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裏切りはいらない  作者: もも


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キース王子が何故女装するようになったのかが分かる番外編です。

読んでくださると嬉しいです。

誤字報告ありがとうございます!

沢山の評価、ブックマークをいただき感謝しかありません。どうもありがとうございます!!


 キース・ラドクリフはトレイル王国の第三王子だ。上に姉と兄が二人ずついる。全員正妃の子で兄弟の仲はとても良い。末っ子なので構い倒され可愛がられてきた。

容姿が女の子のようなので姉たちはこの末っ子で遊ぶことを覚えてしまった。

小さな時はドレスを着せられても訳がわからず、姉さま達と一緒だと単純に喜んでいたのだった。


三人でお茶を飲んでいるとそこだけ花が咲いたようだった。

「キースって本当にドレスが似合うわね。ぱっちりとした目と流れるような金髪にさくらんぼのような唇。神様はお間違えになったのではないかしら」


「そんなことを言われては罰が当たりますよ。僕はちゃんとした男です」


「そうなんだけどねえ、大きくなるまでもう暫くこの遊びは続けましょうよ、楽しいんですもの」


(これって姉さま達の遊びだったんだ。そういえば兄様達がドレスを着たところは見たことがない)


何かの扉を開けさせられた気がしたキースだった。





王家の男子として剣の鍛錬も受けそれなりの腕前になったが、筋肉は付かない体質のようだった。


十歳の時公爵家の令嬢ソフィアと婚約をすることになった。婿に入り支えていかなくてはならない。

顔合わせで初めて会った令嬢は七歳の可愛らしい子だった。


ソフィアは俯きがちな気弱そうな女の子で姉たちとはタイプが違った。気が強い姉たちのことは好きだったが優しい人をお嫁さんにしたかった。

絶対守ろう、キースはそう決心した。



ソフィアも絵本から出てきたようなキラキラとした王子様に一目で虜になった。

この方が未来の旦那様、お守りできるように頑張らなければと斜め上の決心をしたのだった。



ソフィアの家は王家の盾と昔から言われている武門の一族だった。ソフィアも幼い頃から鍛えられ年齢よりはかなり強くなっていた。

優しそうなキラキラ王子様をお守り出来るなんて素敵だわと乙女心は舞い上がっていた。





「姉上達、もう僕はドレスは着ません。婚約者も出来たのですし兄上達のような男らしさを目指すことにします」


「お兄様達は似合わないから着ないのよ。キースはとても似合っているのよ、着ないなんて勿体ないわ。それに街にこっそり出るときだって女装すれば王子だなんて気づかれないわ」



キースは視察のためと息抜きのために変装して何度か街に出ていた。姉達にはバレていたらしい。口では勝てない姉達に「王女宮の中だけですからね。今に絶対止めてみせます」と宣言したのだった。


兄達にも相談したが

「気がついた時には人形の代わりにキースが着せ替えされていて口が出せなかった。悪かった」と平謝りされた。姉達に勝つ対策はないらしい。


両親にも相談したがいずれきちんと注意するからと言うばかりだった。

「このままでは縁談に差し支えます」

と抗議しても

「その内注意するから」

というばかりだった。


「全く姉上達に甘いんだから」


とこの頃のキースは憤っていたのだ。




そんなある日ソフィアの王子妃教育が早く終わった日があった。愛しの王子様に早く会いたい彼女はピアノの練習をしている部屋に突撃することにした。

ところがピアノを弾いていたのは王子様ではなく綺麗な令嬢だった。


扉を開けたソフィアは

「失礼しました。お部屋を間違えたようです」

と言った。


真っ青になったキースはもう終わりだと思った。朝、着せ替えされたまま着替える時間もなく色々な勉強に追われてピアノの時間になってしまっていた。

唇を噛み締め


「ソフィア、僕だよ、キースだ。部屋は間違えていない。君とのお茶会までには着替えようと思っていたんだ。これは僕の趣味ではなく姉上達の仕業なんだ。嫌いになったよね、軽蔑するよね。もう婚約は終わりだろうか」

と言葉を絞り出した。


「とてもお綺麗ですわ。私負けてしまいました。軽蔑なんてしませんわ。こんなお姿が見られるなんて婚約者の特権ですもの」


「嫌いにならない?」


「嫌うなんてとんでもないです。どんな格好もお似合いです。このまま二人でお茶会をいたしましょう。女の子同士な感じがして何でもお話できそうです」


「ソフィアは心が広いね」


「私が男の子の格好をするのもありかもしれません」

と笑うソフィアに心を鷲掴みにされてしまったキースだった。


それから時々女装で会うようになった。ソフィアの屋敷であったり城の中だったりしたが何の違和感もなく受け入れてくれた公爵家の懐の深さに感謝した。


ソフィアがキース殿下が女装で来るのはお忍びのつもりなのと屋敷中に広めていたせいだった。

使用人達は可愛らしいことだと何でもないふりをしていたのだ。



 外交で行った隣国のノア王子は途轍も無い美貌のせいで女性嫌いになり、王位を放棄し図書館に籠もっていた。

美貌が凄く女性に悩まされていたのは一緒だったので気が合い友人になった。

自分にはソフィアがいてそこまで酷くならなくて良かったとキースは思った。




 そんなノアに付き合っている女性が出来たと諜報が教えてくれた。

久しぶりだから一度話を聞きに行こうと思い立って押しかけた。

特別なことにしたくなくて女装道具を持っていった。

隣国の王子が行くとなると大事になるからだ。

それがどんなことを引き起こすかキースは考えもしなかった。


久しぶりに会った友人は幸せそうに笑っていた。


帰国して一週間ほどした頃、婚約者にキースに会っているところを見られて誤解された、

そのせいで彼女が心を病みそうになっている。

キースが男だと証明する必要がある。

もう女装なんかで会いに来ないでくれと手紙が来た。



キースは自分の迂闊さに罪悪感で頭を抱え、彼の婚約者に謝罪の手紙を書いた。


婚約者の家からはお気遣いなくと淡々とした返事があった。

大使を呼び出して謝りたかったがそれは違うと思い止めた。



いつになるかわからないが、今度ノアに会った時はちゃんと謝罪をしよう。

ソフィアにも付き合ってもらってきちんと男だと言ってその人に謝ろう。

大切な友人の婚約者を傷つけた罪が消える日は、来ないかもしれないとキースは唇を噛み締めた。




念願が叶ったのはサウス王国の新しい王の戴冠式に招待された八年後だった。

会場で友人夫婦の姿を見たキースは急いで呼び止め、

貴賓室でソフィアと共に床に頭をこすりつけ、謝り倒したのだった。


友人夫婦は呆れ顔で許してくれた。

キース王子はちゃらけた王子ではありませんでした。お姉さまたちの遊び道具にされたちょっとだけ可哀想な王子様でした。

隣国に行って友人に迷惑をかけてしまうとは露ほども思っていませんでした。

この後ノアと無事再会出来たのは、ミルフィーヌがすっかり母として公爵夫人として落ち着いてきたからでした。

きちんと謝り許してもらい。友情は復活しました。


ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

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