第三十話 父の遺書、止まる足音
「ごちそうさまー!」
「とても美味しかったです」
「そうかい? 口に合って良かったよ!」
ふぅー……もう何も食べられん。
流石にハードすぎるわこのラインナップは……
「叔父さん、食器洗って、仕事してるからね! あ、お風呂出来てるから入っていいよ! ごゆっくり」
なーにがごゆっくりだ。
叔父さんは食器を重ね、台所へ持って行った。
「……シェダル、先に風呂入っていいよ」
「いいのか? 卓郎さんのニュアンスから一緒に入れって……」
「乗らなくていいから」
「そうかぁ? 別に私は構わんのだが」
「……」
こいつ羞恥心ってのがないのか? 偏見かもしれないが、ウトピアの連中はこんな奴ばっかりなのか?
「俺ちょっと苦しいから……部屋戻ってる……」
「おう」
階段を上がり、シェダルは自分の部屋に入った。
俺も戻ろう……
◇
「はぁー……食い過ぎた……」
「食べた後にすぐ寝ると牛になるぞ!」と言うが、今の俺には無理だ。
実際、食べた後に横になると消化によくなるとか言うらしい……と言っても、血糖値上がるからどの道良くないんじゃないか? という意見もあるみたいだが。
『なんか昇くん、以前よりも明るくなったんじゃない?』
叔父さん……あんなこと言ってたけど、そうか?
そういえば叔父さん、いつもテンション高いけど、叔父さんでも、落ち込んだりすることってあるのかな?
俺がここ最近落ち込んだことといえば......
『君のお父さんの遺書だ』
父さんの遺書を受け取った時だ。
父さんが自殺した数日後に渡された遺書、最初は意味が分からなかった。
『スキル社会が到来し、議員スキルを持つ者のみが議員になる時代が来る、私が再び政界に足を踏み入れることはほぼ不可能だと判断し、死を決断する』
その意味が分かったのは数日後、テレビで、スキル社会導入が可決された時だった。
そして俺は鍵スキルになり、みんなから馬鹿にされ、徐々に暗くなった……のかもしれない。
叔父さんのスキルってなんだったっけ? 覚えてないや。
変なスキルなんか押し付けられて、嫌じゃないのかな?
そんな事を考えていると突然、ドシドシと階段を駆け上がる音が聞こえ、そのままその重い足音が、俺の部屋の前で止まる。