付き合った令嬢はいたが、伯爵家の次女で軽い付き合いだったらしい。その女性は今は結婚して子爵夫人となっていた。

継ぐ家がないので婚約者はいなかった。婿としては良い条件だろうに本人に結婚の意思がないのかもしれない。


子供の頃にサウス王国から来た女の子と遊んだことがあるというのに引っかかりを憶えたが、そこまで調べるのは流石に難しかった。



惹かれている訳でも無さそうなのでそっと見守ることにした。下手に反対すれば悪い方へ行ってしまいそうな危うさが今のミルフィーヌにはあった。





 父親がそんな心配をしていると知らないミルフィーヌは

「ララ、街に氷屋さんがあるらしいのよ。一度行ってみたいわ。暑い外で食べると何とも言えず美味しいのですって」


「調べておきますね、何処でお知りになったんですか?」


「この前のお茶会で聞いたのよ。上品な氷菓も美味しいけど庶民の氷菓子も堪らなく美味しいとアマンダ侯爵令嬢が言っておられたの」


「そうなのですね、調べておきます。そろそろ坊ちゃまの夏季休暇の時期ではございませんか。遊びにいらっしゃいますかね?」


「手紙を出してみるわ」


暫く会っていない母と弟が懐かしくなってきたミルフィーヌだった。

「来るなら家族でこの国の避暑地に行きたいわ。お父様休みを取られていないもの」


「そちらも調べておきますね。来てくださると良いですね」


「ええ、お願い」



一週間後ミルフィーヌは町娘らしく水色のワンピースを着てツバ広の麦わら帽子を被り、何故かパンツスタイルのリリとララとビルに姿を隠した護衛を連れて庶民街にあるかき氷屋に来ていた。

暑いがカラッとしているので身体に受けるダメージは少ない。店主が氷を削り果物を切ったものを乗せ、シロップを掛けているのは奥さんのようだ。

店の前のベンチに座るお客に氷を手渡しているのは若い女の子だった。


ガラスの容器に入れられているそれは冷たく涼しそうで食欲をそそった。

「美味しそうだわ」

口に含むと氷がふわっと溶けて果実の甘さがシロップと合って美味しい。


リリとララもご機嫌だ。ビルと護衛達には立って食べてもらった。襲われた時に咄嗟に動けないと困るので、順番に。



「この後は図書館に行きたいわ。歴史書が面白かったので借りようと思っているの」


「ではお嬢様馬車にお戻りください」


「ええ、分かったわ」



図書館に行くと歴史書のコーナーに行き東方の国の本を借りることにした。

難しい言葉だが読み解くのが面白かった。時間がかかりそうなので一冊にしておいた。その時机に突っ伏して寝ている人を見つけた。


なんという遭遇率、ハロルド様だった。よほど疲れているのだろうと思いそっと横を通り過ぎようとした時

「ううっ、あれミルフィーヌ様だ。これは夢の続きか」

思わず腕を掴まれてしまった。リリとララが暗器を取り出そうとしている。

「離せ、さもないと手を切り落とす」


小さな声でミルフィーヌが注意した。


「騒ぎはいけないわ、出入り禁止になってしまうじゃない」


「済みません失礼なことをしました。夢だと思っていたのでつい」


「こんなところで寝ている程お疲れなら家に帰って休まれたら良いのに」


「ここにしか置いてない書物があり調べ物をしていたんです。終わったので気が緩んで寝落ちしてしまったようです」


「夢の中の私はまたお菓子でも食べていたのですか?」


「あ、あ、花の中に立って丘の向こうへ行こうとされていたのでつい手を取ろうとしてしまいました。まさかご本人が現れるとは思わず大変失礼いたしました」


「丘の向こうには何があったのですか?」


「霧がかかっていたのではっきりとは見えなかったのですが多分川です。かなり大きな。水音が大きかったので危ないと思いました。夢なんですが」


「東方の国にはあの世という場所があり川を渡るそうです。取り敢えず夢の中でも助けていただいたようですね。ありがとうございます」


「夢ですよ、お礼は良いです。それより腕を掴んでしまい申し訳ありませんでした。痣になっていませんか?」


「なっていませんわ」


「良かった。あっ急いで帰らないと怒られる」


机の上を急いで片付けると「失礼します」と言ってあっという間に姿を消した。



「腕をいきなり掴むなんて本当に寝惚けていたんですかね、怪しすぎます」



ララが腹立たしそうに言った。






夕方もう一度投稿します。よろしくお願いします。

名前のご指摘ありがとうございました。侯爵令嬢は全くの他人です。何気にヘインズが頭に残っていたと思われます。気づいてくださり感謝しかありません。助かりました。

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