表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切りはいらない  作者: もも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/28

22

読んでいただきありがとうございます!

 ミルフィーヌとノアの婚約式は宮殿の敷地内の小さな教会で厳かに執り行われた。立ち会うメンバーが陛下に王妃様、王太子ご夫妻とノア様のお兄様の公爵夫妻。ミルフィーヌの両親と弟が参加し豪華さが半端なかった。

王宮の事務方のトップが書類を持って登場しサインをしたら完了だった。


王族に声をかけられたミルフィーヌは緊張でがちがちだった。


「やっとうちの末っ子が結婚する気になってくれて嬉しいよ。ノアのことをよろしく頼むよ」

陛下に声をかけられた。

「こちらこそ宜しくお願い致します」

ノアが腰を抱き寄せ手を握ってくれたので肩の力が抜けた。


「これからここにいる皆で食事をしよう。宮殿の食堂に用意をさせてある。話でもしながらゆっくりしようではないか」

陛下の一言で宮殿に移動することになった。


食堂と言ってもちょっとした会議が開けるくらいの広間だった。白い漆喰の壁に金色の装飾が施されている雅やかな場所だった。


次々とコース料理が運ばれてきた、父は公的な外食が多いので慣れているようだったが、母と弟とミルフィーヌは緊張して美味しいはずの宮廷料理が何処に入ったのか分からなかった。


一通り食べ終わり食後のデザートとお茶になると漸く人心地がついてきた。

「結婚したら離宮を綺麗に改装して住むのでしょう?ミルフィーヌ嬢の気持ちを優先させなさいね。ミルフィーヌ嬢今のお仕事はどうするの?」

王太子殿下を産んでいると思えないほど若々しい王妃様が優しい口調で聞かれた。


「仕事が好きなようですので、子供が出来るまでは続けてもらうつもりです」


「ノアに聞いているのではなくてよ」


ノアの口から子供という言葉が出て赤くなったミルフィーヌが何とか答えた。

「私もそのつもりです」


マリア様が頷き、王妃殿下は微笑ましそうにその様子を見た。

「今度は結婚式ね、楽しみにしてるわ」


愛おしそうにミルフィーヌを見たノアが

「早くその日が来るのが待ちきれません」

と言うのでその場が一気に甘い空気に包まれた。


「ノアが漸くそんなことを言うようになって良かった」

と陛下が嬉しそうに言われた。






 婚約の発表は公式にされ噂はあっという間に広がり、ミルフィーヌを狙っていた男たちは悔し涙を流し酒場で飲んだくれていた。


「相手は公爵様らしいぞ、太刀打ち出来る方ではなかった。悔しいな、狙っていたのに」


「いくら思っても届かなければしょうがないさ、諦めろ。高嶺の花は見るだけで良いじゃないか」


「そうだな、飲もう」




こんな会話があちこちの酒場で聞こえたとか、いないとか。






 妃殿下の侍女と図書館の君の婚約は宮廷侍女の間ではあっという間に広まっていった。黒髪に黒眼鏡の地味男子が妃殿下の侍女を捕まえたのだ。その正体が公爵様だったのだ。

ミルフィーヌは至る所でどうやって知り合ったのかと質問攻めにされ、マリア様の執務室に帰るまでに精神的に疲れ果てた。


漸くたどり着いた執務室でマリア様に

「当分続くわね、お茶を持ってこさせるわね。ひと息つきなさい」

と憐れみの籠もった目で見られた。





遠慮をしなくて良くなったノアはミルフィーヌの仕事が終わる時間になると迎えに行くようになった。


「直ぐそこですし、宮殿内ですから迎えに来てくださらなくても」


「私が会いたいんだ。毎日顔が見たい。ミルフィーヌは嫌なの?それに虫も追い払いたいんだ」

顔を覗き込むように言うノアの色気が半端なかった。


「嫌ではありません」

恋愛耐性の低いミルフィーヌは真っ赤になって俯いた。


「可愛い。フィーヌと呼んで良い?仲を見せつけるようにこれから庭を散歩しよう。それから美味しいレストランがあるので一緒に行こう」


「では着替えてきますのでお部屋の中で待っていてくださいませ」


「ゆっくりでいいからね、待つのも楽しみだ」


衣装部屋でリリがにやにやしてドレスを選んでいた。

「これなんかいかがですか、菫色のワンピースです。足首までありますし時間的にぴったりかと。お似合いですよ。もっと遅い時間ですと黒のレースもお勧めですけど。時間帯が合いません。又のお楽しみにしましょうか」

真珠のネックレスとイヤリングをつけた。



「ノア様にお茶をお出ししてきて。ララも呼ぼうかしら、手が足りなくなったわね」

「ララが喜びます。途中どちらかが店に帰ればいいんですから。明日行って来ますね」


ミルフィーヌの私服を見るとノアはぱあっと顔を輝かせた。

「とても綺麗だ、妖精のようだよ。エスコートできて光栄だよ、姫」

王子様に姫と言われ顔を上げられなくなったミルフィーヌだった。



連れて行かれたのは王都では珍しい海鮮のレストランだった。


前菜に始まりコンソメスープ、見たことのない赤い魚が丸ごと揚げられてネギソースがかけられて出てきた。レモンの味がする。さっぱりして美味しかった。焼いた牡蠣をレモンと塩で食べるのも気に入った。

食後はオレンジのシャーベットと紅茶が出てきた。


すっかり満腹になりにこにこしていたらしい。


「美味しそうに食べるね」


「海鮮がこんなに美味しいとは思いませんでした。人生を損してた気分です」


「これからいくらでも食べさせてあげるよ。海の近くだと生で食べる料理もあるそうだよ、また行こう」


「召し上がったことがあるんですか?冒険者ですね」


「はは、そんなに気負わなくても美味しいから大丈夫だよ。鮮度が良いと美味しいんだ。もう一軒寄って帰りたいんだけど良い?」


いつか行った宝飾店でブラックダイヤモンドの髪飾りとネックレスをプレゼントされた。

「髪飾りは普段使いにして。私のものだって皆に言って回れないから、代わりだよ。着けてあげよう。良く似合っている」


「ありがとうございます。一生大切にします」

お返しにサファイアのカフスボタンをプレゼントした。

「ミルフィーヌの瞳の色だ、嬉しい」

喜ぶノアが可愛いと思ってしまうミルフィーヌだった。





結婚してから離宮に付いて来てくれるのはリリとララとビルになった。離れている間に随分剣の腕を上げたらしい。ノア様の侍従と使用人は今付いている人に加え、王妃様がなるべくベテランの人を寄越してくださるらしい。若い侍女はノア様のトラウマを考えて外してくださったようで安心した。





誤字報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ