第三十二話 マジで怖い、入ろう共に
風呂場に戻ると、シェダルが抱き着いてきた。
だから胸!
「ありがとう……ありがとう……」
「お、おう……」
「お前は男の中の男だな! 褒めてやる!」
「そんな大袈裟な……」
やばい、これ以上はやばい、主に俺の下半身が。
さっさと戻って、この感情を「解放」しよう、鍵スキルだけに。
「じゃ、じゃあ俺戻るからな!」
目を瞑って戻ろうとした瞬間、俺の手首に縄で縛られたような力が働く。
「おい! 一人にするんじゃない! またアレが現れたらどうするつもりだ!」
「何言ってんだ! 放せよ!」
ゆっくりと自分の手を見ると、白い手が俺を掴んで離さない。
「風呂ぐらい一人で入れよ! お前いくつだよ!」
「この際、今の私の年齢は5歳でも0歳でもいい!」
「はぁ!?」
「とにかく、今日だけでいいから、一緒に入ってくれ!」
やばい、顔がめちゃくちゃ熱い。
女の子と風呂とか、絶対やばい。
叔父さんが「変なことしないでね」って言ってたけど、これはやばい。
「なぁ……頼む……」
「ちょ、お前……」
シェダルは涙を浮かべる。
お前そこまでナメクジに恐怖心覚えてるのかよ!? 何かトラウマでもあったのかな……
さっきまでのシェダルとは明らかに違う態度に、俺は先ほどまで抱いていた感情が薄れていくのが分かった。
「……わかったよ! 今日だけな!」
「ありがとう! 昇!」
シェダルが俺に抱き着いてきた、だから胸!
「さ、先入ってろ……」
「うむ!」
シェダルは浴室に入っていった。
はぁ……緊張する、ダンジョンの時や飯の時のやつとは違う感じだ。