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読んでいただきありがとうございます

 それなのに二日後には婚約の申し込みが侯爵家から来たのだった。

バルモア伯爵は幼い娘に聞いた。

「お茶会でご子息と会ったのかい?」


「いいえ、お父様。お菓子を食べていたら女の子のお友達が出来ただけよ。とっても可愛い令嬢だったわ。セレンフォード公爵令嬢よ、話しやすかったわ。ご令息には会っていないわ。令嬢達に囲まれて見ることさえ出来なかったの。あの中に近づく勇気は私にはなかったわ」



伯爵家としては納得がいかなかったが、格上ということもあり取り敢えず顔合わせだけでもということになった。


 それは二週間後になった。侯爵家は伯爵家の倍はある白亜の豪邸だった。城と言っても過言ではない。レイモンドは白銀の髪を一つに結んだ翠の瞳のとても綺麗な男の子だった。

侯爵ががっちりした体格だったので夫人に似たのだろう。

十歳で中性的な風貌をしていた。女の子のドレスを着たら似合うなと失礼にも思ってしまった。

なんとなくマリア様に似てると思った。



両方の親が話している間に子供同士で庭を散歩してくるように言われた。

「ミルフィーヌ嬢庭に行こうか」


「はい、よろしくお願いします」


「手を」


歩幅も合わせてくれ歩きやすい。十歳でもエスコートが上手なのだなとミルフィーヌは関心してしまった。


「はじめまして。婚約の話、急で驚いているよね」


「はじめまして、ヘインズ侯爵令息様、顔も拝見していないのにどうしてだろうというのが本音です」


「君と公爵令嬢が楽しそうにお茶をしてたからだよ。というか僕の顔誰かに似てない?」


「マリア様に似てるなと最初に思いました」


「僕たち従兄妹なんだ。君のことはマリアから聞いた。とっても可愛い子だって。それで申し込みをしたんだ」


「それはマリア様と気があったら私でなくても良かったということですよね」


「怒ってる?でもあんなに媚びてくる女の子たちの中からなんて決められないよ、怖くて」


「そうかも知れませんね、私もあの中にいるご令息って凄いなと思ってましたもの」


「それはありがとう」


「婚約者ってマリア様ではいけなかったんですか?」


「マリアは妹としか思っていないし、発表されていないけど第一王子殿下の婚約者なんだ。秘密だよ」


「はい、国家機密ですね」


「そうだよ。難しい言葉をよく知っているね」


「知っている単語を使ってみたい年頃なんです」


「ミルフィーヌ嬢といると楽しいな。君の父上は外交官だよね、君も外国語は得意なの?」


「今のところ三ヶ国語しか話せません。父のように十ヶ国語を話せるようになるのが目標です」


「僕も頑張るよ、一緒に勉強しよう」


「ヘインズ侯爵令息様は二つも上ではありませんか。レベルが違います」


「レイモンドでいいよ。家庭教師に教えてもらっているんだ。そんなに変わらないと思うけど」


「違うと思います。これからは毎月お茶会をするんですよね」


「毎週でも良いよ。お互いの屋敷を交代で。たまには街へ出ても良いな。カフェにも行こうよ。ぶらぶら歩きも良いね。もちろん護衛付きだけど」


「ちょっと大人みたいで楽しみです。でもマリア様ともお茶会をする約束をしているんです」


「たまには譲るよ、怒らせると恐いんだ」


「そうですか、とっても可愛い人ですけど」


「あっ、ご両親がお呼びだよ。もう帰る時間かな。お茶を飲まずに話ばかりしてたね。お茶を飲んで欲しいな、お菓子も沢山用意したんだ。僕から頼んでみるね」


「ミルフィーヌそろそろ失礼しましょう」


「伯爵夫人、ついお喋りに夢中でお茶を飲んでいただいていないんです。一杯だけよろしいでしょうか。お菓子も沢山用意させましたので」


「ではよろしくお願いします。そんなにお話することがあったの?ミルフィーヌ」


「マリア様とお話してる時みたいに楽しかったですわ、お母様」





子供の頃はちょっと背伸びをしたデートが楽しかった。街歩きで玩具の様な髪飾りや指環を買ってもらうのも嬉しかった。カフェに入ってパンケーキを食べた時もわくわくした。多分あれが初恋だった。

最初から綺麗な人だったけど成長するとカッコよくなって、知らない女の子から意地悪をされたり虐められたりした。


「どうして貴女みたいな人が彼の傍にいるの?釣り合わないわ。身の程を知りなさい」とか泥水を教室の上の方からかけられた。植木鉢が落ちてきたこともある。


水は清浄魔法で綺麗にしたし、植木鉢の件は流石に傷害事件なので学院に訴えた。警備は厳重になったが犯人は捕まらなかった。レイモンドのファンだろうけど悪質だ。

レイモンドは「僕のせいだ」って言って守ろうとしてくれたけど、いるところでは起こらないので、防御魔法の勉強を頑張ることにした。


マリア様も一緒にいるようにして、公爵家が後ろにいると知らしめてくださったけど、王宮に行かれていることが多く虐めは止むことはなかった。


レイモンドが先に卒業したら虐めがぐっと減った。

二人でいるのを見ると苛つくってことかなと考えたけど魔法の勉強は頑張って、自分の周りにバリアーを張れるようになった。


その頃から浮気してたのね。黒いものが自分の中に溜まっていくような気がした。

早く破棄してくれていたらあんなに嫌な思いをしなくて済んだのに。

想い人がいるのに知らない顔して婚約してたんだ。気持ちが抑えきれなくなったらあっさり捨てられた。私って何だったの?恋人を守る為の生贄?

もやもやとした気持ちは行き場をなくしていた。




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