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145:惚気。

『我が旦那様と出会ったのは……そう、あれは月が一際美しく輝いておった晩の事じゃ』


 うっとりしたような目で語りだす九尾のかあちゃん。

 アオイの爆弾宣言と、サンダーボルトたちとの事もあって一瞬殺気立ったかあちゃんをどう宥めるか。

 あわあわしているところで受付嬢の奴が――


『先日、皆様のご両親の馴れ初め話をしておりまして。そこで九尾様の心を射止めたのがどこの誰なのか――聖獣様の馴れ初めが気になり、ちょうどアオイがお父様の事を口にしたので、それでやってまいりました』


 と良く解らない事を言い出した。

 が、馴れ初めという言葉を聞いた瞬間の九尾の顔といったら……なんか顔真っ赤にしてやたら可愛い奥さんって感じだったな。

 それで俺らも受付嬢の作戦に乗っかって「聞きたい」「聞かせて欲しい」「どんな恋だったんですか?」などと騒ぎ立てると、アオイも楽しそうにするもんだからかあちゃんが折れた。

 というかアッサリ折れた。


 かあちゃんののろけ話だと、彼女がこの森の聖獣となったばかりの頃、狩人の罠に掛かって――

 普通だとここで「傷ついて苦しんでいる彼女を助けてくれた――」となになると思うんだが、怒りで暴れそうになったってところがさすがかあちゃんってとこだな。

 で、宥めてくれたのが――


『この森の西にある、大陸を東西に分断している山脈に住んでいた旦那様じゃ』


 それがきっかけでお付き合いをする事になったらしい。

 っていうか、そういう裏設定あったのかよ! と思わずつっこみたくなる。

 のろけ話を聞きながら上手く質問して旦那の弱点だとか、どうしてミゼットに出現したのかとか聞きたいが……

 話を聞くうちに別の感情が湧き上がってきた。


 倒せるのか?

 力の問題じゃなく、気持ちの問題として。

 だって……アオイのとうちゃんなんだぜ?

 倒して――俺たちは望みを叶えてログアウトする。

 その為にアオイの父ちゃんを倒せるのか?


 いや、これはゲームだ。きっとリポップする。するはずなんだ。

 だから倒したって、また直ぐに――






 かあちゃんののろけ話は長かった……。

 午前中から動いて昼飯には十分余裕のある時間に到着していたってのに、話が終わった頃には月が出てたっていうね。

 弱点とかは解らなかったが、ミゼットに現れた理由について心当たりはあるらしい。


『我ら聖獣は、一つの土地に一人のみ。そして自らの土地から離れた聖獣は、次第に心が病んでしまうのじゃ』

「え? またなんで」

『解らぬ。それが古からの理でもあったからの。おそらく、聖獣が土地から離れるようにと、ある種の呪いのようなものなのかも知れぬ』

「じゃあ五尾は――」

『いや、旦那様は自我を失うほどにはなっておらなんだ。山脈からここは近かったし、何よりアオイが生まれて直ぐに帰ったからのぉ。じゃが――』


 アオイの父ちゃんの気配が、いつしか消えていたんだとか。それが何時頃なのかは記憶が定かではない――と。


『しかし、どういった理由かは解らぬが……先日突然現れた旦那様は……』


 かあちゃんの表情が険しくなる。


『旦那様の気が……穢れておるのじゃ』


 搾り出すように呟かれた声。

 だから今はアオイを会いに行かせる訳にはいかない、と。


 理由、か。

 俺たちの要望のせいだろうな。

 そんで、適当に巨大モンスターのトップバッターに選ばれた、と。

 マザーテラのご都合でいろいろ改変させられてんだろう。


 はぁ……せっかくレベル上げ頑張ってきたってのに、また重くなるじゃねえかよぉ。

切りの良い所で切ったらやたら短いお話でした。

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