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 すってんころりんと倒して「はい討伐成功」という訳にはいかないだろう。

 けど、イベント告知には「倒したとき」「勝利するのは」といった言葉だけで、何も「殺せ」とは書かれていない。

 相手が敗北を認めた場合にだって「倒した」事になるだろうし、当然「勝利」したことにもなるんじゃね?


 既に寝息をたてているアオイを横目に、俺は無い頭をふる回転させていろいろ考えた。


 そして思い出したのは月光の森での対ウンディーネ戦。

 人間に矢を射られ重傷だったアオイが泉に落ち、出血によって水が穢れて……ウンディーネは狂える精霊になった。

 原因であるアオイを助け出し、それからウンディーネを倒すと――正気に戻ったウンディーネが再登場したもんだ。

 あのとき確かに奴のHPはゼロになったはずだ。

 ゲーム故なのか、ちゃっかり復活している。

 そもそも奴の泉に蘇生能力があるからって事かもしれないが、とにかく同じ順序でやればいけるんじゃね?


 問題は、とうちゃんがなんで穢れたか――だけどな。

 マザーテラによるご都合改変だったら、原因なんてそもそも無いかもしれない。

 そんときはどうする?


 とにかくだ。明日は十時から攻略開始になっているから、その前に主要ギルドのマスターにでもこの事を話して、殺さず倒すっていう方向で行けるよう頼み込もう。

 殺しでもしたら、九尾に報復されるぞとか脅せば、それこそサンダーボルトの連中なんかは納得してくれるだろう。

 なんせ九尾の恐ろしさを身を持って知っているからな。


 それから――それから――zzzz。






「カイト君っ。カイト君っ」


 ぶはっ!

 ね、寝落ちしてたのかっ。


『カイト様、起きていらっしゃいますか?』

「カイト君、大変なんだよ。寝ぼけてないで起きて起きてっ」


 人様の眠りを妨げている声は受付嬢とナツメか?

 ぐっすり眠っているアオイを起さないよう、そろーりとベッドから出てロフトを降りて扉を開ける。


「大変ってなんだよ。アオイが寝てるから大声出すなって」

「アオイちゃん? あ、やっぱりカイト君って」

「ロリじゃねえからなっ!」

『カイト様、大声は禁物なのでは?』


 はっ。しまった……。

 ロフトを見上げるが、アオイは――うん、寝ているようだ。


「で、なんだって?」

「大変なんだよ。夜中の内にフライングしたギルドが出たんだよ」

「フライング?」

『五尾を討伐しに行ったという意味でございます』

「五尾――はぁっ!?」


 おいおい。参加者全員でフルボッコって計画だったじゃねえか。

 参加予定者の中にはレベルが70に満たない連中も多い。こういう連中はたぶん、五尾の攻撃にまともに耐えれないだろう。

 それを考えて全員でのフルボッコって事になってたってのに……たく、どこのどいつだよっ。


「そりゃあもちろん……『ムーンプリンセス』だけどね」

「……はぁ……いいさ、あいつらなんてはなっから期待してねえし」


 まぁ本音としては、あのギルドにいる比較的まともな高レベルプレイヤーは当てにしたかったんだがな。


「あと『北欧騎士団』と『ヴァルハラ』、『抹茶猫喫茶』、それから――」

「おいおいおいおい、待てよ。月姫だけじゃねえのかよ?」

『真っ先に討伐に乗り出したのは『ムーンプリンセス』ギルドですが、彼らが出立したという情報が掲示板に出回ると、慌てて後を追うように他のギルドも――という流れでございまして』


 抜け駆けは許さないとかいいつつ、この場に乗じて抜け駆けするっていう奴だな。

 しかし、ナツメの口から出たギルドがほとんど大手ギルドだっていうね。さすが大手、汚いぜ。

 それに引き換え最大手だろうと言われている『サンダーボルト連隊』は違うよなぁ〜。良識のある連中が揃ってるぜ。何よりあのギルドマスターがいい。暑苦しいが、律儀そうだしな。


「『サンダーボルト連隊』も慌ててミゼットに向ったらしいよ。まぁサンダーはレイドとか好きだからねぇ。もうほとんどの上位大手は討伐に行っちゃったんじゃないかなぁ」


 ……前言撤回。

 良識よりも好奇心が勝ったようだな。

 はぁ……これだから大手はよぉ、汚いぜっ!


 だがこうしてはいられない。

 レベル70超えのほとんどは、いや九割は大手ギルド所属の連中ばかりだ。この家みたく、基本ソロの廃人はそう多くはない。

 その大手がこぞってフライング討伐に出たとなると、へたすると奴等だけで決着が付いてしまうかもしれねぇ。

 願いは――まぁ皆がログアウトを願っているんだし、そこんところは大丈夫なんだけどよぉ。

 でも、アオイの気持ちを考えると……。

 いや、寧ろアオイの目の届かないところで決着が付いた方がいいのか?

 どうせリポップするんだろうし、糞面倒くせぇ事考えなくて済むじゃないか。


「あ、フレンドチャットだ。フライング組の知り合いからだ……ふへっ」

「どうしたナツメ。変な声なんか出して」

「これ、拙いかもしれないよ」

「何が?」


 宙に手を這わせ、俺には見えないウィンドウ操作をしているナツメの表情が暗くなっていく。

 彼が口を開きかけたその時――


「緊急事態だ! 全員、起床ーっ」


 と叫びながら教授が部屋から出てきた。


異世界転移物『異世界で忍者!?ちょっと待て。これ職業じゃなくて種族だろっ』始めました。

そちらもよろしくお願いします。

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