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110:新居紹介その②

本文下部に2階間取り図がございます。

重たいかもしれません。

 夜。食堂以外の店舗を閉店させ、玄関兼リビングにテーブルを並べて簡易的なパーティー会場が設置された。

 皆……俺の為にこんな本格的なパーティーを催してくれるなんて……。

 もう俺はぼっちを完全に脱却できてるよな。


「じゃ、2次転職組はあっちでー、未転職組はこっちでー」

「なんでもいいから騒げる口実欲しかったんだよね」

「私も早く2次職になりたい……鋼さんの2次職って騎士でしょ? どんなスキルがあるの?」

「儂は盾しか使っとらんからのぁ。エリュ殿の参考にはならないのであるよ」

「NPCの店から酒買ってきたぜっ」

「でかした。まっすん」


 あー……つまり、なんでもいいから騒ぎたかっただけ……と。

 皆好き勝手に盛り上がっちゃって。俺だけぽつーん、だもんな。

 っふ。ぼっちの壁はなかなか分厚いぜ。


 一人ぽつーんと野菜のスムージーを飲んでいると、受付嬢がやってきてさり気なく隣の席に座った。

 な、なんだろう。この無駄にきゅんとするシチュエーションは。

 まじまじと見ないように、されど横目でチラりと見ていると、何やらアイテムボックスから取り出すではありませんか。

 さて、なんでしょうか?


 などと一人で勝手にクイズ番組を進行してみる。


『カイト様……あの、これ。転職祝いを兼ねてですが、ワタクシからの感謝の印です』

「え?」


 あまりにも唐突なので、口をぽかんと開いたまま飲んでいたスムージーが口の端から滴り落ちる。

 やっべ。

 慌てて袖で拭き取ろうとする前に、受付嬢がハンカチらしきものを差し出してきた。

 な、なんて胸きゅんなんだっ。


「さ、さんきゅー」

『どう致しまして。それで、受け取って頂けますでしょうか?』

「も、もちろんっ」


 丁寧にラッピングされた箱を受け取る。箱のサイズはA4サイズといったところか。厚みもほれほどでもなく、一見すると菓子箱みたいだな。

 せっかくだし、スクリーンショット撮っておくか。

 撮影後、可能な限り丁寧に包み紙を開いていく。

 ッビリ――っと、やっぱり破れるよな。うん。


「ぶ、不器用だからさ、綺麗に開封できなくて悪いな」

『いえ、お気になさらずに。包装紙など所詮ただの紙ですから』


 にっこり微笑む受付嬢の顔を見て、更に手元が大きく逸れてビリビリ破ける。

 もういいっ。ビリッビリに破いて中にあった箱をぱかっとオープン!


「……お面?」


 しかも狐のお面だ。更に言えば可愛さの欠片すらない、お土産屋なんかに売ってそうな民芸品のお面だ。

 その狐お面の目とあってしまい、なんとなく動けなくなる。

 で、これをどうしろと?


『カ、カイト様はその、あまり感情が表に出ない方ですので、お面を付けることで他の方から親しまれ易くならないだろうかと思いまして』

「このお面で、か?」

『狐さんはカイト様にピッタリだと思いますっ』


 受付嬢の真剣な表情。

 何故か遠くでくすくす笑う奴等。


「このお面……お前が考えて選んでくれたのか?」


 だったら、恥ずかしいが装備するしかない。

 だが――あっちで笑ってる連中が気になる。


『あの、お面を選んだのはワタクシと、その――』

「アオイだぉ〜っ。モリとナツとまっすんがねぇ、カイトの笑い顔が変だからお面で隠したほうがいいぉって教えてくれたんだぉ」

「……おい、そこの3人」


 モリというのはモリアーティーだろう。ナツはナツメ。住居完成後にシェアメンバーになったソロプレイヤーで弓職上位職ハンターのもっすんはそのままの呼ばれ方か。

 アオイがぶっちゃけたもんだから、ばつが悪そうに明後日の方向を向く3人。

 さて、こいつらどう料理してくれよう?


『カイト様の転職祝いに贈り物をしたいと相談したのはワタクシなのですが、何かご不備がありましたでしょうか?』

「っぐ……」

『御三方はいろいろと教えてくれましたが、その中でお面が最適かと判断しましたので。その、カイト様の笑顔は、いつぞやのワタクシの笑顔と同じでしたし。

 狐さんにすると、皆様が可愛いと思ってくださるんじゃないかと思ったのですが……』

「か、可愛い、か? これが」

『はい。可愛いと思います』

「可愛いですよカイトさんっ」


 受付嬢に同意するように、ココットが力強く言う。

 エリュテイアはどう思っているのだろうか? っとお面を見せるようにして視線を向けると、首を傾げてやがった。

 楓に関しては両手でバツマーク作ってやがるし、みかんは思いっきり鼻で笑いやがる。

 クィントと鋼のおっさんは腹を抱えて笑っていた。


 受付嬢のセンスがココットに侵されている、だと?






 転職祝いとは名ばかりの、無駄に騒ぐだけの宴会。

 狐のお面を手にしたまま、どうしたものかと考え込む。

 半分は馬鹿3人に言われたからだろうが、半分は受付嬢が考えて選んだものでもある。

 見た目だけなら恥ずかしいからそっとアイテムボックスの肥やしにするんだが、これがなぁ……


 

------------------------------------------


【アイテム名】狐のお面

【装備レベル】---

    【効果】AGI+5 回避率+15 LUK+5


------------------------------------------



 まさかの性能付き!

 しかも俺向けなんだよなぁ。


「このお面、どうしたんだよ。モンスターからのドロップなのか?」

『いえ、これはその……冒険者支援ギルドから付与される『Bポイント』を使って交換したアイテムです』


 え? 『Bポイント』ってこんな性能付き装備とも交換できるのか。


『性能のほうは、レアアイテムのブレスレットを合成いたしまして』

「そのブレスレットはボクが拾ってきたんだ。感謝してよね〜」

「黙れナツメ」

「酷いぃ」

『ナツメ様はご親切に、格安で譲ってくださったのですっ。怒らないであげてくださいっ』


 金取られたのかよ……いやまぁ、レアだし、普通に店舗に出せば高く売れるだろうけどさ。


「1万Gで売ってあげたんだよ、褒めてよ」

『褒めて差し上げてくださいっ』


 ……1万……確かに、安いな。

 これじゃあ怒るに怒れねぇじゃないか。


『装備、してくださいますか?』


 っと潤んだ瞳で訴えてくる受付嬢。

 その隣ではお祈りポーズのナツメと教授、それにもっすんがいる。

 とりあえず教授ともっすんは蹴飛ばしておいて、仕方ないので装備する事にしよう。

 せっかく、受付嬢の奴が買ってくれたんだし。


 ん?

 このお面……紐もゴムも何も付いて無いぞ。どうやって装備するんだ?

 片手で掴み上げて頭に乗せてみると、そのままお面はくっついた。

 掴んで外すと、簡単に外れる。

 乗せるとまたくっつく。

 なんて楽なゲーム仕様なんだ。


「あれ? 顔に装着しないの? その方が絶対面白いって」

「無表情が半端だから、いっそ隠してしまえば完璧であろう?」

「こっちの方が絶対モテるぜカイトの旦那ぁ」


 ナツメ、教授、もっすんの順に拳骨を食らわす。殺意が無ければ殴れるようだ。良い事を学んだ。


 なんだよ、斜め角度でも後ろ側でも、顔を含んだ頭ならどこでも装備できるんじゃないか。

 これならまぁ、そこまで恥ずかしくないかも?


「ど、どうだ?」


 ちょっと照れくさい気がするが、受付嬢に尋ねてみる。


『はい。お似合いです』

「カイト、狐さんだお〜」


 こいつがそう言うなら、このままでもいいか。






2階間取り図

挿絵(By みてみん)


他住民の部屋はどこなのか……

基本、上と中央部分の個室は男子部屋。

下のほうが女子部屋です。

またカイトや受付嬢の部屋には壁に窓が有りませんが、天窓が付いている事になってます。

尚、天窓の上に昇ることもできますが、他所の部屋を覗こうとしても外から中は見れない仕様のガラスです。

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