芥の部屋で薊とす
たいへん遅れて申し訳ございませんでした!!!
敏腕巫女が倒されたことにより、イジーニアでは大きな騒ぎが起きていた。泉の巫女の所はすごく当たる、占いが正しくて有名だったみたいだ。
とある客が訪れた際、中に人はおらず、アジトにも戻っていないため殺された、と断定した。
紫苑の花のみしかなく、…不老不死によって殺されたとみなされた。不老不死にとって、血は花、花は命の源なのだ。
そして、…アジトの中でも、それは騒動になっていた。
「卑弥呼…負けよったのか…」
アマテラスは報告書を見れば、『気があって、とても楽しかったんだけどな、それっきりということか。』などと言えば、報告書を炎の中に燃やした。
「いいセンス、だったんですけどね。」
そうか、…芥川とも仲が良かったな。
昔の話を聞いては、小説のネタにしていて、よく恋の話を見せては『女の子の気持ちをよく分かってないわね。』なんて突っ込まれていた。
「それでも結局、弱肉強食の世界、弱いものは食べられて、強いものは生き残るんですよ。」
「強情なやつだな…。」
アマテラスにそう言われつつも、芥川は曇を纏ったような顔をしたまま部屋に戻った。
そう、次は俺の番だ。依頼書宛の名前を見れば、芥の君と書かれている。そんなことも気にせず、紙を一折り、ポッケにしまった。
小説を書きながら、親しかった仲間へ向けて。俯いたまま、ネタを考えている時に部屋の鍵がカチャリと音がした。
「…芥川さん…お茶お入れしましたよ〜」
そこには、明るめの茶髪のポニーテールの白衣の男性が立っていた。もちろんポッケにはリンゴ。白衣姿。
「ニュートン、…ありがと。」
ニュートンは、男の中で結構と言えるほど仲のいい友だ。気が利くし、卑弥呼みたいに変な薬をお茶に入れてこないし、りんごくれるし。
「次の依頼、あまりにも特殊だそうじゃないですか…。そんなにですか?」
心配しているのか、顔をいちいちのぞきこんできたり、目を合わせてくる。こいつが本気で心配している時の証拠だ。
「まぁまぁ、だと思うけど。」
依頼の紙に書いてあったのは、〝この軍にはスパイがいる。〟
それは許すまじ行為なんだ。契約してここにいる訳で、不死の力を得ているのだからアマテラスには感謝しなければいけない。
「芥川さんが取り乱すなんて、…余程大変な…事、なんでしょうね。」
大変なこと、どころじゃないからな…。今まで色々積み上げてきた仲間のことなんて、俺は恨みたくもないし疑いたくもない。…それでも。
「え、…そんなに…俺、取り乱してるか、…治さないと。」
自分のいざと言う時の決心の無さ、自分自身で嫌っていた。
「では、このへんで僕は失礼しますね。芥川さん、くれぐれも怪我のないように、任務を遂行してくださいよ!」
お節介焼きだからこそ、失いたくない。大事だから…
俺の目星はついている、…裏切り者の、招待を。
“ジャンヌ・ダルク”
黒いジャンヌと言われる彼。…そして本物のジャンヌ・ダルクは…ギリシアにいるアイツだと思うんだ。
黒いジャンヌは…偽物、という目星だ。…俺の感はよく当たる。疑いたくはないけど、他に思い当たる人がいない。
白雪は裏切るわけがないし、テオも、ニュートンも。沖田もかぐや姫も…。
パタリ。
自作品の、本の間に紙びらを挟む。
あんなやつに叶うか、否か。
…死ぬかもしれないからな。
俺はジャンヌを呼び出した。
そう。…卑弥呼の殺された、この神社で。
「芥川さん、どうしたんですか?…偵察に来たんですよね。」
謎めいた微笑みでこちらを、まじまじと見てくる目の奥まで真っ黒な瞳。真っ黒な髪。
「…俺は。仲間として聞く。」
何を言うのかと首を傾げるジャンヌを、…本当に疑いたくはなかった。「お前は裏切り者だ」なんて軽く口走って…大事な仲間を失ってしまったら…。そんなことを考える方が辛い。
「何ですか?」
「お前は…本当に俺らの味方なのか…?…何か隠してたりしないよな…。」
静かになる、その直前。後ろから殺気を感じた、…そう、冷ややかな。目にも見えない速さで。
「…怪しいと思う相手を、話でつけようなんて、哀れね。そういうとこがダメなのよ、小説…いえ、妄想作家は。」
後ろから回り込みをされて俺は動けなくなってしまう。そりゃあ体は鈍っているから、後ろを取られれば反応はできない。能力はあるのに…、いつも。
「くっ!…ジャンヌ…!!…お前まさか…!ヘル…!!」
ヘルは、イジーニアでは討伐対象の1番、2番を誇るような存在だ。俺なんかが勝てるわけ…!!
「羨ましいわ!なんであなた達ばっかりルナちゃんルナちゃんルナちゃんって…!…返しなさいよ!、あなた、いつもルナちゃんに近寄って…」
そうだ、ルナは本が好きみたいで俺の部屋に来ては夜通し本を読んでいた。新作ができると、喜んでみていた。
「お前に関係あるか…!」
俺は好意を持っていたわけでもない。触れることはそうそう無かったはず…。本を手渡しする時だけか…?
「私はだからずっといたのよ、あなたの部屋に。本が好き、で通るのは私とルナちゃん、そしてあなただけだものね。…あと、卑弥呼さんも?」
少しでも触れられるなんて、許したくはないわ。なんて言えばぐぎぎ、という音と共に痛めつける。
「そんな理由で…」
口から飛び散った花弁、元から俺がターゲットだったというの、かっ…。
「そんな理由?立派な理由でしょう…?…あと、イジーニアのブレインは殺しておかないと。」
せめて、この場だけでも…、逃げ切るだけでも…
俺の能力、間に合え…!!
《 クロック オン タイム 》
ピタリと空間が止まる。先程まで情熱を持ったヘラは、石のように固まった。
するりと抜け出せば、咄嗟に走り出す。残り10秒。そのまま駆け出す。
頼む、誰でもいい、伝われ…!
能力の念じで、ジャンヌ・ダルクは裏切り者、ヘルだ、ということを伝える。
頼む、ニュートンか…アマテラスに…
「…ねぇ、逃げても無駄なのよ。あなたみたいな人間は殺したくなっちゃうのよ。逃げないで…?」
すすす、とヘラから影が出てこれば俺の足が巻き添いにされる。
くそ、能力が切れた…、俺、本当に使えないよな。説得なんてしなきゃよかったのかもな。…裏切られるのが怖いんだ。
…人間なんて嫌いだ。
俺なんて嫌いだ。
…仲間なんて……嫌いだ、
「あなたのその表情堪らないわ…!食べられる前の顔っていいわね…!」
俺の懐に隠しておいた薬を飲む、すると同時に真っ先にヘラの手が伸び、俺を食そうとする。
「最後まで足掻くなんて素敵よ。…前世とは大違いね。…でも薬は大好きなのかしら?」
そうか…。前世…。すぐに自殺していたな。睡眠薬で…。この薬はヘラを蝕むことが出来る…内側から壊していくしかない…。きっとこいつはまたジャンヌ・ダルクで戻るだろう。誰か、頼んだ…
目を閉じる瞬間、ふと、仲間達がよぎる。…こんな所まで出てくるなよ。…お前ら。俺は… 悔いはないから…。
あぁ…懐かしい感じがする。
「こやつは河岸でのぉ、自殺を測ろうとしていたんだ。髪の毛もボサボサでのぉ、服も汚くてな。ほおって置けなくてなー。才能もありそうだろう?」
俺が連れられてきた所は、どこか暖かくて不思議なところだった。今まで生きていて、こんなすんなりと受け入れてくれたのは初めてだった。後世でも自殺を測って、助けてくれたのは初めてだったからだ。
でも、仲間という存在は…、どう接したらいいのかがわからない。信用出来なくて、頼るのも怖いから。
「困ったら言ってくださいね」
「何かあればいってねぇ…?いちお、仲間なんですからぁ…」
ニュートン、白雪、…お前ら出てくるなよ。帰れないのに… 帰りたくなるだろうが…。
「芥川、新作楽しみにしてるわよ。生きがいなんだから。…ねぇ。」
…、卑弥呼…。俺、お前に生き甲斐にされてたの、嬉しかった。誰かの役に立てて、大切な存在になれるだけで嬉しかった。
お前は、大事だったけど…、仲間とは少し違う感情があったかもしれない。俺にはよくわからないけど、お前が教えてくれたことか…? お前が誰を想おうと、俺はお前以外見えてなかったんだからな…。
隠れて嫉妬していただけかもな。恋なんて知りたくなかったから。あの感情はどうも苦手だったんだ。俺がまともに恋愛を書けなかったのも、そのせいか___。
俺はここに来て、凄い、楽しかった。仲間の笑顔、声、顔…全部好きだった。
「芥川さんの話、楽しみにしてるね。明日も見せて?」
ルナ…、ごめんな。約束…果たせないわ。
好きなやつと同じ所で死ねただけまし…か。
「じゃあね、…」
クサリと、心臓を刺される。アザミの花が舞う。 俺はここにいるから、ありがとうみんな…。
そろそろ、独立時かと思ってたけど、ここに卑弥呼がいるから、なんて思うんだから、そんなこと出来ないだろうな。…ありがとう、本当にありがとう。あの日々、忘れないからな。
アザミの花言葉_… 人間嫌い 、素直になれない恋等。
ありがとう。
悪い知らせは、また入った。…2つ。
「……芥川…。」
芥川の死と、ジャンヌ・ダルクの裏切り。今…2つ知っているのは僕だけ…なんだけど。
「アマテラス様…、芥川の死と、ジャンヌ・ダルクがコウモリということが分かりました。」
親友の死と、仲の良かったものの裏切り。どうしたらいいか分からなかった。ただ、跪いて喋ることしか出来なかった。
「そうか、…ニュートン。無理しないんでいいんだ。次は土方を向かわせるからな。お前は、何も考えるな。」
アマテラス様の、優しさが今は苦しい。とても。
「ありがとうございます。…期待を裏切らぬよう、次に備えます。」
ぺこりと頭を下げれば部屋に戻る。何もなくなってしまったかのようだ…。僕はどうしていったらいいんだ…。
トントントン、扉越しに音が聞こえた。入るぞ。と聞こえたその声は、テオさんだった。
「ニュートン、私も同じ気持ちだ。…仲間の死は悔しいし、憎たらしいし、本当に耐えれないものだと思う。」
卑弥呼にもらったと思われる首飾りをぎゅっと握れば、いつもは見せないような顔をテオさんは見せた。すると、テオさんは僕の背中を撫でる。
「女の子に…こんなことしてもらうほど僕は弱かったかな…。」
机に顔を埋める僕は、本当に弱々しい。切り替えなくちゃいけないのに。
「ごめんね、テオさん。…僕も切り替えないとだよね。ありがとう。」
これは戦争なんだから。…みんなが生きて帰るかは分からない、そりゃ僕もだけれど。
「いいんだ。…元気になったのなら。さぞ辛かっただろうし。また顔見せてくれよ。リンゴ、待ってるからな。」
そう言えばテオさんは去っていった。
僕もこんな弱気になってたらダメだ。考える脳があるのに何をしているんだ。作戦を練るのが先だろう。
仇ではないけれど…、僕は絶対にギリシアを許さない…。
頑張って書きます…。




