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読んでいただきありがとうございます
ミルフィーヌは本を返しに行った帰りに国立植物園に寄ってみることにした。
季節は初夏で色とりどりの薔薇の花やピンクや水色の紫陽花、紫色のラベンダー
ピンク色のスイトピー、紫色のクレマチスが美しい景色を作り出していた。
風がそよそよと吹き花々を優しく揺らしていた。大使館の庭も見事だが趣が違い
見る人の心を癒すように植えられていた。
遠い国からシャボテンという棘のある植物が贈られて来て展示されているらしい。
中々の人気で行列が出来ているようだ。
知って来た訳ではないが、もう人混みは懲りたミルフィーヌは近づかないように早目に出る事にした。
「お嬢様、人気の展示物と良く遭遇しますね」
ララが可哀想な物を見るような目で言った。
「今日は偶然よ、もうあんな目に遭うのは沢山。早く帰りましょう」
その時聞いたような声がした。
「偶然ですね、お元気でしたか?」
「まあ、ハロルド様ではないですか。人気の展示があるようなので人混みを避ける為に今から帰るところですわ」
「見られたのですか?」
「いえ、この間のようなことは懲りましたので早目に帰ろうとしていたところですの」
「この後時間が大丈夫なら付き合っていただきたい所があるのですがよろしいでしょうか」
リリとララから殺気が漏れた。それを目で止め
「どちらに?」
「ケーキが美味しいと評判のカフェがあるのですが男一人では入りにくく付き合っていただけないかと」
「まあ、甘党でしたの?」
「はい、そちらの侍女さん達も是非」
双子はまだ警戒はしていたが自分達がピッタリ張り付いていれば大丈夫だと思ったらしく、アイコンタクトで了承を告げてきた。
「では喜んでご一緒しますわ」
カフェは貴族街にあり安全面に配慮された店だった。上流階級の客をターゲットにしているらしく外観もレンガ造りで格調が高く個室もあった。
そこまでの知り合いでもないために一階に席を求めた。
オルゴールが小さく音を奏でており観葉植物が品良く飾ってある。
確かにカップルや女性の客が多い。
奥の席に案内されるとハロルドが言った。
「同僚から聞いたのですがチーズケーキが評判らしいのです。是非食べてみたくて。ミルフィーヌ様に会ったのも何かのご縁かなと誘わせていただきました」
にこにこしているハロルド様からは悪意は感じなかった。
ここの店のベイクドチーズケーキは特別な材料を使っているらしく確かに美味しかった。あっさりとした紅茶と合い、いくらでも食べられそうだ。
「ワンホールくらいは食べられるな」
と言って嬉しそうに食べている姿をみると微笑ましくなってきた。
「甘いものがお好きだと体形が気になりませんか?」
「その為に仕事の前に走ったり剣を振ったりしているのです。私たち趣味が同じでいい友達になれると思いませんか?」
「えっ、趣味が同じとは?」
「絵画が好きで本が好き花も好きですし、甘いものも好き、同じ趣味ですよね」
「確かに同じですわね。でもたまたまお会いしただけですし友達とは言えないのではないでしょうか。男性と女性ですし」
「勝手に親近感を持ってしまい失礼しました。それに縁談の邪魔になりますね」
「いえ縁談云々はともかく、また何処かでお会いしたら共通のお話ができて楽しいと思いますわ」
なんと楽しい人だろう。爽やかな外見もありきっとモテるだろうなと想像した。
ハロルドこそ異性の友達なんて縁談の邪魔だろうに、責任を取らず遊ぶほうが好きなのだろうか。
「婚約者の方はいらっしゃらないのですか?」
「いません。僕は三男坊で気楽な立場なんです」
✠✠✠
そんなハロルドと外交のパーティでまた会うことになるとはこの時のミルフィーヌは想像もしていなかった。
ミルフィーヌが今住んでいる国はトレイル王国だ。そこに大使である父が赴任して外交を任されている。今日は周辺の数カ国が貿易の関税について話し合いが持たれる日だった。
そしてその後に各国の要人や大使が家族と共にパーティに参加しているという状態になっている。皆笑顔だが目は笑っていない。油断はできないというか緊張が凄い。
「ミルフィーヌ様ではありませんか。この様な場所でお会いするとは思いませんでした」
振り向くとハロルド様がいつもの笑顔で話かけてきたのだった。
「ごきげんよう、ハロルド様。紹介しますわ。サウス王国大使で父のバルモア伯爵です」
「大使令嬢でしたか。どうりで上品なはずだ。大使、トレイル王国で外交部門の文官をしておりますハロルド・ミラーと申します。お嬢様とは偶然に何度かお会いしていまして交流させていただきました」
「君は外交官を目指しているのかな?」
「いえ、たまたま今日は手が足りないからと借り出されましてここにいるだけでございます」
「最初に美術館で気分の悪い私に声をかけてくださったのがハロルド様だったの。偶然が四度続いて驚いていますの」
「娘を気遣ってもらい助かった。護衛も付けていたのに危うく攫われるところだった」
「お役に立てて良かったです」
「お父様、アイル王国の外務大臣の方が話があるようですわ」
「ああ、行って来るからここで待っているのだよ」
「子供扱いですわね、ちゃんと待っていますから行ってきてくださいませ」
「お父上は過保護なんだな。まあ狙われやすいよね、大使令嬢は。大変だね、何かあれば国の命運がかかっているから」
私達は軽口を叩きながら当たり障りのない会話をした。
ミスのご報告ありがとうございます。うわ〜っやってしまった、って感じです。
訂正しました。ありがとうございました。