33・諦めの悪い勇者って嫌だな
何だかなぁ、ディブロが不吉な事言うから、気になってしょうがないよ。
本当に何かあったら嫌だなぁ。
「それでさあ、君達は一体何の話しがあって来たのさ? ドルツランドの軍はもう撤退したんでしょ」
「俺様はなあ、このままじゃ帰れねえんだよ。ランスロードってのはテメエだろ、俺様と勝負しろや、この野郎」
はあぁ? 何言ってんだこの人?
何かディブロの奴はクスクス笑ってやがるし、こないだのお爺ちゃんは僕の顔見て小刻みに震えてるし、何なのかな、この状況?
今から2時間前に、ドルツランドの使者が来て、ドルツランド王国側からはアイザーの子孫の勇者くんと、こないだのお爺ちゃんの二人、ドワーフ王国側からは僕とディブロの二人での会談を開く事を条件にドルツランド軍は撤退すると伝えてきた。
何でドワーフ王国側が、僕とディブロの二人なのかが腑に落ちなかったけど、ドワーフ王国のユーロウ王に頼まれて承諾する事になった。
ドルツランド軍は約束を素早く履行して、サッサと撤退していった。ビックリする程にアッサリと。
その後やって来た勇者くんとお爺ちゃんだけど、何故か会談場所に指定されたのが、此処、ドワーフ城前の広大な平原。そして冒頭のようなアホな事を言い出す勇者くん。
全く、わけわからん奴らだ。
「君達はさあ、会談に来たんでしょ。勝負って何アホな事言ってんの。大体、勝負って何の勝負すんのさ」
「ああ、勝負って言やあ殺し合いに決まってんだろうが、馬鹿にしてんのか、テメエ」
「はあ? 嫌に決まってんでしょ、殺し合いなんて、面倒くさい」
「なに、め、面倒くさいだとお! 俺様は最強を目指してんだ、その俺様との勝負を面倒くさいだとお! 俺が負けて殺されたとしても文句は言わねえ、いいから黙って俺様と勝負しろや!」
何なのこの子、勝負、勝負って本物のアホなのかな?
「だから、嫌だって言ってるでしょ」
「お爺ちゃんはどう思ってんのさ。この勇者くんはアイザーの子孫で次の王様なんでしょ」
「じ、自分は正直、王太子が貴方に勝てるとは思えません。止めて欲しいと思っていますが、王太子は真っ直ぐなお方で、このままでは納得しないでしょう。じ、自分の仕事は貴方のトドメの一撃を王太子の身代わりに、こ、この身に受ける事だと思っています」
はあ? このお爺ちゃんも何アホな事を言ってんだろう。
「バカな事を言うな、ペドラン! 貴様の仕事は勝負の見届け人だ! 間違えるな!」
「し、しかしラオルース王太子よ、貴方は将来のドルツランドを背負って立つべきお方です。自分のこの老体がお役に立てるのであれば、それこそが自分の仕事です」
「ならん、ならんぞペドランよ。これはあくまで俺様の私闘だ! 貴様が命を張るなどと決してあってはならん事ぞ!」
なんなのこの熱血みたいな展開は?
いいから早く帰れよおまえら。
「やってやればいいだろうランスロード。それで納得すると言ってるのだ」
お前もニヤつきながら何を言い出すんだよディブロ。
「おお、やはり貴様はわかっているな悪魔野郎。俺様は貴様とやるまでは納得しないぞ、ランスロード」
これは、やるしかないかなぁ。
嫌だなぁ、面倒くさいなあ。
「殺し合いをしたくないなら、殺さなければ良いだけの話だ、ランスロード。貴様ならそれくらい出来るだろ」
「それは駄目だ悪魔野郎。俺が望むのはあくまで本気の殺し合いだ!」
「勘違いするな未熟な勇者よ、殺す価値のある相手かどうか決めるのは貴様ではない。それは相手が決める事だ」
「ぐっ、クソッ、確かに俺は貴様に手も足も出なかった。未熟だと認める。し、しかし、俺は、俺様は・・・」
「あ〜、もう、わかったよ。やればいいんだろ、やれば」
本当は嫌だけど。
「おお〜! 感謝するぞランスロード。本気の殺し合いをやろうではないか!」
「はいはい、わかったから。やるならサッサと始めようね」
勇者くんがグルリと首を一回りさせて、「フウー」と肺の中の空気を吐き出した。そして腰の聖剣カイザールを抜いて目を瞑る。
一度、大きく深呼吸してから聖剣を構えて目を見開いた。
僕も《亜空間収納》していた聖拳アローダインを取り出して両手に装着する。
ディブロとお爺ちゃんが下がり、場所を広く空けた。
「いつでもいいよ、勇者くん」
場の空気が一気に緊張の度合いを上げた。
「うりゃああぁぁ!」
勇者くんの気合いと共に、聖剣カイザールが焔を吹き上げる。カイザールの性能はわかっている。この状態のカイザールなら掠っただけで大火傷を負うだろうな。
勇者くんが踏み込んでくる、速いな。
僕の方も既に《思考加速》《身体強化》重力魔法の準備は整ってる。
ガキイイィン
勇者くんが上段から真っ直ぐにカイザールを振り下ろす。
僕はアローダインを装着した右拳でそれを受け止める。
普通の武具で、今のカイザールは受けられないが、僕のアローダインなら可能だ。
ズッシリとした重さが拳から伝わる。速さもあり、いい攻撃だ。
「だりゃああぁぁ!」
ガギイイィン
勇者くんがカイザールを水平に振る。
僕は左拳でそれを受ける。これも迷いのない良い攻撃だ。
「でりぃやああぁぁ!」
ガキ、ガッ、ガギン、ギリ、ゴッ、ガキン、カギィン
袈裟斬り、撫で斬り、斬り上げから三段突き、勇者くんが連続で繰り出す技を、僕が両拳で丁寧に受け続ける。一つ一つに見事に体重が乗っている。
カイザールの火力もアイザーが使っていた時よりも高いようだ。
何よりも驚いたのは勇者くんの成長だ。昨日、お爺ちゃんと戦いながら見た、ディブロとの戦いの時よりも格段に強くなっている。
チラッとディブロの方を見たら、勇者くんの成長を予測していたのだろう、ニヤリと嫌な微笑を僕に向けてきた。
相変わらずいやらしい奴だ。
「ぜい、はあ、く、クソを!」
「どうした? もう止める? 勇者くん」
「うるせえ、誰が止めるか、この野郎がぁ!」
ブワウウゥン、ドゴン
「うごおっ!」
勇者くんの攻撃を僕は初めて躱して、カウンターで右拳を勇者くんの鳩尾に埋め込んだ。
「ぐっ、クソっ、化け物だな、テメエも悪魔野郎もよ!」
「勇者くんも凄いよ。昨日見たディブロと戦ってた時より、今日の方が強くなってるよ」
「ケッ、ありがとうよ。確かに今の俺様じゃテメエに勝てそうにねぇな。しかしよ、あのペドランに恐怖を与えた程の攻撃を、俺様はまだ受けてねえ」
「ああ、最後のアレね。あの時はユニークスキルも使ってたからね」
「そいつをよぉ、俺様にも見せてくれね〜かな。ペドランの話じゃあそれも本気じゃないらしいが、俺じゃあテメエを本気にするのは無理そうだ」
「いいけどさ、それ見せたら諦めて帰ってくれるかな?」
「クソッ、悔しいがそれで納得してやるよ」
良かった。やっと帰ってくれる。
それじゃあ最後にもう一働きしようかな。
う〜ん、一応勇者なんで最初から重要なキャラなんだけど、ラオルースをここまで引っ張るつもりは無かったんだけどなぁ。
書いてるとドンドン気に入ってきちゃうんだよな、コイツ。
気が向いたらだけど、コイツ主役で、エピソードの一つでも書こうかな。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




