第7話 監視の目、都市伝説と化す勇者
翌日の昼。
眠りにつこうとしていた俺のスマホが震えた。
画面を覗くと、ニュースサイトの見出しが目に飛び込んでくる。
「深夜の繁華街で謎の光――怪しい宗教儀式か?」
「影の巨人を見たという証言が相次ぐ」
「ネットで拡散中:“深夜勇者”の正体は?」
昨夜の戦いが、すでに世間の噂になっていた。
動画共有サイトには、光と影がぶつかり合う瞬間を捉えたブレブレの映像がアップされている。
コメント欄には「ガチ?」「特撮の撮影だろ」「新手のVTuber?」と混乱した声が並んでいた。
夜。
コンビニの控室に入ると、佐久間さんが新聞を広げていた。
「……おい新人。お前の記事、もう出てるぞ」
「俺の記事じゃなくて、ただの都市伝説です」
「いや、こんなに拡散してたら都市伝説で済まねぇだろ」
隣では美咲がスマホを操作していた。
「トレンド一位、“深夜勇者”。アイコンは昨日の動画から切り抜かれたあなたの横顔」
「……やめてくれ」
胸ポケットの破片が熱を放つ。
影法師だけでなく、今度は人々の視線が俺を縛ろうとしていた。
そのとき、自動ドアが開いた。
入ってきたのは制服姿の二人組――警察官だった。
「昨日の件で、少しお話を伺いたい」
低い声。店内の空気が凍る。
佐久間さんがすぐに前に出て、へらっと笑った。
「いやぁ、昨日は停電でしてね。おかしな映像が映ったのは多分それかと」
警官の一人が眉をひそめる。
「ですが、現場付近で“光の紙”を拾ったという証言が――」
俺の背筋が強張った。
“どうぞ札”が街に残っていたのか。
美咲がすかさず口を挟む。
「私たち、SNSで流れてる動画も見ましたけど……あれって合成ですよね? 最近流行ってますし」
にこりと笑う彼女に、警官たちは顔を見合わせた。
「……まあ、念のため見回りは続けます」
そう言い残し、二人は出て行った。
扉が閉まった瞬間、美咲が深いため息を吐いた。
「危なかった……。悠真、本当に隠し通せるの?」
「……分からない。だけど、バレたら谷じゃなく、この街ごと影に呑まれる気がする」
その夜。
レジカウンターの向こうで、学生のグループが囁き合っていた。
「なあ、昨日の動画のやつ、このコンビニの前じゃね?」
「マジ? “深夜勇者”ってここにいるのか?」
視線が刺さる。
俺は笑顔を貼り付けながら、心の奥で苦笑した。
――勇者としての戦いは隠せても、“都市伝説”としての俺はもう歩き出してしまった。
(※次回:第8話「影と光、SNSに試される勇者」へ続く)




