表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/160

127:ゾンビアタックのはじまり。

「『コメット』」

《ギャワワワォンッ》

「ふははははははは『アイシクル・ストーム』」

《キャインキャインッ》


 外から見た砦の大きさは、三、四階建てのビル程度。だが中に入ってみると予想以上に広く、かれこれ十分は歩いているかな。

 なのに一度も戦闘をしていない。

 だって――


「なんだよ……第一パーティー無双じゃね?」

「ですねぇ。みかんさんとモリアーティ教授さんの魔法で、ほとんどのコボルトさんが死んじゃってますねぇ」


 間延びした口調で「死んじゃってますねぇ」なんて恐ろしい言葉をココットは言いやがる。

 だが彼女の言う通り、八割がたは二人によって殲滅されていく。残りの二割は俺の代わりに第一パーティーに入ったナツメともっすんが片付けてしまって、第二パーティーにすらおこぼれが行かない。

 いやぁ、レイド戦ってこんな楽勝だったのか?






「じゃあ俺らはここで待機な。ココット、間違っても付いていくんじゃないぞ」

「大丈夫。私が捕まえておくから」

「にゃ。うちも捕まえておくにゃ」

「ふぇ〜ん」


 両脇をエリュテイアとにゃーにゃに捕まれたココットは、さながら罪人のようだ。

 その光景を見届けた第一、第二パーティーが遂にコボルトキングの待つ部屋へと突撃していった。


「いやぁ、レイド戦って道中からして屍累々になるもんだと思ってたが。ここまで楽勝だったな」

「だよねぇ。なんせみかんさんと教授のレベルが、雑魚コボルトより六つ上だったし」

「あの二人、レベル48になってたのか。このパーティーだと翔とマックが46か。にゃーにゃと俺が45でエリュテイアとココットが44だな」


 今話してる相手がハンターの翔で、もう一人の後衛火力マックはレンジャー。どっちもアーチャーの上位職業だ。

 そういや物理戦闘職ばっかだな、ここのパーティーは。


「私たち、もうすぐ45になるわよ。でも……ここまで全然戦闘してないから、上がりそうもないけどね」


 とエリュテイアが言う。

 まぁ……ウィズ様二人が無双してたもんなぁ。

 そのウィズ様二人はボス部屋でも大暴れしているようだった。

 部屋の外で待機している俺たちにも、中から聞こえてくる轟音で中の様子を伺い知ることが出来る。

 あぁ、早く突撃してぇ。


 暫く指を咥えて待っていると、受付嬢が駆けつけてきて『どうぞ、お入り下さい』と無駄に丁寧に声を掛けてきた。


「やっとか」

「よぉし、暴れるにゃー」

「暴れますぅ〜」

「いやココット、あんたは支援なんだから」

「ココットさんの周りに、雑魚避けトラップ置いておこうか?」

「マック、頼むぜ」

「俺がココットさんの後ろから見張ってるよ。弓の射程はマックより上だから」

「弓職がこんなにも頼もしいとは」

「逆にココットはどれだけ過保護にされてるのかにゃ」

「ふぇ〜ん。私だって頑張るのにぃ」

「よしよし。アオイがちゃんと守ってあげるぉ」


 子供にまで守って貰わなきゃならないココット……同情はしない。


「じゃあ、行くわよっ」

「「おう」」


 エリュテイアを先頭に中へと突入。受付嬢と合流してボス付近まで走る。

 中は乱戦模様で、雑魚コボルトがうじゃうじゃしてやがった。


『コボルトキングの側近で、エリートと名が付いたコボルトです。レベルは通常のコボルトより高く、44』

「それでも格下だな」


 手近に迫ったコボルトに対し、エリュテイアが素早く『タウント』でヘイトを取る。

 俺とにゃーにゃが攻撃をすると、後ろから矢が飛んできて追い討ちを掛ける。

 が――


「これで倒せないか……さすがボスの取り巻きってところか」

「っ……攻撃力そのものは外にいたコボルトと比べると、極端に強い感じじゃないっぽい」


 コボルトの攻撃に防御をせずに耐えたエリュテイアがそう伝えてくる。

 ってことは、与ダメージ数値を見る限りだと、コボルトの防御力が強化されてるだけっぽいな。あとはHPもか。


「けど、攻撃力があまり変わって無くてもこの数だしね」


 後ろから聞こえる翔の声。喋りながらもどんどん矢を放っている。近くではマックの設置した罠に嵌って、わんわん吠えてるコボルトもいた。

 確かに多いな。

 こっちが十八人に対し、コボルトは五十匹ぐらいいるんじゃね?

 っていうか……


「おい、教授! なんで範囲魔法でババーっとやってしまわないんだよっ」


 近くで戦闘中の教授に向って声を張り上げた。

 その瞬間――


《わんっ》

《わわん?》


 コボルトの視線が一斉に俺に注がれる。

 ぎょろっとしたチワワの目が、俺を……


「きめえぇぇっ!!」

《ギャンギャン!》

《グオォオオォォォォッ》


 ぉ、言葉が通じたのか?

 なんか、コボルトが怒ってるんですけど?

 それに最後の唸り声って、まさか……


『カイト様っ、危ないっ!』

「へ?」


 声が聞こえた方角に振り向くと、見えたのは受付嬢の姿ではなく、二枚盾の鋼を引きずったまま仁王立ちするコボルトキング――の足だった。



《戦闘不能に陥りました。セーブポイントへ帰還しますか?》

《YES / NO》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ