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裏切りはいらない  作者: もも


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読んでいただきありがとうございます

誤字報告ありがとうございます!


 生活が普通に戻った。王太子妃様付き侍女の生活が普通ならだけど。

お二人の寝室の前に立っている近衛騎士に挨拶をしてノックをし朝の挨拶をした後、殿下にはご自分の部屋に戻ってもらい、マリア様の朝の支度を始めた。


窓を開け空気の入れ替えから始める。お二人の甘い空気にはまだまだ慣れない。

「湯浴みにいたしましょう」


「またリラクゼーションマッサージが受けたいわ」


「殿下がお待ちですので時間の空いた時にいたしますね」


「結婚って幸せだけど疲れるものなのね」


「わたくし未婚で乙女ですので既婚者の方に言ってくださいませ」


「そうだったわ、ごめんなさい」


「幸せオーラで充分お綺麗ですよ」


「体力が、ね」


「上級ポーションを買ってまいります。というか殿下に言われたら用意されるかと思いますが」


「それははしたないというか、これ以上は困るというか」

赤くなったマリア様がもごもごと口に出された。


「なるほど、わかりました。私の方で買って参ります」



王太子ご夫妻の仲が良いことは昔から知れ渡っていたが、結婚されてそれ以上になり宮殿は幸せムードに包まれていた。











 ミルフィーヌはマリア様から図書館に行って異国の本を借りてくるよう頼まれた。結婚式の時に来られていた遠くのメカード国の言葉をもっと理解したいと言われたのだ。


「ついでに読みたい本があれば借りて良いわよ、暫く本とご無沙汰してるでしょう。ゆっくりで良いから気をつけて行ってきてね」


「ありがとうございます。行ってきます」



通訳を通すより意思の疎通が上手くいくと思うので、マリア様が勉強をされるのは賛成だった。ミルフィーヌは足取りも軽く久しぶりの図書館に向かった。



王立図書館は学生の時以来久しぶりだった。相変わらず書物の匂いがしてミルフィーヌは落ち着けるような気がした。

メカード王国の本は少ないだろうと思う。隣国の大使館には十冊くらいはあり何でも読みたいミルフィーヌは簡単な絵本から始めたのだ。大使館員の中に話せる人がいて少しずつ会話を教えてくれた。耳から覚えると早かった。帰国してから一年も経っていないのにかなり前のように感じてしまう。



自分で探していても時間がかかりそうなので、司書の人に聞くことにした。カウンターに座っていたのは黒い髪に眼鏡の男性だった。若い人だ、二十代前半かしらと人間観察をするのが侍女になってからの癖だった。

一瞬で顔を覚えるのも得意になった。

知らない人間を王太子殿下夫妻に近づけるわけにはいかないからだ。


「あの、メカード王国の本は何処にありますでしょうか?」


「ああ、あの国の本は少なくて中々見つけにくいよね。こっちだよ」


司書さんが案内してくれたのは大きな図書館のほんの隅にある一角だった。


「三冊しかないのですね」


「うん、読みたい人がいないと買ってもらえないからね」


「これをお借りしますね」


「重いよ、一冊ずつにしたら?」


持ってみると確かに重く一冊が分厚かった。これは一冊で充分なのではと思ったミルフィーヌは中を読んで簡単な内容の物を借りることにした。


「メカード語が読めるんだ。すごいね君」


「昔から言葉を覚えるのが得意なんです」


「何カ国語くらい読めるの?もしかして会話も出来たりするの?」


「十カ国語くらいでしょうか。これ秘密でお願いします。今仕事がとても忙しいのでこれ以上増えるとダウンしそうなのです」


「分かった、内緒にしよう。でも所属は王太子妃殿下付き侍女というところかな」


「ありがとうございます。その通りです。私が読みたい本も見て良いと言われましたのでもう少しいさせてくださいませ」


「その本は預かっておくからどうぞごゆっくり」


ミルフィーヌはせっかくマリア様が作ってくださった時間を有効に活用しようと思ったが、疲労が溜まっているのか文字が頭に入って来なかった。

これは帰ってからリリにマッサージを頼まないとと思った。




ミルフィーヌのいない間リリは掃除を済ませると頻繁にリラクゼーションサロンに顔を出していた。

ララがミルフィーヌ様に会えないと拗ねるからだった。双子の特権でリリとララが交代することもあるのにだ。


相変わらず店舗は繁盛していてミルフィーヌ様に安心してもらっている。







 伯爵家でミルフィーヌの誕生会が催された。十九歳のパーティーは本人が忙し過ぎて縮小され家族と使用人に祝ってもらうことになった。

本人としてはそれで充分嬉しいのでご機嫌である。広間のテーブルご馳走が並べられ真ん中に大きな苺のケーキが鎮座していた。父からはダイヤモンドのネックレスが母からはダイヤのピアスがクリスからは紫水晶のブローチが贈られた。

使用人達からは一本ずつのフリージアの花が贈られ大きな花束が出来上がっていた。


今年も嬉しくて泣いてしまったミルフィーヌだった。





※※※



何回か通ううちに司書さんとは顔なじみになった。

「ミルフィーヌ嬢か、ぼくはノアっていうんだ、よろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします」


「硬いけどまあいいや。どんな本が好きなの?」


「歴史書です。これから古代書も読んでみたいんです。人と変わっているのであまり知られたくないのですが」


「好みはそれぞれだから、自分の好きなものを読めば良いんじゃないかな」


「そうですね、ノア様はどんな物がお好きなのですか」


「統計学とか地図かな。統計学は過去から未来まで予想が可能だし、地図は夢があるよね。知らない国が沢山あって楽しい」


「私たち個性的ですね」


ミルフィーヌとノアは微笑みあった。









 ノアは初めてミルフィーヌを見た時レイモンドに婚約破棄をされた令嬢か、気の毒にと同情していた。


しかし話している内に瞳に陰りがないことに気がついた。もう吹っ切れたのかもしれない。王太子妃殿下の侍女の仕事が楽しいのだろう。

十カ国語が話せるなんて凄すぎる。得意みたいなんですなんて謙遜していたけど天才なんだろう。きっと殿下は手放さないだろう。



淡々と過ぎていくだけだった毎日が楽しくなっていた。ミルフィーヌのことが気になりはじめたノアはレイモンドの身辺を調査することにした。



婚約破棄までした相手はレイモンドが廃嫡されて私財が無くなったとみると行方をくらましていた。「馬鹿なやつだ」とノアは呟いた。

その後の女の行方は分からなかった。母親は何処かで良い暮らしをしているに違いないと思っているようだと報告を受けた。



ミルフィーヌは伯爵令嬢であり大使令嬢だった。王都にリラクゼーションサロンまで経営していた。

ますます興味が湧いた。



ノアは高貴な立場と見目の良さで令嬢から熱い視線と攻撃に嫌気が差し図書館に籠もっていたが、目覚める時が来たかもしれないと自覚をした。










遅くなりましたがヒーローがやっと登場しました。スパダリです。

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