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裏切りはいらない  作者: もも


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読んでくださりありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます!

 ノアと会ったのはそれから二週間後の秋の穏やかな日だった。ミルフィーヌは考える時間が欲しかった。彼と会ったのは図書館での貸し借りとカフェに行った時だけだ。


嫌いではない。話が合うし一緒にいて落ち着く人だ。大人でミルフィーヌを尊重してくれる。


休みをもらわないといけないのでマリア様に許可をいただいた、

『デートなの?綺麗にして行くのよ』

と相変わらずの激励をいただいた。


淡いピンクのデイドレスにした、真珠のイヤリングとネックレスを着けて王太子宮の門に行くとノア様が黒のスーツに白いシャツを着て待っていた。


「可愛い!清楚で妖精のようだ。良く似合っているね」


「ノア様も素敵です。あっ、この前買ったカフスボタンですね、お似合いです」


「君の色にしたんだけど、あの時は気づいてくれなかった。今日は気がついてくれた?」


「はい、流石にあれだけ言われたら。あの日はケーキを食べに行くだけだと思っていましたので」


「まあいいや、さあお手をどうぞお姫様」


馬車に乗り紅葉が見事な丘の上に案内された。リリは離れた場所に待機している。ビルも他の護衛も姿を見せずに近くにいるはずだ。


「僕の名前はノア・ハミルトン、陛下のニ番目の弟だ。公爵だよ。王位継承権は子供の頃に放棄した。領地は持っていない。でもミルフィーヌに苦労させないだけのお金はあるよ。大きくなるまでに何度も殺されかけてね、すっかり王族が嫌になった。この黒髪と黒い瞳は先祖返りだそうで陛下には似ていないだろう」


「そういえば陛下は三人兄弟だとお聞きしたことがありました。第二王子殿下も公爵様になられたのですよね」


「陛下に子供が生まれるまではスペアがいるから王子が必要だった。陛下に王子が二人生まれてその必要はなくなった。

今は陛下の仕事を補佐しながら公爵として働かれている。兄上は穏やかな性格だから野心はないし、この国の公爵令嬢と結婚して領地を貰い子供たちもでき幸せそうだ。

私は気ままな公爵という立場で図書館に籠もっていた。一応代表だよ」


「殺されかけたのですか?」


「皆同じ正妃の子供なのに傀儡にして操ろうと考える馬鹿がいてね、狙われたんだ。皆毒殺されそうになったことはあるし、暗殺者もやって来たこともあるよ。少し大きくなると性的に襲われそうになったこともある。子供ができれば何とでもなると思ったんだろうね。出来たとしても後継には認められないのに。議会の承認がいるし、王族の婚姻は花嫁の純潔が大切なんだ。托卵を防ぐために。

勿論近衛が守ってくれたけど。怖いよね。すっかり王族が嫌になって一番に逃げた。兄上達は強かった。戦ってはね返したんだ」



「王太子殿下も大変だったのでしょうか?」


「マリア様のセレンフォード家が勢力を付けていたから逆らう貴族はいなかった。勢力は分散させたほうが良いんだけど」


「第二王子殿下がいらっしゃってノア様も安心ですね」


「兄上の甥や姪もいるからね。余程のことがないと玉座なんて巡ってこないよ。ごめんね暗い話ばかりで」


「いいえ、私なんかより大変な人生を歩まれてきたんだと思うと頭が下がります」


「幸せそうに見える人も実は大変なことはあるって話なだけだよ。僕は女性が苦手というか怖かった。でもミルフィーヌに会ってから考えが変わった。戦ってきたのは君もなんだなってこの前思ったよ。

こんな細い身体で魔法は使えるし語学も堪能だし嫌がらせも跳ね返してきたんだよね。これからは僕が君を守りたい。僕と結婚してくれませんか?

一生裏切らないし愛すると誓うよ。嫌なら側においてくれるだけでいい。何もしないくてもずっと君が好きになってくれるまで待つよ。幾つになろうとも」



「ノア様、私は人が平気で裏切るのを見てしまいました。だから怖いのです。元婚約者も最初は完璧貴公子なんて呼ばれていました。私に対する態度も言うことがないくらいでした。なのに初恋の人が見つかったら内緒で会って裏切っていたんです。三年間です。信じられませんでした。平気で婚約を破棄してほしいと言いに来たんです。向こうから望まれた婚約だったのにです。愛情ではなかったかもしれませんが情は育っていたと思っていたんです」


忘れていたはずの胸の痛みが何故か襲ってきた。



「結婚するまでに分かって良かったんじゃないかな。そんな奴はどうせいつか浮気をする。それにそのおかげで僕は君に会えた。もう僕のことだけ考えて。君が外国を回りたかったら外交官になっても良い。夫人同伴なんて素敵じゃないか。それに結婚すると変な輩が近づいて来なくなるよ。かなり鬱陶しいんだろう?」


「はい、鬱陶しくて仕方がなかったです。立場だけ見て寄ってくるんです、好きでもないくせに」


「私も立場を隠したら虫が来なくなって良かったよ。でもこの間陛下に結婚したい人ができたとお話ししたら喜んでもらった。ミルフィーヌと結婚したら堂々と立場を明らかにしても虫が来なくなるよ」


「そうでしょうか、ノア様は素敵な方です。あふれ出る高貴なオーラが出ていますし、かなりのイケメンだと思います。眼鏡は目が悪くかけているのですか?」


「これは変装用で野暮ったく見せているんだ。伊達メガネだよ」


「外してもらっても良いですか?」


野暮ったい眼鏡を外すと整いすぎた美人が出てきた。鼻筋は高く目は大きく肌もきめ細やかで透き通っている。好みど真ん中だった。胸を射抜かれた気がした。



「私の前だけ眼鏡無しでそれ以外は変装を続けてください。取られそうで嫌です」


「気に入ってくれたの?この顔が役に立って良かったよ。結婚をしてくれるんだね」


「はい、裏切られたら死にます。もう立ち直れる気がしません」


「嬉しい。こんなに嬉しいことがあるんだね。愛しているよ。僕こそ君を隠してしまいたい。明日にでも伯爵に会いに行きたい」


生まれて初めて男の人に抱きしめられて、こんなに幸せな気持ちになるなんて思ってもいなかったミルフィーヌだった。




ミルフィーヌちゃん幸せになれそうです。きっとなります。ノア様も良かった。

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