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「カイト、助っ人に来てあげたよ」

「ナツメ! いや、きてやったとか何その恩着せがましい言い方」

「来てやったのだ。恩に着ろ」


 教授の奴め……上から目線かよ。


 だが頼もしい仲間が来てくれた事に違いは無い。

 属性チェンジが分かっているので、その都度武器を持ち替え、一人ずつ順番に攻撃を仕掛けていく。

 もう誰がどの順番で攻撃するのかってことも話し合い済みのようだ。

 直接攻撃するメンバーの半数に闇が付与され、残りには聖が付与されている。


 更に解った事が一つあった。

 こちらは既に戦闘中だった先陣パーティーからの情報だ。


「え? 格闘術が効く?」

「はい。ダメージ的にはそれほどでもないんですけど、背負い投げとかのスキル後に昏倒だの失神だのの効果が出る奴。あれが効いてるんです」


 おぉ、それは良い事を聞いた。

 タイミングを見計らって技を掛けてみるかな。


 属性を合わせて物理攻撃が行われる。

 アオイは駄々っ子パンチの連打だ。

 俺はじっとその時を待った。

 時々五尾にダメージが行き過ぎないよう、ポーションを投げて回復してやったりも。


 倒す(殺す)んじゃない、倒す(転ばせる)だけだ。

 だからHPゼロにする訳にはいかない。


『カイト様は戦闘に参加されないのですか?』

「いや、参加してるけど?」

『ワタクシには五尾にポーションを投げているようにしか見えませんが』

「じゃあお前にも投げてやるよ。ほれ」

『……ありがとうございます』


 受付嬢はお辞儀をして前線へと向かう。

 もう一本投げておいてやるか。


 しかし、その時(・・)を待つだけでは手持ちぶたさだな。

 よし――。


 五本の尻尾がうねうねする合間をぬって五尾に接近する。

 そして手を伸ばし――。


「『スティール』!」


 っち。失敗か。


「おいっ。そこの、なんで『スティール』なんだよ!」

「え? なんでって……」


 はて、何故だろう?


「こいつを倒せば全部終わるんだっ。盗んだって意味ないだろ!?」

「んなことしてねーで、格闘技能持ってんだろ!? 技かけろよっ」

「これで最後なんだから。最後なんだから!」


 最後……あぁ、そうだな。

 これが最後なんだ。

 だから……。


「だから『スティール』」


 五尾の攻撃を避け、ポーション瓶を投げ、そして盗む!


「さすがカイトでぇース。ここで激レアゲットして、それを使って五尾をフルボッコなのデスね」

「いや、スティールが浪漫だから」

「ボクの浪漫は女の子デー――ぶふぉっ」

「そこ! 真面目にやりなさいよっ」


 エリュテイアの容赦ないツッコミ(バッシュ)が炸裂する。

 もちろん形だけでダメージはない。


 クィント、お前の骨は海に流しておいてやるからな。


「つーか真面目にやれよ! 俺たちはお前の作戦に乗ってやってんだぞっ」

「いや、悪い。なんていうか……楽しまなきゃって……最後なら……最後だから……だってこれ、ゲームだからさ」


 そうだ。これはゲームなんだ。

 俺たちプレイヤーを楽しませる為のゲームだったはずなんだ。

 それがどこでどう間違えたのか……。


「これで終わらせる。だから――」


 だからめいっぱい楽しむ!


「最後まで楽しもうぜ!」


 そう言って俺は駆け出す。

 電光石火からの――スティール!

 っち。レイドボス相手だとなかなか成功しねーな。


『そういうことでしたら――勝負でございます! スティール!!』

「ぉ、おい。スキルレベルはお前のほうが高いんだ。ずるいだろっ」

『スキルレベルを上げなかったのはカイト様のご意思です。見苦しいですよ』

「ぐっ」


 論破されてしまった。

 ちっくしょう。負けてたまるか!


 受付嬢とのスティール合戦は、気づけばナツメが参加していた。

 そして愚痴をこぼす連中も現れた。


「盗賊系は遊べるからいいけどなー、こっちはそんなスキルねーんだよ!」


 ――と。

 

 必死だった奴らの顔に余裕が生まれ、そして笑顔が浮かび……。


 そうだよ。

 これなんだよ。


 俺が求めていたもの。

 俺がずっと手に入れたかったもの。


 ひとりじゃない。

 誰かと一緒。


 みんなで笑って――


 ひとつの目標に向かって――


『カイト様!!』

「んあ?」


 受付嬢の切迫した声で我に返ると、五尾が目をギンギンと輝かせこちらを――俺を睨みつけていた。


 攻撃モーション!?


《クオオォォォォォォンッ》

 

 天に向かって吠えた五尾が、地を蹴り突進してくる。


 来た!!!!!


 相手は巨大だ。

 だが関係ないっ。


 だってこれは――


「ゲームなんだからなあぁぁぁっ!」


 鋭い爪が見える。

 腕を伸ばし、その鋭い爪で俺を串刺しにしようとする五尾――の腕を掴み、巴投げ!!


「おおおぉぉぉぉっりゃあぁぁぁぁっ」


 ふわっと浮かんだ五尾の気配を背中に感じ、物理の法則を無視して投げ――。


 ――たハズ。






「ここ……どこだ?」


 背負ったはずの五尾の姿は無く、ナツメも、クィントも、教授も、誰ひとり姿が見えない。

 いや、何も見えない。


 真っ暗な空間に、俺はひとりぽつんと立っていた。


書籍版の発売は3/30です!

1章を収めた感じですが、加筆修正もしておりますのでweb版をご存知でもお楽しみいただけると思います。


また、異世界転生&転移の新作

「転生魔王様。勇者召喚されたけど全力でスローライフを送ります(願望)」も投稿を開始しました。

そちらもぜひよろしくお願いいたします。

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