勇者不在
「そうか」話を聞いていたアオは頷いた。
「でも実際、アオの足があって良かった。俺の手だけじゃ終わってた」
そう言うとカナタは立ち上がり、アオに手を差し伸べた。
「で、これからどうすんだ?村に帰るのか?」
カナタの質問にアオはゆっくりと首を振った。
「帰ったら無事じゃすまないよ」
アオはカナタの手を掴み立ち上がった。そして、アオは自分の左足とカナタの左手を見た。
「僕らの体内には魔王がいるしね」
「そうだな」
魔王の魔力はカナタの左手とアオの左足に分かれて吸収されたため本来の力が発揮できず今は静かにしている。
「じゃ、旅するか。その辺の奴を倒して売れば食うのには困んねぇだろ」
「そうだね」
数時間後。
「ミドリ様」
彼女のパートナーであるソラがのんきな声で呼んだ。
「なんだ」
眠そうな声を上げながら、ミドリはソラに近づいた。
「見てください」ソラはサラチを指さした。「魔王城が消えていますよ」
「あ~。青か赤が討伐に成功したのか」
「どうします?」
「このまま旅を続ける。以前もいったが村に戻るつもりはない」ミドリはソラに向かって手を上げた。「それじゃ……」
別れの挨拶をしようとした時、上げた手がにぎられた。
「なんのつもりだ?」
ミドリが眉を寄せると、ソラはにこりと笑った。
「お別れなんて言わないでください。ボクにはミドリ様しかいません」
感動的なセルフを言っている彼の視線はミドリの胸にあった。彼女はそれに気づくと、大きなため息をついて、彼の手を強く握るとそのまま持ち上げて投げ飛ばした。
「わぁ」
ソラは木にぶつかると、地面に落下した。そんなソラに背を向けるとミドリは足を進めた。すると、ソラは慌てて彼女を追った。
その頃、勇者の休憩所ではユキノが料理をしていた。
「カナタは勇者様をつれて戻ってくるんかな」
いつも戻ってくるかわからない弟の帰りをユキノは楽しみにしていた。




