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133:カジャール襲撃イベント。

 ワンワンキャンキャンと糞五月蝿い現状。

 騒いでいるだけで、これといって建物とかを破壊する様子は無い。町の住民らしき姿も見かけないな。全員、家の中に避難しているのだろう。

 あちこちでプレイヤーとの戦闘が起こっているが、被害らしいといえばコボルトに負けてる低レベル者のデスペナぐらいか。


 で、コボルトキングは――


「いないな」

『コボルトはいますよ』

「いや、それじゃなくってキングな」

『あぁ、いませんね』


 コボルトがいることぐらい、誰がどう見てもすぐに解るだろうっ。

 そんな解りきったボケを、こいつときたら……どこで覚えてくるんだ!?


 手近なコボルトに、このもやもやをぶつけるべく短剣で一閃する。


《ギャワワンッ》


 ぎょろ目のコボルトが、さらにぎょっとした顔で俺を睨む。

 キモいので止めをさしてやった。


 あちこちでコボルトの断末魔が聞こえる中、必死に目を凝らしコボルトキングを探す。

 いや、目を凝らさなくてもあのサイズならすぐに見つかるか。

 この辺りの住宅は平屋が殆どだ。たまに二階建ての建物もあるが、あのサイズならまず平屋建ての屋根からでも頭が少し飛び出て見えるだろう。

 なのに……見当たらない。


 どこだ?


 工房のほうで囮作戦までしたってのに、こっちに姿を現さないなんて。

 どうなってんだ?


 ここでワンワンキャンキャン吠えてるのは、砦周辺を巡回している雑魚コボルトどもばかりだ。

 よっぽどレベル上げをしてない引篭もり型プレイヤーでもなければ、勝てない相手ではない。もちろん、ソロで群れの中に飛び込めば解らないが。


 そういや工房でソルトを襲ったコボルトは……四匹だった、な。

 剣盾――短剣――弓――つ……


「こっちが囮!?」


 拙い。工房方面に出たコボルトって、エリートじゃねえかっ。

 工房の奥には森がある。高い木々だってあるし、コボルトキングの姿を隠すには最適じゃねえか。


「受付嬢! すぐさま工房に戻るぞっ」

『はい、しかしこちらは?』

「んなもん、その辺のプレイヤーに任せてしまえ。アオイ、走るからな」

「あいぉ〜」


 再び受付嬢の手を取って、俺は来た道を引き返す。

 急げ。急げっ。






「ソルト! 生きてるかっ」


 店の扉を開け放ち中に入るがソルトの姿は見えない。代わりに妖怪ばあさんがいた。


「ぼんなら、工房のほうに向ったえ」

「工房? ったく、さっき騒ぎがあったってのに、何やってんだ」

「うちの窯が壊れててねぇ。なんでも、今すぐ造りたい物があるとかで、材料持って走ってったよぉ〜ひ〜っひっひっひ」

「ばあさん怖ぇーよ!」


 もしかしてここは戦場になるかもしれねえ。だから急いで避難しろ。

 そうばあさんに伝えて俺たちは工房へと向った。

 途中、パーティーチャットで住宅街の様子を聞いたが、やっぱりコボルトキングは登場していないという。

 本命はこっちか!?


 工房に到着すると、こんなときだってのに商魂逞しい連中が何人かいた。その中にソルトの姿も見える。


「おい、ソルト!」

「ん? お、カイトじゃないか。え、まさかもうコボルトキングを?」

「違う。住宅街に奴は居なかった。今も仲間が向こうにいるか、姿を見せないらしい。もしかしてこっちが――」


 そこまで話したとき、工房の奥――ここからだとまだ200メートルぐらい距離がある森からバキバキという音が聞こえてきた。

 木を薙ぎ倒し、巨大な何かがこちらに向って来る音が……。


「はっ。やっぱり……か」


 近づいてくるその影は、紛れもなくコボルトキングのもの。


 周辺にプレイヤーの姿は無い。

 居るのはコボルトキングを見て驚愕している工房のNPC数人と、俺たちだけだ。


「ソルト……皆を連れて走れっ。とにかく町の中央あたりの頑丈な建物にでも――教会だ! あそこに逃げ込めっ」


 教会なら死に戻りしてくるプレイヤーだとか、帰還魔法で移動してくるプレイヤーがいるから、少なくともその辺の建物よりは安全だ。

 それを伝えるが、ソルトは逃げようとしない。


「ダメだ。今はまだ逃げられねえ。おい、おっさんどもはこいつに言われた通り、教会に逃げてくれっ」

「ばっ!? お前も逃げろよっ」

「これを仕上げるまでは逃げられねえ。せめてこのコボルトキラーを修復するまではっ」


 コボルトキラー?

 名前からして、対コボルト専用の武器か?


『カイト様、こちらのパーティーにコボルトキングが現れた事を伝えましたので、すぐに皆様いらっしゃるそうです』

「そうか。なら、それまでなんとしてもここから先に行かせないようしねえとな。っち、ソルト、さっさと終わらせろよっ」

「任せとけっ」


 さぁ、コボルトキングとの睨めっこだ。

 幸い、あいつは俺にヘイトを向けてきている。相変らず尻尾の事を根に持ったままだな。

 ソルトから離れる為、森から出て来たコボルトキングに向って走り出す。


「アオイ。もしもの事を考えて、お前はソルトを守ってやっててくれないか。仲間が合流したら、森のほうに誘導してくれ」

「アオイも戦うぉ〜」

「ソルトが死んだら、お前の新しい装備作ってくれる奴がいなくなるんだぞ?」

「う〜、それはイヤだぉ〜。解った。アオイはソルトを守ってあげるぉ」

「頼む」


 ぴょんっと肩から飛び降りたアオイは、工房に引き返していった。

 風呂や飯、寝るとき以外はほとんど俺の肩に乗っかっていたアオイだが、いざ居なくなると随分と体が軽くなった気がする。


「受付嬢。一つ試したいことがあるから、こっちの合図でこれを飲め」


 インベントリから『リカバリーレジスト・ポーション』を何本か彼女に渡す。念のため『リカバリーポーション』も渡しておこう。

 彼女が飲んでから『ベナムクラッシャー』を使い、ポーション効果があるかどうかを確認。同時に毒状態になったエリートコボルトどものダメージも見ておきたい。

 重ねがけすればダメージが増えるような感じだが、そのダメージが全員一定なのか。

 一定であれば、全部を纏めて殺す事もできるってことだよな。


 エリートコボルトを同時に倒せれば……再召喚はどうなるのか。


 仲間が集まる前にこれらをやっておきたい。


《オオォオーン》


 吠えた!

 森の木々の隙間から、四匹セットになったコボルトのグループが現れる。

 その数、3グループ、計十二匹。


「今だ、飲めっ」

『はいっ』


 横目で受付嬢がポーションを飲むのを確認すると、エリートコボルトに向って走った。

 集まってくるエリート。

 そこにスキルを叩き込む。


「『ベナムクラッシャーッ』」

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