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裏切りはいらない  作者: もも


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読んでいただきありがとうございます

 バルモア大使はノルマン商会に圧力を掛けることにした。トレイルでは大使館への接近を禁止、取引を止めた。各大使館もサウス王国の大使館が取引を停止した相手を近づけるのは危険と判断し立ち入りを禁止した。

お家乗っ取りの疑いありと母国へ報告し入国も禁止した。



噂はトレイル王国の貴族の間をあっという間に駆け巡った。

使用人の間でノルマン商会のお家乗っ取り疑惑が面白可笑しく噂されたからである。そういえば女の子を連れて商売に来ていたと奥方達が思い出したことも噂に拍車をかけた。



商人の子だと気にかけていなかったけど、そういう目的があったのなら頷けないでもない。普通子連れで商売には来ないのだ。粗相をして高価なものを壊すかもしれないのだから。今頃になって何も起きなかったことにほっとしている貴族家が沢山あったことを流石にバルモア大使も把握していなかった。



大口だった大使館に出入りを止められ、主だった貴族家からも出入りを禁止されたノルマン商会のリチャードは頭を抱えた。

このままでは潰れる。まさか自分の義娘が起こした結果だとは思わず大きな負債を前に途方に暮れた。

自業自得なのだけれど。



結婚した妻は平民同様の男爵令嬢だった。勤め先の身体の弱い坊っちゃんの面倒をみるために子連れで田舎で働いていた。名前だけでも男爵令嬢なら商売の役に立つのではないかと考えて自分の国に連れて帰って来た。


愛情が無かった訳では無いが打算の方が大きかった。平民では出入りできない貴族家に入れるようになったのだから。

リチャードは商売のためにはお金をかけたが、家族になった二人には贅沢はさせなかった。


普通の洋服と普通の食べ物を買えるお金を渡した。妻からしたら今まで食べていた物や着ていた服の方がましだっただろう。

平民と貴族の普通が違うことにリチャードは気づかなかった。

家も家族三人で丁度いい大きさだと思っていた。優良物件を奮発して買ったのだから。


しかし妻は侯爵家に勤めていたし男爵令嬢だったのだ。三年経ち外国に商売に行っている間に二人とも逃げ出していた。


行方を捜したのは最初の一年だけだった。国内にはいなかった。

妻から離婚届が送られてきたのでサインをして送り返した。国に帰っていた。

そこから他人になった。義娘とは縁組の手続きもしていなかったので他人のままだった。

母国で国立学院に入ったと噂で聞いた。



あっさりと結婚生活は終わった。


貴族との繋がりもできたし仕事が生きがいだと思っていたのに、何処からか圧がかかってお家乗っ取り疑惑の噂が広がっていた。


子供のアイリスを連れて商売に行っていた時のことが今頃足を引っ張るとはリチャードには予想もつかないことだった。確かに親しくなってくれたら良いと思って連れて行っていたが、乗っ取ろうとまでは考えていなかった。

浅慮だった。


平民と貴族の違いはリチャードでも分かっていたのだ。手の届かない方々だと。余計なことをしなければ今頃商会は順調に大きくなっていたはずだった。



夜逃げしよう、命までは取られまい、と思っていた男は誰を敵に回したのか死ぬ間際になっても知ることはなかった。






伯爵の元にノルマン商会が潰れたと連絡が入ったのは命令を下してから一週間も経たないうちだった。


伯爵は満足そうに頷いた。



✠✠✠





 ミルフィーヌが母国で開店した「リラクゼーションサロン」は第一王子殿下の婚約者で公爵令嬢マリア様が訪れたということもあり人気を博していた。予約は三カ月先まで埋まっていた。


伯爵夫人のキャロラインも多くのお茶会に呼ばれ忙しくしていた。


このままマリア様に取り込まれる予感がする伯爵だったが、娘の幸せが父としての幸せだ。何もいうことはない。リリとララは連れていけるのだろうか。ビルは無理だろうな。クリスの護衛にするかと少し先の未来を考える伯爵だった。




 予想通り王宮に部屋を与えられ王太子妃教育が厳しくなったマリア様はミルフィーヌに侍女として側にいることを求めた。


「リラクゼーションサロン」の代表は伯爵夫人だがそれは建前だ。週に二日休みを入れて帳簿をみたり店の様子を見たりしたいと要求してやっと侍女になることを受け入れた。

他にも公爵家から連れてきた侍女と交代で勤務することになった。

リリがミルフィーヌの侍女として一緒に城に行き、ララが店長を任された。

計算が得意だったからだが、ララは不満たらたらだった。





大使として母国に帰り王宮に上がることもあった伯爵は、ミルフィーヌの休憩時間に侍女専用の応接室で話をした。


「やはりマリア様に取り込まれたな。身体は大丈夫なのか、疲れてはいないか?これはお土産のチョコレートだ。マリア様の分とミルフィーヌの分と他の皆様の分だ」


「マリア様と一緒ですのね。お父様ありがとう。皆様にはお茶の時間に食べていただくわ」


「毒の検査があるな」


「そうなの、大変ですわ。何処で入れられるか油断がならないから気が抜けないのです」


「きちんと検査をしてもらってくれ。毒の耐性はまだまだだったな。もっとつけておけばよかったね」


「今はいい解毒剤も沢山あるので、心配しないでくださいな」


「一番危険な職場かもしれないな」


「これでも身体強化の魔法が使えますのよ、匂いでわかるように特訓しますわ」


「そうだった、いらぬ苦労をさせる」


「そういうのなしですわ。良い方に考えないと」


「笑っていてくれたら良いと思っていたのだが」


「お店も上手くいっていますし親友のお役に立てて幸せですのよ」


そう言って笑う娘がやはり心配になってしまう父だった。

大使(公)と伯爵(私)はその都度の立場の違いで使い分けています。

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