番外編-誕生日の出来事
「うーん、どうしよう」
僕、ことシズは呟いた。
今日はフィエンドは用事があるらしい。
エルフィンも、悲鳴を上げて助けを求めるオルウェルを連れて何処かに行ってしまった。
なんでも新しいプレイを思いついたとかで、オルウェルをエルフィンが堪能できるらしい。
なので部屋にはシズだけが取り残されていた。
「僕が一人になっちゃったし、どうしようかな」
今日は休日なのだけれど、フィエンドは用事があるらしい。
前は空いていて何処かに遊びに行こうという話になっていたはずなのだけれど、
「うん、その日は僕の誕生日だから、そんな日にフィンと一緒なんて幸せだね」
「……誕生日なのか?」
「うん、言っていなかったっけ」
「……シズ関連は一時期調べないようにしていたから誕生日……俺としたことが」
フィエンドが珍しく焦っているようだった。
別に僕はフィンと一緒に入られるだけで幸せだよと僕は、フィエンドに言ったのだけれど、その後急に用事ができてしまったのだ。
何の用事かも教えてもらえない。
「今のフィンは、僕達にとても近いから勝手に読めない……違う、普通は読めないし見えない。普通でいよう普通で」
きっとそうであれば皆と一緒に居て、“シズ”のままでいられる。
ここはずっと憧れの場所だった……ような気がする。
「うん、考えないようにしよう、普通普通」
そう僕は呟きながら部屋を出る。
フィンもいないし外を散歩してこようと思ったのだ。
そう思って歩いて行く先は初めてエルフィンにあった場所の先。
ここは木々が生い茂り、故郷を思い出す。
のどかで豊かな村で僕は生まれた。
違う、僕がいたからそこには精霊達が集まってきて、そして彼らは僕が大好きだから今もあそこに居てくれている。
またお話しようよと、風が囁いた気がしたけれど、
「うん、気のせい。僕は何も聞こえない普通の人間」
すると、まだ人間のふりが楽しいみたい、と笑い声が聞こえた。
悪意はない。
ただそのままを、精霊は伝えただけだ。
だから、きっとそうなのかもしれない、とは思うのだけれど。
「うん、振りでもなんでもいいから僕は人間でいたいんだ。まだ皆といたいから」
僕は人が大好きなのだ、昔からずっと。
その中で特に大好きな相手もいるけれど、その中で“特別”で、人でなくなってしまった人もいるけれど。
彼が彼でなくなったわけではないから、それでいい。
そう思いながら森を歩いて行くと、昔のことを思い出してしまう。
こっそり村に来ていたフィンの手を取り、森に走っていったのだ。
僕にとって庭のような場所は、フィンにとってはとても珍しいものであったらしい。
その時の笑顔が今でも忘れられない。
今が幸せは過去のあの出来事からずっと続いている。
だからきっとこれからも。
そう僕は思って機嫌よく歩いていると、その先にはベンチが一つある。
ぼんやりとこの光景を見ているのも楽しそうだなと思って僕はそこに座る。
僕の中で想起される過去の出来事は、とても心地が良い。
懐かしいフィンとの思い出に揺られていると、うとうととしてしまう。
少しだけ。
そう思って瞳を閉じるとすぐに意識は、大好きな深い闇へと沈んでいったのだった。
体を揺さぶられて僕は目を覚ます。
目の前には、心配そうに覗きこむフィエンドの顔が見える。
どうやら随分眠っていたらしい。
そこで安堵したようにフィエンドが、
「シズが消えたんじゃないかって思った」
「僕が消えるわけないよ? フィンがいるのに」
「俺がいるから?」
「うん。フィンが悲しむことはしないよ?」
「そうか」
嬉しそうにフィンが笑うのを見て僕も微笑む。
そしてフィエンドが差し伸べてきた手を握る僕はあることに気づく。
「昔は僕に手を差し伸べていたのに」
「今は俺がシズの手を引いていけるのか」
フィエンドがいつも以上に嬉しそうに笑う。
それが僕には少し悔しい。
けれど手を引かれるのは嬉しくて僕は黙ってしまう。
そして僕が部屋に戻るとそこで、
「「「お誕生日おめでとう!」」」
気づけば僕達の部屋がすごいことになっていて大きなケーキが置かれている。
何でも今日、僕が誕生日だったのを知ったフィエンドがお祝いの準備をしていたらしい。
オルウェルとエルフィンも組んでいたらしい。
ちなみにそれを知ったのが今日だったらしいオルウェルだが、
「はあ、驚かされた。また新プレイかと」
「それは別の機会です」
エルフィンが楽しそうにオルウェルを見て、オルウェルが蒼白になっていたのはいいとして。
その日は、大好きなフィエンドや友人達、途中ウィル叔父さん達も乱入して大騒ぎな僕の誕生会は、騒がしく楽しくすぎていったのだった。
[おしまい]




