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 抜け駆けギルドからの情報によるとだ……。


「五尾戦に参加して一度でも戦場を離脱すると、再戦が不可能になる」

「は? なんだそりゃ」


 教授の説明に首を傾げながら声を上げると、今度はナツメが口を開く。


「戦闘不能でアイテム復活や蘇生魔法による復活だと、そのまま戦闘は継続されるみたいなんだ。でも体勢を立て直そうとその場を離れて戦闘状態が解除されてから戻ってみると、五尾の姿が消えてる――と」

「どうやら五尾が存在している周辺は別エリア扱いになっているようなのだ。シームレスでの移動だったので気づかなかったという訳だな」


 シームレスって、読み込み無しでのエリア移動って意味だが、VRになってからは通常フィールドは全てシームレスだ。ダンジョンなんかは魔法陣だの転送装置だのを使って、別エリアに移動というパターン。中にはダンジョンですらシームレス移動ってのもあるが。

 え、ちょっと待てよ。

 つまりプレイヤー側にとっては、一発勝負ってことじゃね?


 ぎょっとなってナツメに視線を向けると、俺の意図を察してかナツメが頷く。


「属性検証してくれた勇者なパーティーの連中も、身内ギルドの人と同じ座標にいるのに五尾が見えてないんだって」

「死亡してアイテムを使おうとして間違ってセーブポイント復活ボタンを押してしまった奴が、急いで現場に戻ったがパーティーメンバーと合流できず、景色は同じだが五尾と攻略組が見えないフィールドで呆然としているらしい」

「あと……抜け駆けギルドのほとんどが、もう蘇生アイテムの在庫が無いって話しだよ」


 死にまくってんのか。抜け駆けなんかするからだざまぁー。


「とか思ったけど実質トップクラスの攻略メンバーが崖っぷちって、どうなんだよっ!」

「今戦闘中の連中は75を超えた者が多いはずじゃがのぉ。それでもダメとなると……」

「えぇっ。じゃあ抜け駆けしてない人達でもっとレベル上げるしかないの?」


 ざわつく食堂内。

 平均レベルを76……できれば78ぐらいまで上げて再挑戦か? 寧ろ80とか?

 必死にレベリングして、最低でも一週間以上は掛かるよなぁ。

 攻略のメインになる連中が再戦できないとなると……ソロ廃人なんて少数だし、勝てるのか?


 はぁ――っと俺が大きな溜息を吐き捨てると、あちこちから同じような溜息が聞こえてきた。

 考えてることは同じってことか。


 そのとき――


「アオイが説得するおっ」


 階段上から聞こえてきたのは、ようやく起きて来たアオイの声だった。


「アオイがととさまを説得するぉ!」

「え? 説得って、どうやって?」

「アオイがバーンってととさまを押し倒して、それから皆がお家に帰れるように、ととさまを説得するんだぉ!」


 そう言ってアオイが玄関から飛び出してしまった。

 親父を押し倒すって、なんかちょっと危なげな表現でしたけど?

 いやお前、説得って何をどう説得する気なんだ?

 そもそもお前の親父さんが、俺らをログアウトさせてくれる訳じゃねえからっ。


 慌ててアオイを追いかけたが、玄関からアオイの姿は見えなかった。通りのほうまで出て行ったが、やはりアオイの姿は無い。

 どうなってんだ?

 いやだって、プレイヤータウンから出るのも、俺らプレイヤーと一緒じゃないと出れない仕様だってのに。


『カイト様。アオイの位置情報が……』


 後ろから受付嬢の囁くような声が聞こえて振り返ると、困惑したような表情で彼女が立っていた。


『アオイは既に、プレイヤータウンにはいません』

「は? だってアオイは――」

『はい。プレイヤーの方と一緒でなければ、ここへの出入りは出来ないようになっているはず……なのですが。何故出られたのか解りませんが、アオイは既にミゼット地方にいます』

「はぁ?」


 こりゃあアオイを追いかけるしか無い……よな。






「アオイの説得ってのが上手くいけばいいが、いかなかった場合も考えて、現地に向うのは俺と受付嬢の二人だけで行く」

「上手くいきそうだったら直ぐに知らせてよ。そしたら駆けつけるから」

「上手くいかなかったときは、せめて五尾の攻撃パターンだけでも見極めてくれたまえ」

「水をガブ飲みして十回はゾンビアタックするのじゃぞ」

「カイトさんの死は無駄にしないっす」

「俺の代わりに可愛い女性がキルされそうになってたラ、助けてあげてくだサーイ」

「義父さんによろしくね!」

「誰がおとうさんだっ!」


 心配しているのは数名の女子だけ。真面目に考えてるのは教授だけ。

 残りはふざけてやがる。


「では私の魔法で現地近くまで飛ばしてあげよう」


 そう言って教授がパーティー要請を送ってきた。それを承諾すると、すぐさま教授の魔法詠唱が始まる。

 魔法が完成し足元に視界に『ミゼット街道 X:165 Y:248に転送します。よろしいですか?』『はい ・ いいえ』というメッセージが浮かぶ。

『はい』を選択する間際――


「カイト。先に言っておく」


 と教授が真面目な顔をして俺を見つめる。


 おい。

 やめろよっ。

 絶対やめろよっ。

 俺はホモじゃねえんだからなっ!

 告ったりなんかしたら、ぶち殺すからなっ。


「カイト。南無ぅー」


 ……殺すっ。

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