34・どんどん強くなる奴も面倒くさくて嫌だな
結局アイザーの子孫の勇者くんと戦う事になってしまった。
で、戦ってみて感想は、急激に強くなってるってこと。昨日のディブロとの戦いのせいかも知れない。
まあ《協力》使えば納得してくれるっていうし、さっさと終わらせて帰りましょ。
『トラさん、昨日オーガ達から借りた力って2割だっけ、3割だっけ?』
『忘れたんですか、2割ですけど』
『じゃあさ、昨日の今日で悪いんだけどさ、また力を2割貸してね』
『いいですよ、お使いください』
『・・・ごめん、やっぱり3割にするけどいい?』
『構いまへんけど、昨日より多いですよ』
『あ〜うん、なんかね、勇者くんが急激に強くなっていってるから、それくらいの方がいいと思うんだよね』
『わかりました。存分にお使いください』
僕はトラさん達オーガの力を集めて、勇者くんに向かって構えをとる。
「じゃあいくよ!」
「おう、いつでもいいぜ!」
僕は勇者くんへの懐に飛び込んで、右ストレートを放つ。・・・やっぱり反応してきた、昨日のお爺ちゃんみたいに寸止めとはいかないな、こりゃ。
ゴン
「ぐはっ」
「王太子!」
右拳が勇者くんの顔面を捉えた。お爺ちゃんが心配そうに叫んだけど浅い、勇者くんは頭を捻って威力を逃してる。
次は勇者くんの鳩尾に左拳を。
ドスン
「ぐふっ」
左拳に強化された腹筋と防御魔法の感触がある。お爺ちゃんより勇者くんの方が強くなっちゃってるね。
僕は身体を回転させながら、右の回し蹴りを顔面へ。
ガゴォン
「く、クソォ!」
勇者くんが聖剣を捨てて両腕でガードした。良い判断だと思うけど、それでも受け止めきれずに後ろに吹き飛ぶ。
ついにガードされた、覚醒してきてるかな? なら連打でいってみようか。
僕は勇者くんの後を追って踏み込む。
ガッ、ドン、ドゴン、ガシッ、ズドン、ガン、ガッ、ドス、ズン、ガッ
「ぐふっ、クソ、ぶっ、がはっ、コノ、げはぁ」
3回に1回はガードしてくる、勇者くんの闘気がどんどん上がってきた。もう少しスピード重視でいってみよう。
ドン、ガッ、ズン、ドスン、ガシッ、ガッ、ズドン、ガシッ、ドゴン、ガシッ
「がはぁ、チッ、ごふぅ、クソォ!」
ガードする回数が増えてきてる、スピードにも慣れ始めてるなぁ。
ズドオオォン
「げはぁぁ」
僕は右の前蹴りを、重力魔法で増した体重を押し付けるように放って、勇者くんを後ろに飛ばした。
『トラさん、6割まで上げるよ』
「凄いね勇者くん、随分強くなってるよ」
『了解です、ご存分に』
「ぜえ、はあ、く、クッソォ!」
『ゴザーク、コベン、ゴブリンとコボルト全員からも6割貸りるね』
「でももう次で終わりにするね」
『『どうぞ、お使いください』っす』
「ぜぇ、くそ、次で終わりだと」
「うん、だって飽きちゃったから」
これで覚醒するかな?
「あ、飽きた、俺様との戦いに飽きただと?」
「うん、飽きた」
更に闘気が上がってきたから、これで駄目押しかな。
「ああん、クソがぁ! 俺様を舐めるんじゃねぇ!」
おお! 勇者くんの闘気爆発! 完全に覚醒したな、こりゃ。
『みんなごめん、2割追加で、全員8割貸してね』
『存分に』
『承知』
『了解っす』
「いくよ、勇者くん!」
「こい! コノ野」
ビタッ
勇者くんの言葉が終わらないうちに、僕の拳は勇者くんの顔面スレスレで止まっている。僕の闘気と殺気をタップリと載せた拳だ。
勇者くんが目を見開いて、驚愕の表情を浮かべている。その表情には恐怖の感情も浮かんでいた。
お爺ちゃんと違うところは、その恐怖の中に喜悦が入り混じっているところだな。確かにディブロが気に入りそうな子だな、勇者くん。
「これか、これがペドランが恐怖を植え付けられた拳か」
「違うよ、お爺ちゃんの時よりもずっと力を使ってる」
「す、凄えな、お前ら化け物達は、こんな、こんなに凄え世界にいるのか!」
「勇者くん、いやごめん、ラオルースくんだったよね。君ももうその世界の住人にだよ、君はもう完全に覚醒したからね」
「ま、負けだ、いや、負けです。俺の完敗です。あ、ありがとうございました」
素直に負けを認めてくれたラオルースくんだけど、肩を落としてはいない。
その肩は感動に打ち震えている様ですらあった。
☆
「がはあぅ、クソが!」
ヤバイわね、あたしの今の力は300年前の力に8割方戻っているから、覚醒前の勇者如き簡単にあしらえると思っていたんだけど。
「光と闇、ミーに従え!」
またこれか!
あたしに向かって2つの光の塊が飛んでくる、後ろには2つの闇の穴が出現し、前から向かってくる光の塊をそれぞれが吸い寄せる。それにより、只でさえ速い光が加速し威力も格段に向上するのだ。
「ブラッディウォール!」
血液の壁を展開するが、あたしはこの攻撃を止めきれないでいる。
ジュジュアアァァ
「あがうっ」
血液の壁で光の威力を殺すものの止めきれずに通過する、通過する際に僅かに光を屈折させて、直撃は回避するが2つの光の塊があたしの両肩を焼きながら闇の穴に吸い込まれていった。
「どうです、ミーの魔法は。お姉さんには止められないみたいですね」
「どうも何も非常識ね、あんた自身の常識も疑いたくなるわ」
「酷いですお姉さん、ミーは常識人です」
「何が常識人よ、本来、光の速度は一定で、光も光の速度は超えられないのよ、それを加速させるとか意味がわからないわ」
「それにね、勇者が闇の魔法を使う、それも光の魔法と同時に使うとか聞いたことないわよ、詠唱の省略の仕方も何か変だし、あんた変人でしょ」
「益々酷いです。もう許さないです」
「大闇カモーン!」
あたしの足元に巨大な闇の穴が開く、普通ならこの穴に引き込まれるんだろうけど、あたしは闇と相性が良いので背中に蝙蝠の翼を広げるだけで浮いていられる。
「多光カモーン!」
「嘘でしょ!」
あたしの周囲に無数の小さな光が出現する。今までのパターンからして、あれが全部足元の穴に向かってくるはず。
「クソッ!」
あたしは血で蝙蝠の翼を強化して上空へと大急ぎで飛翔して逃げる。
ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュワァ
「熱っ、熱っっ!」
流石に全部は避けきれない。
上半身だけは避けたが、あたしの腰から下は穴だらけにされてしまった。
「ああ〜、空を飛ぶのはズルイです。降りてくるです」
「五月蝿いわね!」
ブワアアァァ!
あたしは両腕を振って大量の血液を振り撒く、血液の雨は血液の針となって降り注ぐ。
「光ドーーーム!」
非常識勇者が自身の周りを光の膜で覆う、一つ一つの威力が弱い血の針では突破出来ない。
「ブラッドランス!」
そこに血液の槍を打ち込んだ。
「闇穴カモーン!」
光の膜の外側に闇の穴が出現し、血槍はその穴へと吸い込まれた。
参った、あたしはこの非常識勇者とは徹底的に相性が悪い。
トンコが簡単に負けるとは思わないけど、多分、王女には勝てないだろう。早くコイツを倒して、トンコを助けに行きたいとこなんだけど、どうしたもんだろうか?
「そこまでだ【勇者】モルルーラ! 降伏しろ! さもないとエレン王女の命はないと思え!」
突然現れた男が大声を張り上げる。
着用している鎧武具の豪華さから見ても、位の高さが伺える。弱くはなさそうだが、その闘気、魔力量、筋肉のつき方は余りパッとしない男だ。
その男の隣に、球状の巨大な土の塊が浮いている。
何者だ、あの男?
格闘戦と魔法戦、対象的な2つの戦いです。
作者の書くキャラは格闘キャラが多いです。理由は魔法戦を書くのが苦手だから、でも最近、魔法戦を書くのも大分慣れてきました。これはこれで面白いと思えるようになりました。
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【作者からのお願いです】
読者様からの反応を何よりの励みとしています。
ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。
お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
この小説とリンクする作品となります。
↓
https://ncode.syosetu.com/n7763fx/
互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。
 




