番外編 レプリカヒーローのラブソング①
事務所の社長の友達の音楽プロデューサー主催の飲み会。社長命令で仕方なく参加したが想像通りたまらないものだった。「リュウセイくぅん♡」女の甘ったるい匂いが鼻を刺激する。内心うんざりして視線を彷徨わせると、この飲み会に似つかわしくない少女と目があった。彼女の前にはソフトドリンクが置いてあり、顔もつまらなそうなうんざりした顔をしていた。あの子もきっと何か事情があって来たのだろうそう考えながら目線を逸らす。
「明日も仕事あるからそろそろ帰るね」
しばらくしてそう声をかけ店を出ると少し前から
「キモいんだよジジイ!!!!」
続いて缶が転がる音がした。俺はなんだか面白そうだと思い、その声に近づいた。
「あんな時間無駄にするならもっと歌とギターの練習したいし作曲の勉強したい」
そこにはさっき目があった少女が悪態をつきながら歩いていた。だけど強い思いが込められた呟くようなその一言に気づいたら「俺が教えてやろーか?」と話しかけていた。
「あんたさっきの、、」
少女が怪訝な顔をして振り返る。その顔はさっきまで擦り寄って来た女とは違って俺に対する警戒が混じっていた。
「一応そこそこ有名人なはずなんだけどな、、
俺、リュウセイ。俺が教えてやろうか??音楽。」
勝手にもてはやされ媚び売られるのはうんざりする、だから全く興味を示されずむしろお前は誰だと言うような雰囲気を出す姿に少しの悔しさと興味を持ち提案すると「ふーん。あんた自信満々じゃんそんな上手なんだ。じゃー教えてよ。そしてあたしをメジャーデビューさせてみせろし。」という生意気な返事が返って来た。だけど俺に媚びへつらうわけでも持て囃すわけでもないその態度は心地良かった。軽く笑って答える。
「勝ち気だな。でも気に入った家来いよ。ギターの練習から曲作りまでみてやるよ。」
自分から出た言葉はいつもより明るく聞こえた。静かな高級住宅地に立つ資産家の親から譲り受けたタワーマンション。最上階の広いだけの部屋に入る。彼女がビビットピンクのギターを取り出して、感情を叩きつけるように歌い始めた瞬間、俺のふざけた気持ちは無くなった。技術も指使いもめちゃくちゃ。だけどその姿は昔まだライブハウスで地元の友達とバンドを組んでいた時ーー今のメジャーデビューし型にハマってしまう前の自分ーーを思い出させられた。思わず自分のギターを繋ぎ、彼女のギターに音を合わせた。だけど、少女の顔はどこか納得いかないような顔だった。
「ちょっとストップ」
「……は? なんで? 音外してないしコードもミスってないじゃん」
「お前もなんかしっくり来てなさそうじゃん。お前は指も動いてるし声だって出てる。だけど感情的になりすぎ。ずっと殴りつけられたら観客もくどくなる。1番叫びたいところで全力で殴りつけろ」
まるで自分が一流のミュージシャンかのようにアドバイスをする。自分が今どうなりたいのか何がしたいのかもわからないのに……
アドバイス通りに息を潜めて、静寂からサビで感情を爆発された彼女の歌声を聞いた時ゾッとした。この女なら自分を本気にさせてくれるかもしれない。いつか自分はあの女に喰われるかもしれないと。
「そう! それだよ。お前飲み込みいいじゃん。今度は一緒にやるぞ!」
楽しくて仕方がなくて気づけば朝になってきた。声がガラガラになっていた。
言葉なんていらなかった。ただ純粋に音で殴り合い、笑い合った。
「お前ほんと最高。昔思い出したわ。お前名前は??」
「カレン」
じゃらじゃらと音を鳴らしながらギターケースを背負い、扉を開けるカレンを見送る。
あ、連絡先聞くの忘れた、、、




