第14話 順番を待つ囚人たち ――人体実験の「入口」――
人体実験のため、満洲から強制連行されてきた中国人10名。そして、李成鎮一家3名を含む 朝鮮人13名。
計23名の囚人が、第101部隊の地下施設に収容されたのは、5月のことだった。
それから、半年。
中国人3名、朝鮮人5名、計8名が、居住区画から連れ出され、二度と戻ることはなかった。
満洲の施設にいた頃から、同じ光景は、繰り返されていた。
だから囚人たちは、誰も口には出さなかったが、心の奥では、はっきりと理解していた。
「次は、自分だ。」 生き延びる望みは、もはや抱かれていなかった。
彼らの日々は、死刑執行を待つ囚人のそれと、何ひとつ変わらなかった。
脱走と制裁
当然ながら、脱走を試みる者もいた。
だが、古舘村の村長や村三役には、軍から、次の命令が下っていた。
「囚人を見つけたら、必ず引き渡せ」、「抵抗した場合は、痛めつけても構わぬ」
囚人服は、目立つ萌黄色。山里の村で、それは隠しようがなかった。
さらに囚人たちは、「日本に敵対する危険人物」として、村人たちに刷り込まれていた。
男は、集団で殴打され、女は、さらに惨い目に遭うこともあった。
ただ一人の違和感
この状況に、一人だけ、心を痛めていた将校がいた。
彼は、命令に背くこともできず、だが、目を背けることもできなかった。
やがて――彼は、ある「提案」を口にすることになる。
次回 「斎藤中尉の提案」
それは、人道的配慮でも、反抗でもなかった。
だがその判断は、後に――取り返しのつかない“致命的な選択”として
歴史に刻まれることになる。




